ルノメンの町編

第6話 初の町にて

 転生してからおよそ三日目だろうか。


 僕は大分戦闘にも慣れてきていた。といってもほとんどが体術だけど…………


 ステータスは今のところ自分で確認することができないけど神様曰く着実に上昇してるらしい。

 熟練度も徐々に上昇してきてる。

 町に行ったら是非自分のステータスも確認してみたい。


 それに戦闘の練習、熟練度上げの過程で倒してきた魔物の魔石もたくさん貯まり、今では葉っぱで作ったカバンの中は魔石でいっぱいだ。


『シノブ、そろそろ森を抜けないの?あなたもう服装がボロボロよ?』


(そうですね…………髪もしっぽとかも汚れてますしそろそろお風呂にも入りたいです)


 ここ最近はほとんど毎日魔物との戦闘で服は転生した初日よりもボロボロになっていた。その破れた服の隙間からは真っ白な艶やかな肌が見えてるけど…………興奮することも無い。


 これは最近になって分かってきたことだけど転生してから日が経っていくうちに徐々に女の子の思考に近づいてきてるような気がする。と言っても自分の裸を見てもどうも思わないだとかやたらと綺麗好きになってきたとかそんな些細なことなんだけどね。


『それじゃあ町へ行きましょ。ここから一番近い町『ルノメン』だったらここからすぐよ』


(はい)


 とこんな感じで神様とも上手くやっていけてる。


 僕は早速葉っぱでできたカバンを背負う。

 どうせなら葉っぱで服も作ろうかとも思ったけど体が葉っぱと擦れてチクチクするからそれは断念した。


(じゃあ神様案内お願いします)


『ええ、任せなさい!!』


 こうして僕の三日に及ぶ森での生活は終わった。


(そういえば神様。今から行く街って大きんですか?)


『そうね…………小さめかもね。でも不自由にはならないと思うわよ?』


 その言葉を聞けて僕は安心した。ここまで来て獣人に対する扱いがひどいとか言われたらシャレにならないから…………



 とこの時僕も神様もこの言葉が現実のものになるなんて思いもしなかった。







・・・


『シノブ!ルノメンが見えてきたわよ!』


 そして森が開けるとそこには木でできた大きな壁があった。どうやらこの町は木でできた壁に囲まれてるみたいだ。

 僕はそのまま入り口と思われる場所へと向かった。

 僕の身長の三倍はある大きさの門。いや今の僕の身長が小さすぎるだけなのだろうか。


 更にその門の左右には槍を構えた護衛の兵士と思われる筋肉隆々の男が二人立っていた。


「すいません…………入れてもらえますか?」


 僕が二人の兵士のうちの一人に声を掛けるとその兵士はもう一人の兵士と顔を合わせる。


「嬢ちゃん奴隷か何かか?」


 奴隷?


「いえ…………奴隷じゃありません」


「へ~こんなかわいい子がねぇ~」


 すると兵士の一人がしゃがみ込んで顔を近づけてくる。

 う…………酒臭い


「嬢ちゃん、獣人はここから先には入れないんだよ~」


 え?

(神様、それって本当なんですか?)


『いえ、そんなことないわ!!きっと嘘をついてます!!』


 珍しく神様の声からは怒りが感じられた。


「すいません…………そんなことは聞いたことがないんですけど…………」


 と、とりあえず神様の言葉を信じてそれが嘘かどうか確かめる。


 すると兵士の一人が僕の腕を思い切り掴んできた。


「あ?獣人風情が生意気だぞ」


 ここでようやく僕はこれがどういう状況なのか理解した。

 つまりこの世界は獣人に優しくない。まさに僕が一番危惧してたことが起こったのだ。


 するともう一人の兵士も歩み寄ってくる。


「まあ俺たちのモノになるってんなら通してやってもいいけど?ん?」


 視線が僕の体に向けられる。


 気持ち悪い…………

 正直今の能力ならこんな男二人楽に倒すことはできるけど、ここで問題も起こしたくないし…………

 それに暴力で解決するなんていじめにも等しい行動に思えて僕は絶対にやりたくないと思った。

 それにこれはもう一つの能力を試すいい機会かもしれない。


「分かりました」


「お!聞き分けのいい嬢ちゃんだな!」

「それじゃあついてこい!!」


『ちょっとシノブ!!何考えてんのよ!!!』


(大丈夫です。僕に考えがありますから)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る