宗介サイド

第41話 社長の娘、弥栄美優(ヤサカミユ)

夏帆は本当に性格が百八十度ぐらい変わったと思う。

俺自身がそう思うぐらいなので.....だ。

そんな夏帆は過去に蹴りをつけると決意した直後から。


ほぼ全ての因縁に決着をつけに行った。

渡道に会いに行ったり。

母親の墓参りをしたり、だ。


彼女は現在、変わった事によって体が付いて行かず倒れたりした。

俺は.....そんな一歩ずつ進む夏帆を見ながら。

自分自身も自分自身を考えていた。

俺は.....親父の代わりにはなれない、と分かったから.....。


親父には仏間で.....手を合わせて報告した。

俺は.....アンタにはなれないと、だ。

だから俺自身を構築していくよ、と。

そうしていると夏帆がやって来て同じ様に手を合わせた。


「.....夏帆、本当に有難うな」


「.....ううん。これぐらいしておかないとね」


「.....」


夏帆の笑顔を見ながら.....顎に手を添える。

親父が生きていたらって考える事も有る。

それは.....夏帆に出会えなかったという事だ。

つまり絶対の俺達は交わらなかった。


「.....運命って不思議だな」


「.....?」


「.....いや、なんでも無いよ。夏帆」


夏帆に出会った事はきっと何かの使命だ。

だから.....俺は夏帆を守らないといけないと思っている。

それは伴侶とかじゃ無い。

簡単に言うと、仲間として、だ。

俺は仏間から出て、リビングに戻る。


テストは取り敢えず中間までいった。

あとは半分、頑張らないといけないな。

思いながら.....俺は夏帆を見る。

夏帆は.....いつもの如くお茶を用意していた。

三時になったらオヤツタイムだから。


「.....」


親父は.....どういう出会い方をして.....俺を産んだのだろう。

そんな事が時折、頭に過ぎる。

俺は.....夏帆をもう一度、見つめる。

夏帆はお茶を淹れるのに必死だ。

そんな夏帆を見ながら.....外の風景を見た。


「.....なあ、夏帆」


「.....何?お兄ちゃん」


「お前は俺が好きか」


「.....ファ!?」


がしゃんとポットが落ちる。

慌てる、夏帆。

そして俺を赤面で見てきた。

と、突然、どうしたの?と、だ。

勿論、好きだけど、とも言う。


「.....なんで俺が好きなんだ?」


「.....?.....それはだって.....私のヒーローだから」


「.....そうか」


何々?おかしなお兄ちゃん、と夏帆はクスクス笑う。

俺は真面目に聞いているんだけどな。

と思いながら苦笑する。

俺は.....幸せ者だな。


「夏帆。今度.....何処か行くか」


「.....それはテスト終わりの祝いって事?」


「そんな感じでもあるな」


「.....分かった。お兄ちゃんが言うなら」


夏帆は笑みを浮かべてお茶を差し出してくる。

俺はそれを受け取って、飲む。

六月の貴重な晴れ間。

俺は心が清々しい気分だった。



「今度、僕の会社の娘さんが泊まりに来る」


「.....え?」


「.....え.....」


唐突に夕食の席でそう言った、智久さん。

母さんも目を丸くする。

とは言っても.....小学生の子なんだけどね、と智久さんは言った。

会社の社長が急病で病院に入院してね。

それで預かる事になったんだ、と説明した。


「小学生ってどれぐらいの?パパ」


「小学五年生の女の子だよ」


「.....うーん.....」


でもお兄ちゃんが大丈夫かなぁ、と見てくる、夏帆。

ひっでぇ。

変な事はしないぞ俺は。

眉を顰めて思いながら.....夏帆を見る。


「.....でもお兄ちゃんなら大丈夫だよね?ね.....?」


「.....あ、はい」


本当にヤンデレが抜けているのだろうか?

まだ恐怖に感じるんだが。

思いながら.....智久さんを見る。

何時ぐらいに来るんですか?と聞いた。


「明日から一週間だね」


「.....あ、そうなんですね.....」


「じゃあお着替えとか用意しないと.....」


そうだね、巫女さん。

と智久さんは笑みを浮かべる。

でもそんなに緊張したりして硬くならなくて良いからね、と智久さんは笑みを浮かべつつ俺と夏帆を見る。

しかしながらお姉さんとお兄さんとしては宜しくね、と言う。


「分かった。努力するよパパ」


「.....そうだな、夏帆」


明日は平日なのだが.....と思いながらも。

家にはその女の子しか居ないので学校が休みらしい。

俺はどうなるんだろう.....と思いながら。

明日を待った。



「.....」


「お兄ちゃん?」


「.....」


カーテンから薄目で見たけど.....朝だと思う。

しかし何だか重いんだけど.....まさか夏帆が乗っかっているのか?

と思いながら冷や汗をかきつつ薄目を開ける。


だが、そこに居たのは夏帆じゃ無かった。

至近距離に小学生の童顔が有った.....えぇ!!!!?

俺はガバッと起き上がる。


「あ、おはよう!お兄ちゃん」


「.....ちょ、おま.....誰だ.....!?」


クリクリした目。

そして.....髪の毛を右だけさくらんぼの髪留めで結んだ女の子。

顔立ちはかなり可愛い。

ニコッとしている。


だけど.....身長は小柄だ。

小学生ぐらいの.....って夏帆ってこんな小さく?

な訳無い。

誰だコイツ!!!!!


「コラ!お兄ちゃんを起こしちゃ駄目だよ!」


夏帆がプンスカと怒りながらエプロン姿でやって来た。

事情を知っている様に見えたので夏帆に聞く。

この子は誰だ?と。

夏帆は、あ、この子は.....弥栄美優(ヤサカミユ)だよ、と言う。

聞き覚えが無い。


「.....社長さんの娘さんだってよ。この子」


「.....こんな朝早くから!?もう来たのか!?」


「うん!宜しく!お兄ちゃん!」


ニシシ、と歯を剥いて笑顔を見せた、美優ちゃん。

俺は.....額に手を添えた。

また何か.....色々起こりそうだな、と。

思ってしまう。

自然とため息が出た。

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