異世界のルール特集! vol.5

篠騎シオン

今月の異世界! ~カードを使って生きる世界~

さてさてやってまいりました、『異世界のルール特集』のコーナー。

もう早いものでこの企画も5回目ですね。

さて、現代ではいろいろな異世界転生・異世界転移が発生しているわけですが、

なかなか行った先の人と連絡はとれないもの。

実際、そっちの異世界ってどうなの? というか生きてるの!?

という、謎に異世界を自由に行き来できる筆者が挑みます。



—―今回インタビューするのは、カードを使って生きる世界に転生したユウキさんです。ユウキさん、本日はよろしくお願いします。


よろしくお願いします。


——ユウキさんのご出身はどこなんですか?


僕は地球の、島国の日本というところ。そこの田舎町生まれですね。


——最初に地球の、というところが、ほんとに異世界に行ってらっしゃるんだな、と感じますね。


あ、そうか! 地球ってのは、いらないのか普通は(笑)


——そうですね。まあ、かくいう筆者もあちこち異世界飛び回ってますので気持ちはわかります。それではユウキさん、あなたの今住んでいる世界のことをお聞かせください。


んー、僕の世界ではですね。一人一枚カードを持ってるんですよ。


——カード?


カードって言っても、ほんとにあの、トレーディングカードみたいな紙のカードが与えられるわけではなくて、特殊能力のことなんです。みんな自分の切り札っていう意味でカードって呼んでるんです。


——ユウキさんは、異世界転移と聞いてますが、カードはどこで手に入れたんですか?


気付いたら持ってて、使い方に関しては直感で分かった感じなので、どこでと言われても……あ、でも、こっちの人たちは特殊能力は神様から与えられているものだって言いますね。


——なるほど。紙のカードではなく、神から与えられたカードというわけですね。


そうですね(苦笑)


——ではでは、その力の神髄に迫っていきましょう。カードというのは、例えばどういうものがあるんですか?


んー、そうですね。まあ、地球の人向けの書籍だし、見せてもいいかな。これが、僕のカードです。


——あれ、ユウキさんのは本当にカードなんですね。


わかりやすいように具現化してるんです僕。どうぞ。


——これは……失礼ですが、なんて書いてあるんでしょう。


僕のこのカードはですね、『泳』です。


——エイ?


日本語で泳ぐって書いて、エイって読みます。僕が日本出身だからそう見えてるだけなのかもしれませんけど。


——なるほど。それで、これにはどんな特殊能力が?


僕はそうですね、こんな風に使ってます。(空中を自由に泳ぎだす)


——えっ、空中を、泳げるんですか!?


まあ、そんな感じです。ほかにも色々できます。このカードの特殊能力のいい点は、自分の想像力次第でどこまでも力を応用させて伸ばせるってところです。


——カードの力には無限の可能性があるわけですか。


言ってしまえばこじつけで回る世界なんですよここは(笑)そんなテーマのカードなのに、そんなことまでできるの! っていうこともよくありますからね。


——面白いですね。さて、カードの特殊能力について一通り伺ったところで、皆さんの気になる、この世界の治安・ルール等について伺ってみたいと思います。ユウキさん、治安ってどうですか?


うーん、よくも悪くもないかな。でも、現代日本よりは死ぬ危険は高いと思います。カードの殺傷能力って高いですから、重大犯罪も起きやすいんですよ。


——それでもよくも悪くもないレベルですか。


はい。殺傷能力の高いカードがある反面、捜査能力の高いカードを持っている人もいますから(笑)罪を犯せば大体捕まるのでそれが抑止力になってるかな。


——検挙率で行ったらどのくらいなんですかね。


半年ぐらい前に見た新聞だと確か、90パーセントとか?


——それはすごいですね。ユウキさんは暮らしてて、犯罪にあいそうになったこととかありますか?


んー、僕はないかな。異世界転移者の居住区エリアは警備が厳しいから。


——そんなエリアがあるんですか。


そうです、この世界は異世界転移者が多くて仲間がたくさんいます。だからこそ、それだけでは優遇してもらえないんですよね。実は勇者とかやってみたかったんですけど、機会はなさそうです。


——勇者、憧れますよね。それでは勇者になれなかったユウキさんですが、この異世界に来て正解だったと思いますか?


嫌な言い方するなぁ。僕はこの世界に来てよかったって思ってますよ。僕に関しては、ですけどね。誰でも異世界転移したら楽しいよ! と勧めたりはしません。ほかの世界に行っても、自分を発端とするトラブルだったら絶対起こる。異世界転移をするかどうかは、今一度自分と周囲の関係性を見直してみてからでも遅くないじゃないでしょうか。


——ユウキさんはどういった経緯で異世界転移を?


商店街のくじ引きをしたら、好きな世界に異世界転移できる券が当たって……疑ってますね、ほんとに嘘じゃないんですよ。


——いえ、疑ってませんよ(笑)(しばらくお話を聞きましたが、ユウキさんが異世界転移した方法はわからずじまいでした)では、ユウキさんが、おかしいなって思うこの世界のルールはなにかありますか?


うーん、みんな結構仕事とかでカードを活用して働いてるんですけど、カードの名前を知られないようにするってルールがありますね。


——なるほど。でもそれって、やってる仕事で大体想像がつきませんか?


そうなんですよ。だから、僕からしたら謎ルールで(笑) 


——でも、ルールとして存在するのなら守ったほうがいいと思いますよ。


僕は全く信じてないからなぁ。だからこそ、さっき見せちゃえたんですけどね。


——ルールにはなにか意味があると思いますよ、経験上。


んー、そうかもしれません。以後気を付けます。


——生活で困ることとかありますか。


異世界で生きていくのもなかなか難しいですよ。僕はここがぴったりとはまったんでよかったんですけど。文化の違いに悩むことはやっぱりありますし。だから、異世界転移するときは必ず行先の世界の下調べをしたほうがいいと思います。


——今日は貴重なお話をありがとうございました。最後にユウキさん、ご家族の方に一言あればどうぞ。


お父さん、お母さん。僕はなんだかんだ元気でやってるから、心配しないでね!



次回の『異世界のルール特集』は、トラックにひかれて異世界転移する人が多い世界について特集します。お楽しみに♪



〈お悔み〉

ユウキさんが一昨日逝去されたとの連絡が入りました。

ご遺族のもとに届いた情報によると、弊社からの取材だけではなく、自分のカードの内容を他人に話していたことが原因でお亡くなりになられたとのことです。

編集部一同非常に混乱しておりますが、ご遺族からの強い願いにより、この記事の掲載を決定いたしました。最後にご遺族から読者の皆様へのメッセージです。

「ルールがなぜあるのか、よく考えてから行動してほしい。息子の死を無駄にしないで」

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