第10話 初の依頼

 冒険者の以来の難易度は依頼用紙に内容と一緒に記入されてる星の数によって決まるらしい。


 勿論その星の数が多ければ多いほど難易度は高くなり報酬金額も高くなるみたい。

 星の数は最大10個。

 星10個の依頼のほとんどは金ランクの冒険者や大人数のパーティーなんかにあっせんされてるからギルドには中々出回らないみたいだけど。


 僕は手始めということもあり始めは星5個の依頼『南の森の開拓鉱山の魔物退治』を受けることにした。

 せっかく高ステータスを持ってるのなら効率よくお金を稼ぎたいからだ。

 それにこの依頼を選んだ理由はもう一つある。

 この依頼の達成報酬金が理由は分からないけど星7個の依頼よりも高いから。


 お得というやつだ。


 それからこの依頼を受けるためにミナに報告をしたときは猛反対された。

 理由は至極当然、冒険者登録を終えて数時間しか経っていない黒ランクの冒険者が星5個の依頼は危険だからとのことだった。

 明らかに私情も交じってたような気がするけど…………


 だから黙らせるためにやむ負えず『チャーム』を使って黙らせるという悪手を使った。


 やむ負えずだからね?










・・・


 南の森の開拓鉱山、固有名『ジンクロ鉱山』は馬車で3時間のところに位置するらしい。僕はギルドがチャーターした馬車に乗り込み現在そのジンクロ鉱山を目指している。


 馬車に乗るなんて勿論はじめての経験。時々車輪が岩とぶつかり馬車が大きく揺れる。


 そんな道中で僕は気になったことを神様に話す。


(神様、どうしてこの依頼こんなに報酬が高いんだと思いますか?)


 普通に考えて難易度が低いものに高額の報酬金が付くことなんてないと思うんだけど…………


『それは私には分からないわ。でも可能性としては早く魔物を退治してほしい理由があるからじゃないかしら』


 確かにその通りだ。それだけ状況が深刻なのかもしれない。


(そうですよね…………でもそれだったらもうとっくに他の冒険者がやっててもいいと思うんです)


『う~ん…………まあいいわ。行けば分かるわよ』


 神様はあっさりと考えることを放棄した。


(そうですね…………)


 疑問が残るばかりだけどそんなことを考えていると丁度馬車の揺れが収まった。どうやら『ジンクロ鉱山』に到着したみたい。


「着いたぜ、冒険者」


「はい。ありがとうございます」


 そのまま馬車の荷台から飛び降りる。


 しかし目の前に広がる光景に僕は衝撃を受けた。それと同時にさっきまでの全ての疑問が一瞬で解決した。


「そういうことか…………」


 目の前に広がる光景。それは働いてる労働者が全員獣人ということ。しかも働いてる獣人の首には同じ紋章が入った鉄の首輪がされてる。

 中には今の僕よりも年下のこの姿もある。

 つまり難易度が低いのに報酬が高かった理由、それは依頼主が獣人だから…………


 それを見た瞬間胸がチクリと痛んだ。


『ひどい…………』


 神様も僕の目を通してこの光景を見ている。


(どうりで誰も依頼を受けないわけですね…………)


『ええ』


 すると働いてる獣人の中でも一際大きな体をした50歳過ぎの男の獣人が僕の元までやってきた。服装は灰色の布切れ一枚の半そで短パン。黒色の耳に小さなしっぽ、クマの獣人だろうか。髪も短く切りそろえられていて男前だ。


「あなたは冒険者様ですか!?」


 予想通りの低い男っぽい声。

 そしてその声とは裏腹にとても丁寧な話し方。


「はい…………」


 一気に目の前の大きな獣人の顔が明るくなる。


「おい!皆!!!冒険者様が来てくださったぞ!!!」


 その言葉に落ち込みかけていた鉱山の空気が一瞬で活気付く。そして僕は一気に周りを獣人に囲まれた。中には犬の獣人もいれば白くて長い耳のウサギの獣人もいた。

 異世界天然バニーガールだ。


 するとさっきのリーダーと思われる獣人が名前を名乗る。


「俺はこの鉱山の開拓代表、ジンクロ様の奴隷獣人シモンと言います」


 話すたびに『奴隷』というワードを聞くと改めて獣人の生活の厳しさを痛感させられる。


「僕はシノブです。あなた達と同じ獣人です」


 その言葉と同時に僕はローブのフードを取る。今までフードを目深にかぶっていたせいか周りからは僕のことを人間の冒険者だと思ってたみたいだ。

 一気に場の空気もより明るくなって嬉しい。


「「「「おお!!!」」」」


 ただ何人かの視線から熱を感じるのはどうしてだろう…………


「我々と同じ獣人様でしたか!」

「それでは早速で申し訳ないんですけど鉱山に現れた魔物を退治していただけないでしょうかシノブ様」


 シモンさんを含めたその場の獣人全員の頭が一斉に下がる。


「わ、分かりました」


 その場の空気に少し驚きながらも僕は改めて依頼を引き受けた。

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