第3話 着任とセクハラと怒髪天



 このまま玄関先で言い争うわけにも行かなかったので、源治はしぶしぶ凛を家に入れた。



 源治の家は源治のズボラな外見とは裏腹に整っており、そこで凛はリビングに通された。凛がソファに座れば源治は改めて凛を見た。



 凛の身長は160cm程で顔については可愛いというより綺麗だという印象を受ける、恐らく街を歩けば十人の男のうち8人か9人は目を奪われる顔だ、栗色のロングヘアともマッチしている。



 体型については服の上からではよくわからないが、スカートからスラリと伸びた足は程よく筋肉がついておりそれなりに鍛えていることが伺えている。胸については・・・お察しだななどと思いながら凛を見ていれば



「何、ジロジロ見てんの?」



 凛からジト目で睨まれた。



 玄関でのやり取りといい年上に敬意を払わんやつだななどと思いながらリビングと隣接した台所から2つのコップに麦茶を入れれば1つは自分、もう1つは凛に渡しテーブルを挟んで向き合って座れば話をすすめることとした。



「お前が、昨日電話で言ってた期待の新人って奴か」



「うん、改めて名前は城ヶ崎凛。得意な術式は氷。知ってると思うけどあんたと組んでた城ヶ崎静葉は姉だよ」



「静葉なら知ってるよ。目の前のガキンチョと同じで生意気だったがお前と違ってボインだった」



「・・・セクハラだよそれ、とにかくこれから1年よろしくね。早速だけど荷物置いてシャワー浴びたいんだけど、部屋はどこ?」



「・・・こっちだ」



 人の家に来て早速シャワーを要求するのかこの糞ガキはと思いながら屋敷の空き部屋まで案内して荷物を置かせれば、浴室へ案内した。



「言っとくけど、覗かないでよね」



「ガキが、そんなセリフはもう二回り大きくしてから言え」



そんなことを凛の胸を突きながら言うと、顔を真っ赤にした凛が頭部めがけてハイキックしてきたが、上体を反らして避ければ



「甘い甘い、俺に当てたきゃそのちっぱいの成長込みで10年はかかるな。それじゃ、俺は部屋にいるから後は自分の部屋で好きにしてろ。仕事ができたら呼ぶからよ」



ニヤニヤと笑いながらそう言えば階段を使い2階に上がってしまう。



「スケベオヤジ・・・姉さんに聞いてたとおり」



2階に上がる源治を恨めしく見れば、脱衣室で服を脱いで浴室に入りシャワーを浴びながら



「何で姉さんはあんな奴と・・・」



 そんなことを呟き、シャワーを浴び終えれば予め荷物の中から持ってきた換えの下着と服に着替えれば、言われたとおりに自室で今時の15歳らしく携帯を弄ったり、武器の手入れをしていたが、ふと源治の仕事部屋が気になり、好奇心と先程のセクハラの仕返しになるようなものが見つかるかもしれないと思い、部屋を出れば源治の部屋を探し始めた。



 結論として源治の部屋はすぐに見つかった。二階の一番奥の角部屋に「源治`sROOM」と書いた板がドアに下げられていたからだ。



 幸いにも部屋に鍵はかかっていなかったのでそっとドアを開ければ、まず猛烈なタバコの臭いが凛の鼻をついた、また、部屋の中は壁一面の本棚には大量の本が並べられ、床にも大量の本が所狭しと置かれ酒瓶も何本か転がっており、まさに汚部屋であった。



 部屋の主の源治はと言うと、部屋の奥の机で何か分厚い本を読んでおり、あまりに読書に集中しているせいか凛が部屋に入ったことも気づいていないようだ。その様子を見た凛は先程の自分に対する仕打ちの仕返しをしてやろうとこっそりと歩き始めた。そして本棚からいっさつのそれなりに厚い本を手に取り源治の後ろに回った。どうやら後ろに立ってもまだ気付いていないようで、まだ源治が自分に気付いていないことを知った凛は先程胸を触られた恨みを乗せて本の背表紙を源治の後頭部に振り下ろした瞬間



 源治がいつの間にか右手に手にしていた小型のナイフを後ろを向かずに正確に投擲し、背表紙の中心を撃ち抜いていた。



 持っていた本が壁に縫い付けられる衝撃に凛が唖然としていると



「どうもお前ら姉妹は同じことをしたがるみたいだな」



 不敵に笑い椅子ごと体を回し凛の方を向けば、自分の企みがあっけなく潰えたことで苦虫を噛み潰したような顔をした凛の胸を先程浴室の前でしたように指で突けば凛は怒りと羞恥から顔を真っ赤にして源治の手を払えば



「もうあったまきた!ねえ、勝負してよ。これだけ広い屋敷なら勝負できるスペースぐらいあるでしょ?」



地団駄を踏みながら模擬戦を申し込んでくる凛に対して呑気にも若いっていいなーなどと思いながらももう少し煽ってみようと



「血が頭に登りやすいのも姉譲りだな。ってゆうかお前静葉が乗り移ってんじゃねえか?」


と煽れば



「姉さんは関係ないでしょ。良いから受けてよ。好きなんでしょ?強いやつと戦うのが」



「そうきたか・・・果たしてお前が俺を満足させてくれるかは疑問だが・・・受けよう」



「負けた方は勝った方の命令を一つ聞く事!」



「先に準備してろ」



「逃げないでよね」



小走りで部屋を出て勢い良くドアを閉める凛を見ればますます静葉にそっくりだなと思いながら昔コンビを結成した日に撮った静葉との2ショット写真を見れば自分も模擬戦をするための準備を始めた。


 こうして、この新コンビは結成した日に決闘を行う流れとなってしまった。

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