はじまりのとき。
初めて、見学という目的で足を踏み入れたのは特別養護老人ホーム。そこは要介護3以上の方を受け入れている施設だった。同じ経営で少し山を登ったところにはデイサービスもある。
本当ならば私は其処で働きたいと思っていたのだが、まあ、それは後で説明するとしよう。
職場体験は今後の進路の為に、自身が体験しその職業について学び発表するというものである。
中学時代の私は誰かに命令されるのがあまり好きではなかった。それに率先して何かをやるのは好きな方だったので当時リーダーとして、施設の方とは何度かお話しさせていただくことがあった。
職場体験の日数は全て合わせて2日間だったと思う。1日目は特別養護老人ホームで、老人ホームはどのような場所かを学ばせてもらった。実際にお年寄り体験や、車椅子についても事細かく教えてもらえた。2日目はデイサービスの方へ行き、職員さんに教えてもらいながら実演形式で学ばせてもらった。
どちらも午後3時か2時くらいで終わり、そのあとはレポートまとめに入った。(数年前の記憶なので時間についてや、内容については曖昧なところがある)
その時思ったのは、やっぱり大変そうだな、私には向いていない。たったそれだけだった。しかし、その印象は意外と心の奥底に深く入っていたのだ。数年後、高校3年生の時にそれを改めて実感することになる。
年月は過ぎ、私は高校3年生となった。相変わらず適当なところや、気が短いところは変わらないが中学時代よりも考え方はだいぶ変わっていた。
高校3年となれば進路が目前に来ている。いや、早い人なら1年の時から考えているだろう。私はかなりマイペースに考えており、どうしたいか決めたのか3年の4月だった。
中学の職場体験でいった老人ホームがいい。
そう思ったのは母からのすすめだった。
介護職についてみたらどうだ、この一言がなければ今私は介護職に就こうとは思わなかっただろう。
以前、学校の作品づくりで手話を使うキャラクターが出ている小説を書いたことがある。その時に手話や介護などの資料に目を通したことがあり、興味だけはあった。興味がある中、母からのすすめ。もうこれしかないとその時、私は思ったのだ。
私はこれ!と決めたらそれに向かって突き進むところがある。保険に何か他のものを見るという考えは無く、すぐさま学校の先生と相談し、学校からという形で現在働いている施設にもう一度見学させてもらうことにした。
見学当日、一緒に見学を嫌がる先生を連れ私は施設に向かった。一人で行って来い、と言われたのだがいくら昔行ったことがあるからといって、流石に一人で見学するのは心細くてたまらなかった。
施設に向かう途中の田んぼ道で、先生と二人並んで歩いた。その時は既に心臓がどきどきしっぱなしで、喉もカラカラしていた。自分でも笑ってしまえそうなくらい緊張していたのだ。
まあ、お前なら大丈夫だろう。試しってことでもいいからアルバイトの話もしてみなさい
先生はいつもの調子でそう言ってくれた。分かってる、そんなことしか頭には思い浮かばなかったが、私はとにかく早く終わらせたい一心で頷いたのだ。
施設の見学は職場体験の時よりもあっという間に終わってしまった。各フロアをじっくりみて、簡単な説明だけを受けた。
先生に言われていたアルバイトの面接もあっという間に終わってしまい、その日のうちに合否が伝えられた。
兎にも角にもアルバイトは合格し、私は高校からインターンという形で老人ホームでアルバイトをすることになったのである。
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