ドラクリア編

第28話 竜人の来訪

 トン、トン、トン…………


 誰かが家を訪ねてきたようだ。

 ルノメンの町から誰か来たのだろうか。それとも別の誰か?どちらにせよ町から少し離れた場所の家に訪問者とは珍しいこともあるんだな…………


「はい、どちら様ですか?」


 僕はドアを開く。


「あの…………こちらにシノブ様という方がいらっしゃると伺ったのですが…………」


「…………」


 半分ドラゴンで半分人間の女性だ…………

 赤いショートヘアの髪に黒い立派な角が二本。ミニスカート姿で背中には大きな翼、赤い鱗のしっぽまで生えている。年齢は…………18歳ぐらいかな?

 顔はもちろん人間ですごく大人っぽくてクールだ。これが竜人というヤツだろうか。


「あの…………シノブ様は…………」


「あ、はい。僕です」


「!!貴方がシノブ様ですか!!」


「は、はい…………」


 すると竜人の女性はドアの前で立膝をつき頭を深々と下げる。


「ご主人様、お会いできて光栄です」


 !?

 突然『ご主人様』と呼ばれて驚く。


「シノブ、どなたかいらしたんですか?」


 家の奥から姿を現したのはシナモン。最近ではすっかり僕との生活にも慣れてきたのかご近所付き合いまでこなしていてルノメンの町でもそこそこ有名になっている。

 僕よりコミュニケーション力高いかも…………


「ええ~!?シノブどうしたんですか!?」


 シナモンは当然の如く驚く。


「いや…………僕にも何が何んだか…………」

「あの…………顔を上げてもらえますか?」


 するとドラゴンの女性は顔を上げて立ち上がる。目線が僕よりも高いから僕は見上げる形だ。


 しかし次の彼女の言葉に僕とシナモンは驚く。竜人の女性はシナモンを見てこう呟いたのだ。


「ハーフエルフ…………ですか」


 その言葉にシナモンは一気に警戒心マックス。攻撃態勢に入る。

 僕も少し距離を取る。

 普通に考えてエルフしかほぼ判断できないハーフエルフの違いを一瞬見ただけで判断できることは尋常じゃない。ルノメンでも知っているのは僕かステータスペーパーを見たミナだけだ。


「あなたは何者ですか?」


 僕は彼女を前に尋ねた。


「申し遅れました。わたくしは竜族のプリンセス、フレアと申します。ご主人様をお迎えに参りました」


 ???

 色々と状況の整理が追い付かない…………

 まず目の前にいる彼女は竜族でしかもプリンセス?

 で、ご主人様であると考えられる僕を迎えに来たと。


「えっと…………僕がご主人様?」


 確認も兼ねてもう一度聞き直す。


「はい」


「どうして?」


「お父様の言いつけでご主人様にはわたくしの伴侶になってもらいたくて伺いました」


「え?伴侶?」


 ちょっと待って…………伴侶?…………生涯を共にする人のこと…………結婚!?


「ちょっーーーー」


 と僕が質問しようとすこにシナモンが声を割って入る。


「待ってください!!あなたとシノブが結婚ですか!?」


「そうですが?」


 竜族のプリンセスであるフレアは首を傾げる。


「そんなの私が認めません!!!」


 何でシナモンが答えてるの?…………まぁいいけど。


「あの…………フレアさん。どうして僕なんですか?」


「それは、ご主人様が竜族と同等もしくはそれ以上の力を持っておられるからです」

「それとわたくしのことはフレアで構いませんよ」


 ん~色々と不思議な点が多いんだよね。そもそも僕は監視されてたってことなのかな。


「どうやって僕が強いってことを判断したの?」


「それは竜族の持つ力万物の本質を全て見通す『竜眼』があるからです」

「竜眼は魔力の流れだけでなく体内の力の大きさや変化を見ることができるのです」


 なるほど…………万物を見通す目、だからシナモンがハーフエルフだって分かったのか…………でもいつから僕は見られてたんだろ。


「あの…………いつから僕のことを見てたの?」


「いえ…………見ていたわけではございません。力の大きさそれを感じ取りそれで判断しました」


 う~ん…………分かるような分からないような。でも間接的には見られてたってことだよね。

 フレアの話では竜族は相当昔から存在する種族で『太古の種族』なんて呼ばれ方もしてるみたい。しかも個々が絶大な力を有していて特に『竜眼』は万物の流れを完全に読み取る竜族の持つオリジナル能力だとか。


「それで…………ご主人様。共に竜族の町まで来ていただけないでしょうか…………」


 するとシナモンが顔を近づけて耳元でささやく。


「どうしますか?シノブ」


「そうだね…………行ってみるだけ行ってみようか」

「断るのは見て判断してからでも遅くはないと思うし」


「そうですか…………だったら私もついて行っていいですか?…………いえついて行きます!!」


 そうだな…………またしばらく家を空けるのは少し心配なんだよな。それに竜族は僕たちなんかよりも知識も力もあると思う。だからシナモンにとっては危険かもな…………


「いや…………シナモンにはここに残って欲しいな…………」


「ど、どうしてですか!?」


 納得いかないと言った顔で見つめてくる。


「心配だからだよ。今から会いに行くのは竜族なんだよ?だからシナモンのためにもここに残ってくれない?」


 まぁ本音半分といったところです。こう話せば大体シナモンは断れないタイプなのだ。


「そこまで言われたら…………断れません…………」


 ほらね?


「でも!絶対に帰ってきてくださいね?シノブは私のモノですから!」


「帰ってくることは約束するけど…………後半の部分は良く分からないよ?」


 こうして僕は竜族の町まで出向くことになったのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る