第7話 チャームの能力が強すぎる件
「じゃあこっちに来い」
そう言われて門の護衛の兵士二人に連れられ町へと入った。
町は西洋風の古典的な街並み。地面はレンガのタイルで裸足で歩いていてもあまり痛くない。
『ちょっと!考えって何よ!』
神様は少し怒り気味だ。
それもそうだ。転生して早々に体を売ると言っているのだから。
(いえ考えって程のものではないんですけどね。僕の能力の中に『チャーム』ってありましたよね?)
『あ!』
ここでようやく神様は僕の考えを理解してみたいだ。
能力『チャーム』。
これは特定の相手を魅了して集中力や判断力を削ぐことができる能力だ。正直言ってこの容姿なら『チャーム』がなくても大抵の人は可愛さで悩殺できるような…………
いや……過信は良くない。そもそも自分で可愛いって思うこと自体恥ずかしいんだけどな………
『でもそれなら門で済ませれば良かったんじゃないの?』
(確かにそうかもしれません。でもこうやって兵士に連れられて町を歩くことで人の目について『所有物』だって思われた方が今後無駄に絡まれなくて済むかな~って思いまして)
『シノブ…………あんた頭いいのね』
(正直今褒められても嬉しくありません)
だって今からやろうとしてることも自慢できるものじゃないし……第一恥ずかしい。
あ〜もう!!さっきから恥ずかしいことばっかり考えてる!!
「おい!獣人。ここだ」
うっ………着いてしまった……
酒場だろうか…………全体が木でできた少し古びた建物。
中では昼間だというのに多くの人が酒を飲んでいた。
流石は酒場……皆さん身体付きがよろしくて………
時々僕も声を掛けられたりしたけど兵士の人を見ると自分から引き下がっていった。
良い抑止力だね……
そのまま僕は二人の兵士に連れられ酒場の奥の一室に連れていかれた。ベッドが部屋の中心に置かれた…………いかにもそういうことをする部屋だ。
気分が悪くなってきた…………
「嬢ちゃんは今日から俺らのモノだ!」
そういって一人の兵士の手が僕の服を摑む。
ここらで…………
「…………乱暴するんですか?」
チャームの能力と共にできる限り可愛さを装って声を出す。そして兵士の耳元で
「優しくしてくださいね…………」
まさか異世界に来てどんな事をするかと思えば、まさかのハニートラップとは……
「「うっ…………」」
どうやら効果は覿面。兵士の男たちは顔を真っ赤にして放心状態だ。
それでも暴力的な解決よりも断然マシだしこれだけの効果があればいろんな場面で役に立つと思う。
極力使いたくはないけどね。
そして僕は足早に酒場を出た。
『あんた凄すぎでしょ…………』
(すいません褒められても全然嬉しくないです…………)
それに今すごく恥ずかしい…………今穴があれば真っ先に頭から入って身を隠したい気分だよ……
(神様、気を取り直して行きますよ!)
もう忘れよう!!
僕は最後にそう思った。
だけどやっぱりこれから『チャーム』にはお世話になっちゃうんだよなぁ……
・・・
「すいません、換金屋さんですか?」
場所は変わり酒場から少し離れた小さなお店。この小さなお店がこのルノメンの町唯一の換金屋さんらしい。
「どうしたんだい?嬢ちゃん」
店のカウンターに姿を表したのは80過ぎくらいのおじさんだ。腰が曲がっていて目線が同じ位置にある。
「えっと…………換金をしてもらいたくて…………」
「換金ね…………どれどれ見せてごらん」
僕はカウンターに担いでいた葉っぱのカバンを置いた。
「これです」
「こここここ、こんなに沢山!?」
おじさんの目が限界まで開かれる。正直怖い。そして何度も僕の顔と葉っぱでできたカバンを交互に見る。
「はい…………そうです。いくらくらいになりますか…………」
「…………。銀貨30枚かね」
30枚か…………あんまりだな。三日間ひたすら戦った割には少ない金額だ。
『シノブ…………このおじさん、嘘ついてるわよ』
(え?嘘…………ですか?)
突然の神様の指摘に驚く。
『ええ、この量だったら少なくとも金貨二枚は軽く超えるわ』
金貨二枚?ってことは銀貨200枚!?
『シノブ、チャームを使いなさい!』
(ええ~またですか…………もう使いたくなかったのに…………)
つまり神様はこのおじさんに『チャーム』を使って本来の金額をしっかり貰えと言っているのだ。
でもついさっき恥ずかしい思いをしたばっかりだし……
さっきの言葉がまさかこんな早くに現実のものになるとは……
『いいのシノブ?このままだったら170枚も損するのよ?』
た、確かに損するのは嫌だけど…………
数分間の葛藤の末、僕はチャームを使うことにした。結果として金貨三枚も貰うことができた。
一枚はまさかのおまけだ。少し罪悪感がある。
それに僕は凄く恥ずかしいんですけどね!
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