第8話 冒険者になります

 金貨三枚。僕はこの世界では相当なお金持ちになった。


 だけどその金貨はみるみる減っていく。

 というのも耳やしっぽを隠すための大きめのローブをはじめ新しい服を買ったりしていくと自然に減っていくのだ。


 服装は神様のチョイスで選ばれた。

 これがまた可愛い…………

 白を貴重としたスッキリとした服。初めはもっとひらひらした物を神様に進められて焦った……だって色々とまずい気がしたから。


 そして物を買おうとするたびに店の人には値段を高くされたり『獣人だから』と言って商品を売ってもらえないこともあった。


 その度に『チャーム』を使う(神様に使わされる)からいつの間にか『チャーム』を使う抵抗感や恥ずかしさすら感じなくなってきた…………


 正直マズい状況であるのは自覚してるんだけど…………使わざる負えないんだよね。


 こうして僕が今休んでいる宿も『チャーム』の力で何とか借りることができたし。


 それに大体『チャーム』の能力を10回くらい使ったころからだろうか、神様曰く『チャーム』の能力が進化したらしい。

 というのも今までの『チャーム』であれば男性には効果が二倍、女性に対して効果が半分だったのに対して進化後は男女関係なく100パーセントの効果が出るようになったらという。


 正直嬉しいわけではない。



『ごめんなさい…………』


 すると神様が急に僕に謝罪してきた。


(何に対してですか?)


『獣人に転生させたことよ』


 ああ、そんなこと…………確かにいじめで自殺して可愛い女の子に転生したと思えば僕が転生した種族はこの世界でも嫌われ者の種族だった。

 正直環境が変わっただけでいじめという概念からは逃れることができないみたいだけど…………


 でも、


(いいですよ。気にしてませんから)


『!?どうして?』


(だって今の僕には抵抗するための力があります。それに一人じゃありませんから)


 そう今の僕には物事を解決させる力がある。それに神様っていう心強い仲間がいるから。


『そう…………な、ならいいんだけど!』


 表情は分からないけどきっと今の神様は多分テレてるんだと思う。


(はい。気にしないでください)


 それからしばらくしてお風呂に入りしっぽの毛や長い髪をしっかりと洗った。そしてお風呂から出てベッドに横になると、


『それじゃあ明日からはどうするの?』


 神様が明日以降どうするのか尋ねてきた。


(そうですね…………冒険者登録なんてどうでしょう?)


『冒険者登録?』


(はい。町の人に聞いたんですけど冒険者登録すれば依頼達成金と魔石の換金、今以上にお金が稼げると思うんです)


 この世界では冒険者はすごくいい職業だと思う。お金もたくさん貯まるし年齢制限も無い。


『確かにそうかもね。でも獣人ってバレればまたチャームを使わざる負えないわよ?』


 確かにその点は心配だけど、


(そうなった時はやむ負えませんね)


 ほら、抵抗感がなくなってきてる証拠。こうやって簡単に『チャーム』を使うようになってしまった……


『シノブってその見た目で結構図太い神経してるのね』


(まあ今の見た目は10歳の女の子ですけど実年齢は17歳ですからね)


『そうだったわね…………私もその見た目に騙されてたわ…………』


 神様が騙されてちゃ駄目だよね!?







・・・


 そして翌日、僕は朝一の人気が少ない時間帯を狙ってギルドカウンターへと向かった。

 服装は新しく買った服装の上にすっぽりと全身覆えるサイズのローブを身につけた格好だ。


「すいません…………冒険者登録したいんですけど…………」


「はい!冒険者登録ですね」


 僕の受け答えをしてくれたのは高校生くらいの見た目の少女。茶色の髪のポニーテールが似合ってる。服装はメイド服に近い。


「それではこちらの紙に触れてください」


 そういってギルドカウンターの少女はカウンターテーブルに一枚のA4サイズの紙を置いた。


「これは?」


「ステータスペーパーです。これさえ持っていれば冒険者とみなされますよ」

「使用方法はこの紙に右手を触れて出てきたステータスに冒険者と書き加えるだけです」


 意外と簡単な制度に一瞬驚くものの僕は何の抵抗もなくステータスペーパーに右手を置いた。

 すると青白い光と共に文字が浮かび上がってくる。




 名前、シノブ

 性別、女

 種族、獣人

 年齢、10

 能力、気配感知+20

    気配遮断+20

    限界突破

    魔法適正

    剛腕+60

    魔力遮断

    チャーム(最大)

    念話




「獣人さんなんですか?」


「は、はい…………」


 僕はチャームの能力を発動させようと身構える。

 ここでもし『獣人だから登録できない』と言われたときのためだ。


「すご~い!!」

「獣人さんなのにこんなに能力をたくさん持ってるなんて!!」


『は?』

「は?」


 これには今まで黙っていた神様も驚きのようだ。当然僕も。


 獣人だから嫌われ者という概念がこのとき少し変化したのだった。

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