第6話
車内はまたしばらく沈黙が続いた。それから1時間くらい走っただろうか。途中、高速道路にも乗っているので、随分遠くに来たみたいだった。
薬の副作用もあるのか、僕はうとうとしながらぼんやりと景色を見ていた。次第に建物が少なくなり、代わりに山々や大きな畑が目立つ風景に変わっていく。
「家には」
急に義父が口を開いたので、僕はびくりと身を震わせて「はい」と返事をした。
「家には二人子供がいる。君の義姉と義弟になる子たちだ」
「はい、以前聞きました。たしか、名前は夏樹さんと和也君」
「以前?」
「あの、面談の時に。もしかしたら施設の人が言っていたのかもしれませんが」
「そうか」
そこで会話はまた終わり、僕は再び窓の外の景色に目を移した。こうやって何も考えずに景色だけを見ていられたらいいのに、と思った。
ふと、あの自殺をした隣の部屋のお姉さんのことを思い出す。もしあの人が生きていたら、僕は養子の話を断っていたのだろうか。
少なくとも、僕にとってある種、心の支えになっていたのは間違いなかった。けれど、あの人も誰かの支えになれるほど強い人ではなかった、ということだと思う。
僕が強く寄りかかってしまったからこそ、あの人はぱたりと倒れてしまったのかもしれない。
「誰かの支えになるってすごく難しいですよね」
僕はほとんど独り言のようにそうつぶやくと、義父は、
「君は、いや君たちは誰かの支えになれるほど強くない。だからああやって施設の中で暮らしていたんだろう?」
特別な返事を求めていなかったのに、正論で返されて、僕は「そうですね」とだけ言ってから、すこしねむろうと思い、目を閉じた。
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