第×話
少女の世界は絶望という名の一色で塗り潰されていた。
真っ黒な闇。自分の姿さえ黒く染まってしまって見つけられない。
だけど、それは初めからだったわけじゃない。
この世界に希望なんて無いのは知っていたけど、光なんて無いのは分かっていたけど。
それでも信じるものがあったのは事実だった。信じた誰かがいたのは確かだった。
たった一人の、かけがえのない親友。彼女の存在が支えになっていたのか、それは今となってもよく分からない。
『あ、あのね! わたし本当は……あなたと友達になりたかったの!』
『桜華。わたし達、ずーっと友達だからね!』
だけど──少女の僅かな希望は、裏切りによって破り捨てられた。
友達だと。親友だと。そう言った彼女は少女の手を離した。
悲しかったわけでも、絶望したわけでもない。ただ、そこで全てに見切りがついた。
だから少女は世界が嫌いだった。いずれこの世界に喰い潰されるくらいなら、誰かに殺してほしかった。
そして全てに裏切られた彼女はやがて、ただ純粋な疑問に行き当たる。
自分は、何の為に生まれ死んでいくのだろう?
暗闇の中で、少女はその答えを探し続けた。誰も教えてくれないのだから、自分で見つけ出すしかなかった。
それでもどれだけ知識が増えたところでその問いの真相は分からない。
彼女はいつしか、“答えが見えない問題”に手を伸ばすのをやめてしまった。
分からない事に対する恐怖。膨大な知識の中にその答えが無い事が何より恐ろしくて。
その頃にはもう、少女は世界に希望を抱くのをすっかり諦めていた。
誰でも良い。だから、もう私を『終わらせて』ほしい。
そんな時の事だ。
少女は白き死神と出会った。
人に惹かれた事は無かっただろう。他人に興味を抱くのも初めてだった。
気付けば彼女は、青年を求めていた。
──さて、ここでいつかの答えの無い問いをもう一度。
独りの少女と一人の化け物。
救われたのは、どちらだったのか。
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