第18話 決闘

「これより王国十字軍団長レオン・ガハルト殿と冒険者シノブ殿の決闘を始めます」

「ルールはアリアリで行ないます。どちらかが戦闘不能もしくは降参するまで勝負は終わりません」

「よろしいですか?」


「ああ!」


「はい」


 決闘のレフェリーを務めるのは王国十字軍副団長ランドール。青い髪が特徴的なクールな人だ。


 ちなみにアリアリって言うのは魔法、剣、体術といったあらゆる攻撃を使うことが許されたルールのこと。

 今回はチャームを使わないで完璧に勝ってやる!!



「それでは決闘開始!!!!」


 ランドールの声が広場を震わせる。


 僕は鞘からナイフを取り出す。

 一方のレオンは腰のさやから長剣を取り出した。


 ここで有利な点と不利な点を挙げるとしたら経験の差と体格の差だろうか。レオンは僕よりもはるかに戦闘経験が高い。だから一つ一つの動きが予測しにくいの。

 だけど体格は状況によっては僕に歩がある。体の小ささを生かせば簡単に懐に潜れる…………


 そして僕は体をかがめて一気にレオンとの距離を詰める。

 そしてナイフで腹を狙った。


 がレオンの初手の攻撃でそれが困難なことを悟った。


 レオンは長剣を自由自在に操る。僕が懐に飛び込もうと距離を詰めれば長剣で行く手を阻んできたのだ。


 一旦距離を取ろうと後退しようとするものの逆に一瞬でレオンに距離を詰められる。

 と、一瞬にして攻守が逆転し僕はレオンの剣撃を短いナイフで必死に防ぐことを強いられる。


 レオンの長剣は僕のナイフよりも長さがはるかに長い。ナイフで防ぎきれないと察した攻撃は体を捻ってよけようとするものの白い髪が数本レオンの剣に巻き込まれる。


 だけどここからは僕も少し力を出す。


『剛腕』と『剣術』の能力をフルに発動させる。


 そして次は僕が攻撃に転じる。一撃一撃に『剛腕』の力を乗せてナイフを振るう。ナイフとレオンの長剣が触れ合うたびに火花を散らす。

 だけど徐々にレオンの顔から余裕がなくなっていく。


「ハァハァハァ………ここまで俺の剣技を防ぎきるとは…………」


「それはどうも」


 やっぱり熟練度が低いのかな……いまいち手応えがないな。


「それじゃあ俺も本気を出してやる!!」


 レオンが大きな声でを叫んだ。


 ー炎の聖霊、我が血肉を触媒とし古の力を開放せよー


 短い詠唱、それでも一言一言に大きなプレッシャーを感じる声で詠唱を施した。

 と思えばレオンの右手と剣が炎に包まれる。そして姿を表したのは真っ赤に染まった右腕と炎を纏った剣だった。


「レオン!!何やってるんだ!!」


 ランドールがレオンに口を挟む。


「お前だって見ただろう?こいつは魔力供給剤ドーピングを飲んだ俺と同等に戦ってるんだよ!!こうでもしねぇと勝てねぇ!!!」


 ド、ドーピング…………

 それって日本にいたときに聞いたことあるやつだ……確かアスリートがよく使うっていう……


「なるほど…………あなた達の力の元は薬なんですんね」


「うるさい!!さっさと再開するぞ!!」


 ー焔之斬撃ホムラノケン


 レオンは剣から炎の斬撃を繰り出す。しかしその攻撃は僕には効かない。


 能力『魔法遮断』


 残念だけど魔法による攻撃は全部遮断できるんだよなぁ………


 それに焦りを感じたのかレオンは剣を構え最速のスピードで距離を詰める。


 僕はここであえてレオンと距離を詰める。

 しかし狙うのは相手の懐じゃなくて…………


 剣の柄だ!!


 僕はナイフで攻撃すると見せかけて左足でレオンの右手、剣の柄を狙った。


 カラン!!


 剣が宙を舞い地面に落ちる。


「チッ!!」


 そしてここからが僕の

 ベテランの剣士ゆえの判断、それは剣を落とせばそれを拾う隙を見せないために魔法を使う。しかしそれこそが僕とレオンで戦闘能力を比べた時に有利になる点。


『詠唱不可』だ。


 レオンが案の定詠唱を始める。


「荒ぶる風の聖霊よ我が手にーーーーーーーーー!!!!」


 僕は左手で風の魔法を思い浮かべる。規模はレオンを吹き飛ばすくらいの威力、形状は一方向からの強風。


 ブォォォォォォォ!!!!!


「ぐは!!!」


 レオンの体が宙を舞い背中から地面に落ちる。

 そして体を起こそうとした瞬間に首元にナイフを突きつける。


「ひっ!!」

「ま、参った…………」


 一瞬の静寂が広場を覆いつくす。


「そ、そこまで…………」

「しょ、勝者……………………冒険者シノブ」



「「「「「「おおお!!!!!」」」」」


 声を上げて喜んでいるのはシモンさんを始めとした奴隷獣人族だ。


 よし!これでこの世界で人間の土下座が拝める!


「それじゃあ土下座でも何でもしてくれるんですよね?」


「うぅぅぅ!!!!」


 レオンは下唇を思い切り噛んでる。


「嘘だ!!俺がこんなガキに負けるもんか!!」

「土下座なんてしてーーーー」


 ボコ!!!


 僕は物理的な攻撃でレオンを黙らせた。



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