三月二十二日
昼に相手の保険会社から電話が入った。
「何度も連絡しているのですが、相手の方の意向がまだ固まらないので、今お話できることが何もありません。来週までお待ち頂けますか」
と、大変恐縮そうな声で言われた。
ここで保険会社の担当者を問い詰めても意味はないし、相手が恐縮することによる私の心理的優位は、のちのちの交渉で大変有利に働く。
むしろこの流れであれば、相手の保険会社をこちらの味方につけることすら可能かもしれないので、
「そうですか。分かりました」
と言って電話を切ってはみたものの――
正直、意味がわからない。
これが「自分は全然悪くないと主張している」ということならば、実に不愉快ではあるが、まだ意味は分かる。「過失割合に同意頂けない」も、同様である。
それが「相手の意向が固まらない」となると、まったく見当がつかない。
ただ、トラブルの際に憶測や推理によって物事を判断するのはご法度であり、常に客観的な事実をもって冷静に判断しなければならない。
それに「被害者であること」による驕りにも、十分注意しなければならない。
客観的事実は「相手のほうが悪い」かもしれないが、いくら論理的に正しいことであっても、それを主張する方法を間違えた場合には、私の過失となりうる。
自重しなければなるまい。
それにしても、確かに「結論が出るまで待つ。急がない」とは言ったものの、何の進展もないまま車の修理が一週間も放置されている事実には、愕然とする。
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