第5話 家

「ただいま」

 誰にでもなく、そう言ってみる。珍しくリビングの明かりが付いていて、思わずドアを開けそうになって止めた。


「いつも貴方はそう……だから……」

「それはお前が……だからで……」

 お父さんとお母さんが家にいるのは珍しい。けれど会えばいつも口論ばかりだ。なぜ一緒になったのだろう。最初は好きで一緒になったんじゃないの。分からない。二人の声なんて聞きたくない。そう思って二階への階段を駆け上がると、イヤホンをつけて、本を開く。


 ……本は良い。私を別の世界へ連れて行ってくれるから。


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