第2章

魔族編

第34話 白狐

 今日から三人でギルドの依頼を受けようと思った僕は朝早くにギルドへと向かった。

 最近ではもうすっかりこのギルドの雰囲気には慣れてきたと思う。

 お酒の匂いとか大きな男の人はちょっと苦手だけど…………


「ミナ~依頼に来たんだけど」


「はいはい!!いらっしゃいシノブちゃん!!」

「今日は三人一緒なんだね」


 ミナがこう言うのには理由があって僕が家で休んでる時にちょくちょくシナモンとフレアが依頼を受けに来ていたから。

 まさか僕の知らない場所で依頼を受けていたなんて…………

 いや…………嫉妬なんてしてない、してない、多分。


「ご主人様?」

「シノブ?」


 二人が僕の顔を覗き込んでくる。


「な、何でもない!!」


「で、シノブちゃん。今日は三人で依頼を受けるんだよね?」


「うん」


「これからもそうだよね?」


 ん?そうだけど…………


「そうだけど?」


「だったら三人でパーティー登録したらいいんじゃないかな」


 パーティー登録?

 それって冒険者同士が組んで結成されるものだよね…………それにパーティーって登録しないといけないの!?てっきり自然にパーティーが組めてるものだと…………


「僕たちまだパーティーになってなかったんだ…………」


「うん。いつになったら登録するんだろ~って思ってたよ」


 ミナ…………そういうことはもう少し早く行ってほしかったかな…………


「それじゃパーティー登録しようか!!」


「うん…………」







 ・・・


「パーティー登録をすると今までの冒険者のランクとは違う制度に代わるけどいいよね?」


「違う制度?」


「うん!今までは個人のランクが色で決まってたでしょ?」


 確かにそうだった。

 僕もシナモンもフレアも皆黒ランクの冒険者だよね。


「パーティー登録をするとそのパーティーのランクでこれから活動することになるの」

「そのランクのことを『パーティーランク』って言ってS、A、B、Cの四段階で決まるよ!」


 なるほど…………

 つまり個人で行動しないからランクの表示もパーティーでまとめてってことかな。

 でもその方が僕たちにとっても都合がいいかも。


「シナモンもフレアもいい?」


「うん!私もシノブに賛成です!!」


「ご主人様がそれでいいのなら、わたくしも賛成ですよ」


 よし。二人の同意も貰えたしこれでOKだ。


「ミナ、それじゃあパーティー登録お願い」


「りょ~かい!」

「と、その前にパーティーの名前決めてね」


 な、名前!?パーティーの?

 どどど、どうしよう…………僕はこういうの苦手なんだよな…………


「シナモンとフレアで考えてくれない?」


 こういう時は是非とも二人のことを頼らせてもらおう!!


「いいの!?」

「よいのですか!?」


「うん」


 楽しそうで何よりです。


 その後しばらく時間を取ってシナモンとフレアにパーティー名を考えてもらったんだけど…………時々聞こえてくる名前が『シノブ愛してる隊』だとか『ご主人様敬愛隊』とか結構おっかない名前ばかりで僕が全力で拒否しました。

 しまいにはミナまで参加し始めて…………何で!?


「もう少し僕の名前から離れて考えられない?」


「無理です」

「難しい話ですね」

「無理だよ~」


 皆して無理ですか…………それに何でミナも!?


 こうなったら僕が考えないとダメだな…………

 最低限シナモンとフレアの意見もくみ取りたいけどあからさまに『シノブ』だとか『ご主人様』なんて付けたくないし…………


 えっと…………僕は獣人の中でも多分狐の獣人だから…………フォックス?


 う~ん…………


「『白狐ホワイトフォックス』でどう?」


「「「『白狐ホワイトフォックス』??」」」


 三人そろって僕の顔を見る。

 あ、そうか異世界に英語ってないのかも…………


「えっと、白い狐って意味だよ。そこまで僕の名前を入れたいんだったらこのくらいにしてほしいかな」


「いいよ!シノブ!!すごくいい!!」

「はい。わたくしも賛成です」

「う~ん…………私的には『シノブちゃん大好き隊』が良かったんだけどな~」


 良かった…………納得してくれて。

 で、ミナは何なの!?


 てなわけで僕たちのパーティー名は『白狐ホワイトフォックス』に決まりました!!




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る