第二十四話 悪い報せ
「では三件目のご報告ですが」
「まだあるのか……」
「これが最後であります。そしてもっとも重要な案件でありますので、どうかご辛抱下さいませ」
こほん、と咳払いをしてからBBは告げる。
「いわゆる
「なんだと?」
耳を疑う。
現段階で迷宮を発見したのは、モニカとマジパナの一行のみ。その内、生きて外に出られたのはモニカとその供であるサラハヴァだけだ。敵にこちらの位置を捕捉されるような不手際は犯していない筈だが……。
困惑する俺に、BBは解説する。
「我々も正確に把握している訳ではないので、憶測が交じっているのでありますが……。これまでに〈倫理のない世界〉が収集した情報から鑑みるに、どうやら天使という輩は、ある種のネットワークのようなものを有しているようでありまして。個体が得た情報は、即座に全体へ共有されるようなのであります」
……BBの言葉を理解すると同時に、体中の血が音を立てて下がったような気がした。
先の魔王の戦闘を思い出す。
あの時、マジパナは迷宮の最奥――
「……そういうことは、早く言ってくれないか」
思わず、頭を抱えて呻いてしまう。
迷宮の所在、地形、そして迷宮核の位置が明らかになったとなれば、敵は即座に準備を整えて襲撃を仕掛けてくるだろう。どれほどの規模の軍を動かすかは未知だが、少なくともこちらの兵力を上回るのは間違いないと考えるべきだ。
魔王は無敵であり、殲滅力も高い。
しかし多数の敵を相手に、
玉座の間で乱戦、などという状況に陥ることだけは絶対に避けなければならない。
もう少し時間をかけて仕込みをしたかったのだが、予定が狂ってしまった。
だが過ぎてしまったものは仕方がない。今は対策に尽力しなければ。
「敵の襲撃まで、どれほどの猶予があると思う?」
「数日――早くて三日、遅くとも一週間以内には派兵してくるかと」
BBの推測は、俺の考えと概ね一致していた。
まずは先遣隊を組織し、調査を行って情報の裏付けと詳細化を行う。その後、何段階かに分けて軍事力を投入する……のが定石、なのだろうか。それとて俺の素人考えに過ぎず、そしてここは異世界である。
敵は天使を従え、完全な消耗品である
どうすべきか考える。
なにはともあれ、まずは兵力の増強が急務か。
ゴブリンには自力で数を増やして貰いたかったのだが、止むを得ない。直接錬成し、一個中隊ほど増員しよう。それで
あとは―――
手元の
開かれたページには、モニカとサラハヴァのデータが載っている。
* * *
《名称:マターラ・モニカ
魔素依存度:低
【能力値】
力:C→B/魔:E→D/耐:C→A/知:D→D/速:A→A+/運:D→E》
《名称:サラハヴァ
魔素依存度:低
【能力値】
力:B→A+/魔:E→A++/耐:D→B/知:B→A/速:A→A+/運:D→E》
* * *
施した〈祝福〉によって両者共に
能力値に『EX』こそないが、『+』は瞬間的に二倍の出力を発揮できることを意味するのだ。『++』なら倍の倍となる。更にモニカとサラハヴァはそれぞれ固有の魔法をも獲得しており、こちら側の戦力としては間違いなく最上位である。
……仕方がない。
命運を、彼女達に委ねよう。
「BB。一つ、賭けてみてもいいだろうか」
当たれば戦力の大幅な増強が見込める。しかし失敗すれば、全ては水泡に帰す。
そこまで部の悪い賭けではないと思うが――やはり、最悪の事態は想定しておくべきだ。
大まかな今後の方針と作戦を告げる。
それを聞いて、BBは―――
「―――なるほど、なるほど。委細、承知致しました。諸々の手配は私がやっておきますので、貴方様はどうぞ
命運を共にすることを、なんら
平素と変わらぬ態度で頷き、BBは俺の提案を受け入れた。
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