第3話 ごっこ

「……はい?」

 聞き間違いかな、と思った。確かに事前に書いた問診票には「恋愛が分からないけど知りたい」と書いたけれど。


「ただし」

 私の唇に彼の人差し指がそっと触れる。

「俺のことは好きになんなよ?」

と言ってにやりと笑う。やっぱりなんか胡散臭い笑顔だと思ったら猫かぶってたのか。眼鏡越しの目はまるでイタズラを思いついた子どものように輝いている。とんだ先生に当たったものだ。

「チェンジお願いします」

「無理だな。よろしくな?彼女」

 そう言って引き寄せられ頬にキスをされる。

「はい!?」

 今年厄年なのかもしれない。大人しく家で本を読んでいれば良かった。

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