第40話 渡道昴との面会

16歳になって。

私は.....世界が広がった。

広がったって言うのは.....簡単に言うと。


鳥が世界に羽ばたく様に。


そんな感じで.....世界を目指す様に.....羽ばたきつつ有る。

私は今、ヤンデレの気持ちを押さえ込み。

そして.....世界を別の視点で見ようとしている。

私は変われるだろうか。


「.....」


私がやって来たのは.....と有る街に有る拘置所だ。

この場所にアイツが居る。

私の.....幸せを壊そうとした輩が、だ。


渡道昴。

私は.....お前に決着をつける。

はっきり嫌いと言う。


「.....行くか」


「そうだね。お兄ちゃん」


お兄ちゃんにも協力してもらい。

私は拘置所の中に入る。

そして.....手続きをして.....渡道に会った。


坊主頭に.....少し痩せたか。

あの時と違って、だ。

目の前のアクリル板の先に.....渡道が舐めた様な感じで居た。

ニタニタしている。


『珍しいですね。貴方が来るなんて』


「.....渡道。私はアンタに会いに来た。だけどそれは好きで会いに来た訳じゃ無い」


『.....別に良いですよ。私は.....貴方の為にまた付き纏うつもりですから』


「.....お前」


お兄ちゃんが怒った様に眉を顰める。

別に私は付き纏われようが構わないと思っている。

それがコイツだから。

だけど.....このまま終わらせる気も無い。

その様に思い、私は取り出した。


新聞紙だ。

何をしているんだ、的な目をする渡道。

私は新聞記事を見せる。

地元紙だ。


「.....アンタの事を掲載してもらった。私を襲った犯人だって」


『.....は?』


「.....地元に帰って来ても良いけど、アンタの居場所は無いと思って」


『.....あはは。それぐらいで僕を動かせるとでも?』


思って無い。

だから私は渡道が襲って来たら.....それなりに対応する。

その先ず一歩として.....掲載した。

私は新聞を仕舞う。


「.....帰ろ。お兄ちゃん」


「もう良いのか?」


「うん。ポンコツに何を言ってもポンコツだから」


帰っちゃうんですね。

と渡道が言う。

そして.....渡道はニヤッとした。

私に.....出所したら覚えておいて下さい。

と言う。


「.....期待してるよ。渡道。どんな襲い方でも私はアンタを許さない」


『.....言うね。小娘が』


渡道は悪態を吐いてニコッとした。

そして私達は面会室を出て渡道と別れ。

もう二度とこの場所に来る事は無いだろうと思いながら.....お兄ちゃんを見る。

お兄ちゃんは.....不愉快そうな目をしていた。


「.....大丈夫だよ。何が有っても私が守るから」


「.....殺すなよ」


「.....だね。殺さずに痛めつけるから」


それから私達は拘置所を後にした。

そして歩く。

その中で.....私はポツリと呟いた。

何でアイツはあんなにおかしくなったんだろうね、と。

するとお兄ちゃんは空を見て呟いた。


「.....渡道は可哀想だと思う。イカレる前はまともだった筈だから」


「.....お兄ちゃん」


「.....でもやってしまった今。俺はアイツを許す気は無い。だから.....気を付けろよ。夏帆」


「.....だね」


それから駅にやって来て。

そのまま帰る。

これで.....なんぼかの因縁に決着をつけた。


後は何をしたら良いだろうかと思いながら.....考える。

横のお兄ちゃんは笑みを浮かべていた。

その姿を見ながら顎に手を添える。



「明日からテストだけど.....準備は万全か?」


「.....だね。お兄ちゃん」


お茶を飲みながら.....私とお兄ちゃんは会話する。

今日は平日だったが、休みになったので.....家に居る。

教職員の会議の為だ。

私は.....お兄ちゃんを見つめる。

お兄ちゃんは私から目を逸らしながら話す。


「.....過去は精算できないけど、これから歩んでいけば良いさ」


「.....?」


「.....俺は.....親父を殺した過去が有る。お前は母親を殺した過去が有る。だから.....お互いに傷だらけだけど.....でも.....歩むしか無いんだ」


お茶を飲みながらお兄ちゃんはそう話した。

私は茶柱が立っているお茶を見ながら.....前を見る。

窓から青空が見えた。

私は.....言葉を発する。


「.....だね。お兄ちゃん」


と、だ。

そして.....明日のテストの事を考えながら準備をしようと.....考えた。

茶柱も立っている。

取り敢えずは.....頑張ろう、今日も明日も。

その様に.....思いながら、だ。



清算出来ない過去。

だけど.....私は清算する。

無理矢理、だ。

私は武器が何も無くなった部屋を見ながら.....パソコンを見たりする。


さて.....明日が勝負だ。

成績では.....将来に響くのだ。

気を付けなくてはいけない。


「.....」


『出所したら覚悟しておいて下さい』


「.....何でアイツはあんななのか」


やっぱり人の心ってのは分からない。

そう、静かに思いながら.....教科書から目を離して目を閉じてみる。

思い浮かぶのは.....母親だ。

母親がきっかけで全てが変わったから。


「.....」


今は集中だ。

取り敢えずあんな奴はどうだって良い。

母親も、だ。

頑張ろう、思いながら.....私は勉強した。

全ての観念を忘れる様に、だ。

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