第39話 観念の思いと母親との決別、誓い

私は真面目に真っ直ぐに生きる事を選択した。

過去を無いものに出来ないけど.....でもがむしゃらでも良いと思いながら。

とにかく前に進む事を選択したのだ。


それもあって.....私は夏風邪を治療してからの退院後、母親の墓に真っ先にやって来てから.....母親の墓を見つめる。

母親の観念に囚われている.....私が卒業する為に、だ。


「.....夏帆がこの場所に来るなんてね。どうしたんだい?」


「.....私は母親の観念から決別する為に来たんだ。パパ。これだけじゃ無いよ。これからするのは」


「.....一歩って事だね」


智久さんは笑みを浮かべる。

俺も.....複雑ながらも少しだけ口角を上げた。

この母親は私達の近くに居ない。

住職も知らない様な寺の墓で眠っているのだ。


私が殺した母親。

でも何時迄も束縛されていては.....私の将来の夢を叶えられないだろう。

その為に今日は.....母親の墓に最後という事で来た。

私は手を合わせる。


「.....嫌いな母親だったけど。仮にも育ててくれた事に感謝します」


そして私達は立ち上がって頷き合って。

住職に挨拶をしてから寺を出た。

もう会う事は無い。

さよなら、私の心のつっかえ。

全てにさよなら、だ。



「で、どうしようか」


「.....そうですね.....ご飯でも食べますか?」


「良いね。じゃあ何処かお店を探そう」


そんな会話を聞きながら.....帰る為に駅までやって来た。

私は.....その様子に笑みを溢す。

するとお兄ちゃんが私を見てきた。


「夏帆。大丈夫か」


「.....大丈夫だよ。有難う。お兄ちゃん」


「.....大きく飛躍したね。夏帆」


パパがその様に話す。

私は.....そうだね、と返事しながら.....真正面を見る。

海が見えた。


「.....」


私は母親にかなり苦しめられた。

だけど.....私は今日、決別して.....母親の墓にサヨナラを告げ。

今に至っている。

心のつっかえが少しずつ消えていく。

思いながら.....私はお兄ちゃん達を見た。


「.....有難う。今日、付き合ってくれて。お兄ちゃん。パパ」


「当たり前だね。家族なんだからね」


「そうですね」


私は笑みを浮かべた。

すると電車がやって来て.....乗り込んだ。

この土地にはもう来ないだろう。

思いながら外の景色を無意識に.....焼き付けていた。



私とお兄ちゃん、パパは街にやって来た。

それから.....小洒落たカフェに入ってみて.....色々食べ。

帰って来た。

巫女さんが迎えてくれる。


「.....お帰りなさい。皆んな」


「.....ただいまです。巫女さん」


「.....母さんただいま」


その声を受けながら巫女さんは私を見た。

それから.....手を握ってくる。

目の前で膝を曲げて私を見てきた。

そして言葉を発する。


「おかえり。夏帆ちゃん」


「.....はい。ただいまです」


さて、じゃあ皆さん。

三時のオヤツにでもしましょう。

と立ち上がって手を叩く、巫女さん。

私は.....頷いた。

パパもお兄ちゃんも頷く。


「.....今日は何かお菓子が有るんですか?」


「貰ったお菓子が有りますよ」


「母さん。紅茶を入れてくれる?」


「わかったわ」


家族の日常。

私が変わるだけで.....こんなにも明るく見えるんだな。

思いながら.....私は居ると。

お兄ちゃんが手を差し伸ばしてきた。

それから笑みを浮かべてくれて言ってくる。


「夏帆。上がろう」


「.....そうだね。お兄ちゃん」


そして私は玄関を上がった。

それはまるで.....決意したかの様に、だ。

私は.....玄関を見て。

そして.....リビングに入った。



「来週の火曜日、テストだっけ?」


「そうだよお兄ちゃん。テストばっかりだけどね」


そうだよな、と苦笑する。

テストと言えばこの時期は大体、期末考査辺りになる。

私は.....顎に手を添える。

そして考えていると.....パパが私を見てきた。


「準備は大丈夫かい?」


「.....うん。パパ。大体は勉強しているからね」


「.....そうか。無理はしない様に勉強しなさい」


「はい」


にしてもまたテストか、とお兄ちゃんは嘆く。

私は.....今回のテストを重要視にしている。

臨床心理士を目指しているのだ。

テストの成績は良い方じゃ無いと駄目だから。

将来に響く。


「.....夏帆。無理はしないで.....やろうな」


「.....だね。お兄ちゃん」


私は巫女さんとパパを見ながら.....頷く。

それから.....勉強の事を考えた。

上手くはいっているとは思うけど、復習しておこう。

思いながら、だ。



私は道具を見た。

道具っていうのは.....昔のスタンガンとか。

それはもう必要無いので.....捨てるつもりでいた。

もう.....私が使う事は無い。

私は成長したから。


「.....弱い私を誇示する為に.....持っていたんだよね」


思いながら.....道具を見る。

夕焼け空を見ながら.....ゴミ袋に突っ込んだ。

それから.....もう捨てるものは無いかと探していた時だった。

あまり見ないベッドの下。

そこに.....何か一冊有る。


「.....?」


開けてみるとそこには.....かなり古ぼけた写真だが。

母親と共に写っている私が居た。

私は眉を顰める。

若い頃の母親の写真だと思うけど.....嫌気が差した。

母親は私を抱えて笑顔だったけど。


「.....こんな事も有るんだね」


何故これが床下に有ったかは定かでは無いが。

私は.....眉を顰めつつ.....ゴミ袋にアルバムを捨てた。

それから.....手を叩く。

さよならお母さん.....私は.....前に進みます。


そう祈る様に思いながら.....目を閉じてゴミ袋に手を合わせた。


何でそんな事をしたかって?

一応.....私を育てた母親だから、だ。

だから手を合わせた。

とっておいても良いかも知れないが.....私にとっては絶望しかならない。

捨てるしか無いのだった。

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