第19話 任務前日
「うちのレオンが無礼な真似をしました。すいませんでした」
目の前で椅子に腰かけて深々と頭を下げている彼の名前はランドール。王国十字軍の副団長だ。
そして今僕は伯爵邸の一室でそのランドールの謝罪を受けていた。
副団長は大変な役職だな………団長が
「いえ、もう終わったことですし…………僕も少しやり過ぎましたから」
というのも決闘が終わった直後にイラついた僕はレオンの頭に思い切り拳をぶち込んだのだ。
だって予想通り謝らなかったからつい……
「そんなことありません!貴方の戦術は素晴らしいものでした」
「それにこちらを…………」
そう言ってランドールは机の上に白色の上品な毛皮で作られたローブを置いた。
「あ、これって…………」
「はい、約束の品です」
それは僕が決闘前にレオンに言っていた新しいローブだ。今まで使っていたローブはレオンに切り刻まれたわけで…………決闘に勝ったら新しいものを用意してもらうという約束を交わしていた。
「これ…………本当に貰っていいんですか?」
でもいざ本当に高級そうな物を用意されると気が引けるというか…………
半分冗談だったし…………
「はい。謝罪の意志も込めて是非受け取ってください」
そう言われると断れないし…………ありがたく頂こうかな。
僕はそう思いランドールに準備してくれたローブを受け取った。
ところで一方のレオンは別の部屋で治療を受けているらしい。魔法の後遺症やら頭の痛み(僕の拳が原因)とかの…………
「その…………さっきレオンさんが言ってた
「ああ…………やっぱり聞かれてましたか…………」
何か聞かれるとまずいものなのだろうか。
まぁ日本にいた時もドーピングっていいイメージじゃなかったしね。
「
なるほど…………人工的な『限界突破』みたいなものかな。
確かに普通の人じゃあ出せないような力だったしね。
「つまり…………王国十字軍の方々の強さの秘密は…………」
「はい。お察しの通りです」
「我々の力の根源は
「そうですか…………隠してるのにも理由が?」
「はい」
「実はこの魔力供給剤は王国が極秘に開発したものなので国民には認知されていません」
そりゃそうだよな…………国民全員が魔力供給剤の存在を知ってたら戦争ごとだし…………もし獣人なんかが使ったら反乱だって起こるだろうしね。
「でも魔族に楽に勝つためだったらもっと沢山の人に魔力供給剤を配って王国十字軍の戦力を増強すればいいんじゃないですか?」
「それができないんです」
「できない?」
「はい。実は魔力供給剤は効果の出る人と出ない人がいるんです。そして効果が出なかった人は三日で体内の魔力が暴走して死にます…………」
え?
死ぬの!?
だったら今いる王国十字軍の人たちって…………
「それって…………人体実験ですか?」
「はい、その通りです。私たち王国十字軍の団員は王国に買われた孤児でその中でも魔力供給剤に適性があった人たちなんです」
そんなことがあったなんて…………
「その…………すみません」
何だか不謹慎なような気がした。
「それに獣人の僕にそんなこと話してよかったんですか?」
「ええ、構いませんよ」
「そもそも私は獣人はそこまで嫌いじゃありませんし」
ランドールはにっこりと笑った。
その顔は今の境遇を不運だなんて思っていないような表情だった。
うん……かっこいい。
「あなたは見た目は可愛い女の子なのに性格はとても肝が据わってますね」
「あ、ありがとうございます…………」
前にも誰かに言われたような……まぁ確かに実年年齢は7歳年上17歳だからね。
そう言ってからランドールは椅子から立ち上がった。
「じゃあ私はこれで行きますね」
「明日はお互いに頑張りましょう!」
「はい」
まだ任務は始まってないんだよね……これから頑張らないと。
それにあの技……確か『
あれって魔法を体や武器に定着させるのかな……それとも能力の派生かな?
カッコよかったなぁ…………
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