第4話

 そして、今僕は自分の義父となる御木本大輔さんの車に乗って、新しい家に向かっている。僕が養子の話を受け入れたあと、何度か面談をして今日という日を迎えた。


 実際に会ってみても、やっぱりこの人の顔に見覚えはなかった。そして、写真で見たイメージ通り冷たい感じで、必要なこと以外は話さないような人だった。


 面談の度に施設の人は「本当にいいの?」と僕に聞いてきたが、僕はその度に「別にいいです」と答え続けた。


 もう1時間は車に乗っているだろうか、今のところ僕と義父は一言も会話をしていない。そろそろ来るかもしれない……そう思った時にちょうどいつもの発作が始まって、僕は胸を押さえて身を屈めた。


「気分が悪いのか?」

「はい……、いつもの症状というか」

 それを聞くと義父はハンドルを握っていた片手を離し、ポケットの中から錠剤を取り出して、僕に渡した。これが義父の開発している「隕石症候群治療薬」だった。

 僕がその錠剤を受け取り、「水は……」と言いかけると「それは舐めていれば溶ける。服用するのに水はいらない」と義父は言った。僕は「はい」とだけ返事をして錠剤を口に入れた。

 しばらく舐めていると、本当に気持ちが落ち着いてきて、僕は深く息を吸い込んで吐いた。

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