第2話 ネオンの色,羽の色

 継ぎ接ぐのは、得意。

 彼が求める応え、彼に見せた表情(かお)、彼に吐いた嘘。真っ直ぐ丁寧に縫い直してみせる。繋げてみせる。


「……酔ってない時に……手、こうしたことないよね」

「そうだっけ」


 絡まる指先の間を夜風が吹く。ネオンはもう目の前。

 今のは確認。好きで何度も傷つきたいわけがない。そう、配役を忘れないで。僕は都合のいい女。


 __彼が昔言った、酷い言葉を思い出す。


『ねぇ、好きな子がいるなら他の女と遊んでいる暇無いはずだよね』

『あの人にそれが嫌だって言われたらやめるよ』

『……誠実だけど不誠実』


 __今もまだ擦り傷が湿っている。彼は一言も好きだと彼女に伝えずに、僕が彼に好きと言う隙を埋める。


 宿泊の値段は失うものの大きさに見合わない、といつも思う。時間とか。予定とか。愛とか。穏やかな朝陽とか。全部失って、この値段。手に入るものは何?


「似合わないね、なんか」

「私がホテルに居ることが?」

「そう。来たことあるの」

「……さぁ?」


 かたいシーツの糊が嫌いだと言ったら彼はどう思うだろう。清楚系ビッチだとでも片付けるだろうか。それも悪くないかもしれない。

 ”私は幾夜もホテルで男と過ごしました”

 あぁなんて天使のよう。

 僕はただ、本当はただ、厚い胸板や力強い腕に抱かれて心の中で懺悔を繰り返しただけ。

 “男に抱かれて昂ぶってごめんなさい” と。

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