ルールもいいじゃん!

タカナシ

ルール

 オレはなんとなくネットを眺めているのが好きだ。

 ネットサーフィンってやつだな。


 今日も今日とて、適当な単語を入れて検索してみる。


「ん? これって、よく聞くけど、どういうのなんだ?」


 オレは昔からよく聞くが、いまいち知らない単語に興味を引かれ、そのページを開く。


 そこには動画がはめ込まれており、再生マークを押す。


 動画には綺麗なブロンド髪の女性がコートを羽織って、マイク片手に説明を始める。


「ふ~ん。いいじゃん!」


 まずページに写ったのは、炭鉱だった。

「一番の見所はこの炭鉱です」


 女性が歴史的なことについて語るが、それよりオレはレトロな雰囲気に包まれるが、どことなく現代的で、昔からあるとは思えない造りの炭鉱の美しさに目を引かれた。

 動画の撮り方がいいのか、ジブリ映画にでも出てきそうな幻想的な雰囲気があるようにオレには見えた。


「ここではこんなイベントもあるんですよ!」


 そんな炭鉱ではアートイベントなども開催されているようだ。


 どんどんとその動画の続きを見ていくと、


「うおっ! なんだこれ? トリックアートか?」


 じっくりと動画を見る。

 

「いや、違う。これは、よく見ると階段か?」


 その動画は、ジェットコースターのレールを人が歩いているように見え、まるで事故か点検中の作業員かといったところだ。


「どうですか? 驚いたでしょう!」


 女性はそれを見た人物が驚くと分かっていたのだろう。動画なのに、オレの心境を確実に当ててきた。


 動画はそのレールを下から写すと階段になっているのがよく分かる。人が歩けるのは納得なのだが、ジェットコースター特有の一回転するレールに見える場所もあり、確実に見た人を驚かせる為に作っている。


 他には……っと、オレはその動画の続きを食い入るような姿勢で見始めた。


「ソーセージだ!」


 それもかなりぶっといソーセージが上手そうにフライドポテトをお供に皿に乗っている。

 しかも、ただのソーセージじゃあない!


「これはカレー味のソーセージなんですよ。美味しそうですね!」


 ブロンド髪の女性は見せ付けるようにソーセージを頬張る。


「ううんっ! 美味しいです!」


 カレーにソーセージが入っていても旨いのだ!

 ソーセージのカレー味が不味いわけがないッ!


「これは、ケチャップとカレー粉をかけただけなんですけど、定番料理になるほど美味しいんですよ!」


 ケチャップとカレー粉をかけただけ、だと! その2種を『かけただけ』と表現する意味がわからんッ!


 ぐぅ~~~~っ!


「くっ、深夜帯に見るページじゃなかったな。お腹の虫が暴れるぜ」


 オレは鋼の精神力で名残惜しい気持ちを抑えつつ、少し秒数を飛ばし先へ移る。


「う~ん! 喉越し爽やかッ!!」


「お次はビールかよッ! そうだよな! ソーセージってきたらビールだよなっ!」


 オレは急いでページを閉じた。


「くそぉ! 完全に行ってみたくなったじゃないか!」


 教科書でしか聞いたことがなかったが、どうやらいいところのようだ。

 今度行ってみよう。


 ルール工業地帯のある、ルール地方へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ルールもいいじゃん! タカナシ @takanashi30

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ