40ミリのボール

囲会多マッキー

第1話

四十ミリと聞いても、なんの競技か分からない人は多いだろう。今は教えないが、この話を読む中で分かるはずだ。


まず一つ目のヒントになるが、ラケットを使う競技だ。そのラケットにも様々な種類があり、五千円程度から何十万とするものまである。もちろん、全ての競技にこれは言えるはずだ。


そして、「どれだけ良いものを使っても自分の実力が追いついてなければ意味が無い」というのも同じだ。ことわざに「弘法筆を選ばず」というものがある。これは、大まかに説明すれば「実力があるものは道具がどんなに悪いものでも上手に書ける」ということだ。


しかし、これをスポーツに当てはめることは出来ない。道具が良ければやはり強い。この「良い」というのは「高い」ではなく、自分に「合っている」もののことである。ほかにも、技術があっても精神面が弱ければ負けたりもするのだ。


私はプロの世界はあまり知らない。だから、これはアマチュア⋯⋯中学生時代の話になる。私が部活に所属していた頃の相手の選手には有り得ない人間が多数いた。


私は、相手の準備が出来たのを確認してからボールをサーブした。しかし、ボールは一切戻ってこない。普通ならこれは私の点数になる。相手が準備しているのを確認しているからだ。


「準備出来ていないから、やり直し」


正直、イラッとした。明らかにラケットも構えて準備が出来ているのに、甘いボールがくるまで一切打たないのだ。


少しずる賢い方法だが、私はしっかりとルールを守りながらも相手の腹を立たせ、上手く勝つことが出来た。


これは、一応相手が勝手に怒っただけなので一切ルール違反では無い。相手への過剰な挑発はもちろん禁止だが、挑発は一切していなかった。


「それは、マナー違反だろ」と言われても仕方がない。確かにその通りだ。私は、人としては酷いことをしたと思う。しかし、勝負はずる賢い人間がが勝てるのだ。コースや回転を考え、いやらしい所に打てば大抵は勝つことが出来る。


部活から離れ、受験勉強に集中するようになってからは「ルール」というものに縛られなくなった。そのかわりにマナーを学んでいた。


しかし、「ルールに縛られなくなっていた」というのは私の幻覚だったようである。人は、社会の暗黙のルールに縛られているのだ。面接に至っても「ルール」がある。何故か、自分自身を伝えるのでさえも「ルール」があった。


面接練習では、その「ルール」に従いながら話していた。つまり、AIと一緒で「Aと聞けばBと答える」状態だったのである。


そして、本番の面接になった。私は同じように答えていくと、終了時間の前に質問が無くなったらしい。しばらく目を見合わせながら無言の恐ろしい時間が続くと、まさかのAが聞かれずにCが聞かれた。つまり、Bと答えられなくなったのだ。


私は、ルールを逸脱することになる。私は、少し考え話し始めた。少し噛みながら出会ったが、その結果が合格になったのは、このあとの話だ⋯⋯。

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40ミリのボール 囲会多マッキー @makky20030217

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