第14話 神様の旅立ち

 久々の休日。

 僕は朝から宿屋の別途に横になりのんびりと時間を過ごしていた。



『シノブ、そろそろ宿屋生活もお金の無駄になってきたんじゃない?』


 突然の神様の指摘に僕は一瞬戸惑う。


(確かにそうかもしれませんね)

 

 確かに宿屋生活もお金がかかる。この生活を維持するのなら今以上に依頼を受けてお金を貯める必要があるけど…………


『どう、家でも買ったらいいんじゃない?最近冒険者の収入でお金給ってきたでしょ?』



(う~ん…………でも家を買ってしまえば自由が利かなくなるんじゃないですか?)


 そう、もし家を買ってしまったら遠出がしにくくなってしまう。だからよく考えて行動したいと思うんだけど…………神様の言い分にも一理ある。


 というのも僕が今止まっている宿は個室のお風呂がついてて一泊銀貨5枚と普通の宿に比べれれば相当高い。だから家を買うのは…………名案かもしれない。


 そもそも旅なんてする予定なんてないしな…………

 それに何だか楽しそう!


(家を買うのもありかもしれませんね)


『でしょ?それにチャームを使えば安い値段で家が…………』


(神様!?何考えてるんですか?)


 この元神様って本当は元悪魔だったんじゃ…………









・・・


 それから数日、僕はルノメンの町のはずれに家を買った。

 金貨一枚の一階建ての平屋。お風呂にキッチン、リビングルームそして寝室の付いた暮しやすい家だ。

 勿論チャームは使ってないよ?


 立地も町のはずれにしたのには意味がある。

 それは勿論獣人だからっていう理由もあるんだけど、この家の周辺にはたくさん動物も住んでいるし薬草が豊富なのだ。

 つまり自給自足にはもってこいの場所というわけだ。


 獣人の女の子になってからというものの僕はくしを使って髪やしっぽの毛皮を整えるようになった。

 実のところ宿屋生活の時はくしで整えたときに抜けた毛が地面とか廊下に落ちてて掃除が面倒だってちょくちょく宿の管理人から苦情が来ていたんだけど、これで心置きなく毛を整えることができる!!


『何だかんだでシノブも気に入ってるじゃない』


(はい。案外気に入ってます…………)


 異世界年齢10歳の女の子が家を買っただけでもすごいよ。

 これからの生活が案外楽しみです。


『ところでシノブ』


(はい?)


『私ちょっとしばらくの間留守にするわね』


 はい?

 何言ってるのだ?


(どこを留守にするんですか?)


『あなたの頭の中よ?』


(神様。自分で何言ってるか分かってますか?)


 確かに神様は今、僕の頭の中にいる解釈でいいけどそんな簡単に『留守にするね』みたいな軽い感覚で抜け出せるものなの?


『分かってるわよ!』

『私がいなくてもしっかりするのよ?』


(神様は僕の母親ですか!!)


 でも少し頼ってた面もあるんだよな……


『その調子なら大丈夫そうね。それじゃあ暫く留守にするわね!!』


 そう言ってぱったりと神様との念話が途切れた。


 随分急だな…………

 そもそも神様の権利が剥奪されてるのに行く当てあるのかな…………あのポンコツ神様のことだから行く当て無くてすぐに帰ってきそうだけど…………


 まぁ頑張ってください、神様。僕も頑張ります。


 こうしてしばらくの間紙様とは別れて生活することになった。

 正直異世界で一人きりになるのは初めてだから心配な面もある。だけど僕だっていつまでもうじうじしてるつもりは無い。

 これからは一人でも生活できるように頑張ります!






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