第8話 デパート

 初めて出会ったのは、デパートのショーウィンドウだった。君はキラキラと目を輝かせて、僕を見つめていた。


 誕生日。君の家族の一員となった。君は嬉しそうに「よろしくね」と笑った。


「君は今日からナルちゃんね」

 と言った。なんでナルちゃんなんだろうと思ったら「なるしすと、って。自分が好きな人の事なんだって。ナルちゃん良い子だから、自分を好きになってもらいたいのよ」と笑った。ナルシスト、か。ちょっと意味が違う気がするけど、君がつけてくれた名前、大切にするよ。


 オトウサン、オカアサンが騒いている時。君は僕をぎゅっと抱きしめながら、涙を一生懸命我慢していた。僕がぬいぐるみじゃなかったら、こんな時君を抱きしめてあげられるのに。そう思って手を伸ばしても、君を抱きしめることすらできなくて。そんな僕の気持ちを察したのか、君はぎゅっと手を握ってくれて。「大丈夫、泣かないの、泣かないの」と笑っていた。……泣きたいのは、君の方だろうに。

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