見えない優しさ。
私が特養で働くようになったのは、高校3年の夏だ。丁度、夏休みが始まるのと同時にアルバイトを始めた。時間の調整もできるし、何より毎日行けるから。
施設で最初に教えてもらったのはリネン交換だ。リネン交換とは、利用者が使う部屋のベッドのシーツ交換や、床掃きなどのことである。特に、この施設では個室で、常に寝ている方が多いため欠かせない仕事なのだ。
私が入って来る少し前に、リネンの人がひとり怪我のため療養していたこともあり、一番最初に教えてもらえた。
夏場のリネン交換は兎に角苦しかった。今は夏場でもフロアなどを対応していることの方が多くなっているが、でも、やはり大変なのはリネン交換だ。
エアコンをつけて作業は行うものの、一枚いちまいシーツを剥がし、枕カバーを取り、新しいものに取り替える。この作業を殆どノンストップで行う。合間に休憩は出来るが、当時の私は9時から1時までしか働いていなかったし、リネン担当の職員は9時から12時まで。この短い時間内に何人ものシーツを交換していかねばならない。
シーツ交換だけなら楽じゃないか?いいや、そんなこと全くない。ご家族がいらっしゃった時に、ぐちゃぐちゃのままのベッドを見たらどうだろう。利用者が横になって、起き上がったばかり、というのは一先ず置いとくとして、だ。気分はあまり良くないと思う。自分の両親、兄妹の部屋が汚いのはとても不愉快に感じるだろう。
それ以外にも、排泄交換などベッド上で行う場合、シーツがぐちゃぐちゃになっていると褥瘡等の原因になりうる。
兎にも角にも、リネン交換はケアを行う上でも大事なものである。
リネン交換時、私が教えてもらったのはそういった面である。その時、やりながら利用者の名前と顔を覚えることができた。
まぁ、初めて数日もしないうちにひとりでリネン交換を回さなくてはいけなくなったのは、これ以上に大変だった…。
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