第5話

「君は雪は好きかい?」

 僕の気持ちが落ち着くのを見計らったようなタイミングで義父が言った。

「あまり、好きではないかもしれません」

「そうか」

 どうしてこの人はそんなことを聞くんだろう、と僕は思った。隕石症候群患者が雪を好きなわけがないのに。


 隕石が僕の住んでいた街に落ちたあの日から、周辺地域は異常気象により未だに大雪が降っている。

 あの災害でたくさんの死亡者や行方不明者が出た。僕たち施設にいた人たちは運が良かった。即死することがなかったというのと、大雪が降る前に見つけられたから、滞りなく救助された。

 もしあの雪がなければ、もっと助かる命はあっただろう。それにまだ、回収されていない死体もたくさんある。この国の中心地だったのにも関わらず復旧作業が困難な状況で、政府は首都を他の地域に移して、あの街を破棄した。


 だから僕にとっては雪は悪いものの象徴と言って良かった。それをこの人なら当然のように知っているはずなのに、まるで嫌がらせみたいだ、と僕は思った。

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