第17話 王国十字軍
エルフの隠れ里の名前は『リフル』らしい。
噂ではリフルの前に着くところまでは簡単だけどリフルに入ることが問題みたい。何でかは分からないけど。
そして出発は今日から三日後、全戦力の集結が完了してかららしい。
僕はそれまでの間、ジンクロ伯爵の伯爵邸の客間に泊めてもらうことになった。
獣人だからと言って扱いもひどいものになることを予想してたけど案外生活しやすいい一室を準備してくれた。
大きなベッドにフカフカの上品なソファーは最高!
お風呂も広い!!
多分シモンさんを始め沢山の獣人奴隷を扱ってるから僕に対してひどい扱いをしたら反感を買うからだと思う。
その証拠にすれ違う兵士から舌打ちされたりするけどこれは生前からの僕のスルースキルで完璧無視だ。
トントントン…………
誰かがノックしてきた。
「はい」
「シノブ様、お客様がお見えです。今から正面広場にお越しいただけないでしょうか」
と、ドア越しにそんなことを言われた。
それより僕に客?誰だろ…………
「分かりました。すぐに行きます」
そう言っていつものローブを身に着けて伯爵邸の広場まで向かった。
そして広場に着くと沢山の人が集まっている。
「シノブ様!!」
声を掛けてきたのはシモンさん。服装は鉱山にいた時とは違って綺麗な物になってるけど首に着けてある首輪はいつ見ても胸が締め付けられる。
「シモンさん、この人だかりは何ですか?」
「『王国十字軍』です…………」
え?王国十字軍?
確かこの国で一番強い人たちで今回の任務にも参加するんだっけ。
「もしかして僕のお客って『王国十字軍』の人たち?」
「はい…………」
マ、マジですか…………
「おい!貴様が今回の任務に参加する獣人か!」
人の波が左右に分かれて行く。
そして視線の先に映ったのは真っ白な鎧を身に着けた兵士が10人。それぞれの人が杖、剣、斧など様々な武器を身に着けている。
当然かもしれないけど『王国十字軍』は全員が人間だ。
「はい、そうですけど…………」
すると真ん中にいた剣を腰に下げた金髪の男が一歩踏み出す。
人ごみの中の女からは『キャー』だとか『レオン様~』だとかが聞こえる。確かにイケメンだけど…………
「俺の名前はレオン・ガハルト。王国十字軍の団長だ!!」
ああ、団長さんですか。
「えっと、僕の名前はシノブと言います」
少し見下してる態度はき気になるけど一応地位もあっちの方が上だからお辞儀をしておく。
シュン!!!!
ローブが切り刻まれて宙を舞う。よく見ればレオンが剣を抜いて構えている。
せっかく隠してた耳もしっぽもあらわになってしまった。
「人間と話すときはしっかり顔を見せろ、獣人風情が」
いきなり攻撃してきた!?何で!?
「で…………何の用ですか?」
「俺がお前を見極めてやる!!」
せっかく英雄っぽくカッコいいセリフ言ってるのに僕の顔見た瞬間赤面してるじゃん…………
周囲がざわつく。まぁ当然の反応だと思う。実際に今目の前にいる人こそが現段階での人間族最強なのだから。
でも
僕は違う。
だったらこの場を借りて証明しよう。
獣人だって強いってことを。こんなに人が沢山いるんだしいい機会だよね。
「分かりました」
「シノブ様!!」
割り込んできたのはシモンさんだ。
「流石のシモン様でも『王国十字軍』の団長相手は勝機はありません!!」
「やってみないと分からないじゃないですか。それに僕が勝ったら獣人の権利だって変わるかもしれませんよ?」
僕のその言葉にシモンさんは黙り込む。
やっぱりシモンさんも獣人の扱いがひどいってことは自覚してたんだ…………
「ふはははははは!!!!!獣人風情がこの俺様に勝つだと?ありえんな!!」
「それじゃあこの俺が勝ったらお前は今後俺の奴隷になれ!!」
結局コイツも体目当てか…………
イケメンがもったいない…………
正直『チャーム』でも使ったら瞬殺だろうな~
でも今回は使わない。そうじゃないと周りからは魔女とか悪魔とか言われそうだから。それにレオン自身が納得してくれないだろうし。
「分かりました」
「でしたら僕が勝ったら獣人風情と言ってバカにしたことを撤回してください。それとローブの弁償です」
新しいローブの準備は正直ついでだけど、まぁいいよね!
「ああ!構わん!!土下座でも、どんな高価なローブでも買ってやろう」
言ったなコイツ…………
ふふふふ…………後で地獄を見せてやる。
僕だってこの世界に来ていじめられ役だけど強いんだから。
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