第7話 キオク

 いつだったか。両親から誕生日にもらった、クマのぬいぐるみ。大切に、大切にしていたのに。いつの間にかいなくなってしまった。


 ようやく、親が離婚するらしい。私はお母さんに引き取られて、おばあちゃん家へと引っ越す。だから、先生に会いに来た。

「先生。私引っ越すんです。今までありがとうございました」

 カウンセラーなのに、カウンセリングしてもらった覚えがない気がするけど。なんだかんだ言って、先生といた時間は嫌なこと忘れられて楽しかった気もするし。先生は

「そうか」

 と言って笑った。もっと引き止めてもらえるかもなんて思っていたから、胸がチクリと傷んだ。


「ね、先生。ここじゃなくて、前に私とどこかで会ったことある」

 そう言ったら、先生は目を見開いて、そして少し寂しそうに笑った。


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