第23話 ハーフエルフ
「ちょっと待って!?お母さんは人間なんだよね?」
「そうですよ?」
「それなのに君は…………エルフだよね」
「はい!お母さんが人間でお父さんがエルフなんです!だから皆私をハーフエルフって言います」
つまり…………人間とエルフのハーフってことか。まさかハーフも存在するとは思わなかった。それじゃあこの子はエルフと人間どっちの適正もあるってこと?
「あなたは獣人さんですか?」
「ああ、うん。そうだよ」
「すごい!すごい!!私獣人さん見るの初めてなんです!」
凄いキラキラした目で見られてる…………
そしてその視線はしっぽや耳に移る。
「耳…………触ってみる?」
「いいんですか!?」
「うん…………別に減るもんじゃないし」
するとハーフエルフの女の子は部屋に入ってきてベッドに腰かける。
それに対して僕も隣に腰かける。
優しい手つきで耳が触られる。
正直言って耳を触られるのは案外気持ちいい。
「名前は?」
この機に名前でも聞いておいた方がこの先も呼びやすいよね。
「私シナモンって言います!」
シナモン…………甘そうな名前だ。
「そう…………僕はシノブ」
「ボク?シノブは女の子ですよね?」
あ…………確かに。今まで気にしたことなかったけど女の子だったら『私』だよな…………でも時々女の子でも『僕』っていう人だっているし…………問題ないでしょ。
そもそもこの世界にも明確な男女の区別がついていたとは…………いや区別されてて当然だよね!
「そうだよ?」
「ふ~ん。そうなんだ」
シナモンはそれ以上追及するわけでもなく再び僕の耳を触ることに集中する。そして辺りを少し見まわしたのち僕に質問してきた。
「シノブは冒険者なの?」
「え?どうしてそう思ったの?」
突然の質問に驚く。そして答えるのではなく質問を質問で返してしまった。
「だって机の上にナイフがあるもん」
ああ、そういうことね…………以外に鋭い…………
シナモンは案外鋭い感覚を持っているみたい。この世界は見た目は年齢の判断の参考には全くならなさそうだ。
「うん、僕は冒険者だよ」
するとシナモンの目が今まで以上に輝く。
「ええ~すごいです!!」
ん~宿屋なら冒険者の一人や二人泊まりに来るだろうしそんなに珍しくないと思うんだけど…………
それにさっき獣人も初めてだって。
まぁそれはあり意味当然かも。
「シナモン!!!あんたまた帽子もかぶらないで!!」
と話してる途中に部屋に入り込んできたのはさっきの宿屋の女の人。
シナモンのお母さんだ。様子からして焦ってるようにも見えるし怒っているようにも見える。
「すいませんお客様!!」
シナモンのお母さんが僕を見つけるとすぐさま頭を下げた。
そしてシナモンのエルフの象徴ともいえる長い耳を摑みベッドから引きずり下ろす。
…………痛そう。
「痛いよ!!お母さん」
「あんたは人前に出るときは帽子をしないといけないっていつも言ってるでしょ!!」
どうやらハーフエルフということはあまり知られたくないみたいだ。でも僕から見れば普通のエルフと何ら変わりないような気がするけど…………
「あ、あの…………娘さんはハーフエルフなんですね」
「ええ…………夫がエルフの冒険者なんです…………」
「ですけどもう一年も
「
初めてこの世界に来てから聞くワードだな…………
ゲームとかではよく魔物を倒す施設?みたいな感じでお宝があるっていうイメージなんだけど。
「はい。この大陸と魔族の住む大陸の丁度中心に位置する未開拓域にある建物のことです」
すると意味ありげな表情でシナモンのお母さんが僕を見つめる。
ああ、そういうことか…………未開拓域に魔族の存在…………つまり旦那さんは亡くなったってことか。それにこの様子だとシナモンにはまだ話してないのかな…………
「そうですか…………」
冷たい空気が僕たちを包み込んだ。
「だから私が探しに行くんです!!」
元気な声でそう言ったのは勿論シナモンだ。
「シナモン…………」
シナモンのお母さんは少し心配そうにシナモンを見つめる。
たしかに本当の10歳なら実の親の死なんて受け入れられないよね…………
すると多少強引ではあるがシナモンのお母さんがシナモンの話を遮り部屋から出るように促した。
「シナモン行くわよ」
「お客様の邪魔になるわ」
「うん!またねシノブ」
手を振られて僕も手を振り返した。
それにしても明日からどうしようか…………
観光でもしてみようと思ったけどやっぱりここも獣人に対する当たりは厳しそうだし、案外宿にこもって体を休めるのも悪くないかもね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます