第24話 魔術学校

 翌日、『マルクス』滞在二日目。

 中心都市ともなれば朝から町の人たちは活気で満ち溢れていた。商人や冒険者が朝から都市を右往左往し出店も朝早くだというのに徐々に営業をし始めていた。


 そんな中僕は宿屋の食堂で朝食を取りながらシナモンと話していた。

 ちなみに今、宿屋の食堂には僕とシナモンしかいない。それもあってかシナモンは耳を隠していないし僕もローブは身に着けていない。


 朝食のメニューはキャベツのような野菜に沢山の木の実が入ったサラダと角ウサギという魔物の肉を使ったシチューのような食べ物だ。サラダの方はともかく魔物の肉とはまた斬新だ。正直食べるのに躊躇したけどシナモンの『凄くおいしいんです!』という言葉と真っすぐな瞳に根負けして僕は恐る恐るシチューを口に運んだ。


 うん…………普通に美味しい。

 

 味的には普通のお肉だし触感は鶏肉と言ったらいいだろうか。

 数分後にはすっかり僕もその角ウサギのお肉の虜になっていて夢中になって食べていた。


 すると何を疑問に思ったのかシナモンが僕に話しかけてきた。


「シノブって学校には通ってないの?」


 学校?この世界には学校もあるのか?


「学校?」


「そう!私王国の魔術学校に通ってるんです!」


 魔術学校か…………確かにこの見た目であれば学校に通うのが普通なのかしれない。

 というか冒険者は立派な職業だと思うし学業と冒険者の両立って可能なのかな。そもそも魔法の勉強ってどんなのなんだろう…………


「シナモン早く行かないと遅刻するわよ?」


 そう言って話しかけているのはシナモンのお母さん。今はエプロンを身に着け完全に『お母さん』といった感じだ。


「分かってる!着替えたらすぐに行くから!!」


 そう言ってシナモンは席を立って奥の部屋へと姿を消していった。

 シナモンのお母さんは『まったく…………』と口にしながら僕の元までやってきた。


「シナモンは学校に通っているんですね」


「ええ、あの子冒険者になるんだって言って聞かなかったんです。多分夫のことを探しに行くために…………」


「そうなんですね…………」

「その…………不自由はないんですか?ハーフエルフだから…………」


 するとあからさまにシナモンのお母さんの顔が曇った。


「どうでしょう…………あの子、学校のことは話そうとしないんです」


 心配だな…………どの世界に行っても差別や迫害は起こってるし…………もしかしたらいじめだって。

 そう思った瞬間胸が締め付けられるような感覚に襲われた。


 まぁ僕の勝手な思い込みかもしれないけどね。


「シノブさんはどうして学校に行かずに冒険者を?」


 ここで予想外にも僕のことについて尋ねられた。やっぱりこの見た目の子は学校に通うのが普通なのかな。

 まさか転生したなんて言えないし…………


「えっと…………僕には親がいなくて…………生活費を稼ぐためです」


 もちろん適当な言い訳である。

 でも生活費を稼いでるのは本当だけど。


「そ、そうですか…………すいません」


 そう言ってシナモンのお母さんは頭を下げる。


「い、いえ!そんな大したことじゃありませんよ」


 そんなことを話していると制服姿のシナモンが部屋から出てくる。制服は青色と白のラインが入ったブレザー制服だ。ベレー帽のような物も被って耳もすっかり隠れている。

 可愛い…………


「お母さん!行ってきます!!」

「シノブもまた後でね!!」


「行ってらっしゃい」


 シナモンのお母さんは笑顔でシナモンを見送る。僕も手を振る。


 でも…………少し心配だ。


 するとシナモンのお母さんがポツリと呟いた。


「私も見学に行けたらいいんだけど…………」


 見学?あれ僕なら行けるかも!!


「すいません」

「シナモンが通ってる魔術学校ってどこにありますか?」


「え?」


 突然の質問に少々戸惑っているように見える。


「えっと…………ここから少し離れたマルクスの東の領地です」


 東の領地か…………北の領地みたいにジンクロ伯爵みたいな人がいなければいいんだけど。

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