宗介サイド

第34話 将来への希望

夏帆がかなり変わった。

何が変わったかと言えば周りへの接し方、思いだと思う。

例えば、自分以外の女に対しては凍てつく様な視線を向けていたがそれが薄れた。

そして.....最大に変わった点は.....丸くなったと思う。

性格が、だ。


俺は突然の変わり様に.....少しだけ驚きながら。

デパートの中で.....夏帆を見る。

三島と楽しそうにでは無いが、それなりに答えている。

何が夏帆を変えたのだろう。


俺がきっかけなのだろうか.....だとするなら俺は。

そうだな、俺自身も変わらないといけない所まで来ているのかもな。

それはまるで.....果てしなく広がる暗い幻想をぶち壊す様な。

そんな感じで、だ。


だけど俺は.....親父の代わりだと。

それは拭えない。

でも夏帆を見ていると違和感を感じる。


もう俺は.....親父の代わりをしなくても良いのでは無いかと。

思い始めてしまっている。

まるで.....殻を壊す雛鳥の様に.....もう自分は殻に篭る必要は無く、殻を壊して良いのかも知れない。


親父。


どう思う。

俺の今の状態を.....だ。

天国からどう見ているんだ親父。

俺は.....気になって仕方が無いよ、マジに。

その様にポケットに手を突っ込んで考えていると。


「お兄ちゃん?どうしたの?」


「.....あ?ああ。いや、何でも無い。すまん」


「.....無理はしてない?大丈夫かな」


「.....違うんだ。夏帆。お前のお陰だってな」


え?と素っ頓狂な声を出す、夏帆。

俺は.....ニコッと笑みを溢す。

そして.....じゃあ行こうか、と歩み出した。

その一歩は.....変わる為の変身する為の一歩の様に感じる。

俺は.....果穂を見習わないといけないな。


「お兄さーん。夏帆ちゃーん。このお店で食事しないですかー!」


三島さんが呼んでいる。

俺達は頷きながら歩いて行く。

天井の空を.....一回だけ見て、だ。


親父、俺はまだ答えが見つかりそうに無い。

だけど.....変わる時だと思うんだ。


その様に呟きつつ、三島さんに駆け寄った。

今から昼飯を食べるのだ。

用事はもう済んだので、後は遊ぶだけと言う事になる。

今が一番、本当に幸せな感じがした。

夏帆のお陰かな、と思う。



「このお店、良いですね。和風で」


「そうだな。あまり値段も高く無い」


「.....だね。お兄ちゃん」


そうしながらお手拭きで手を拭きつつ。

三島さんと夏帆を見る。

そんな三島さんは夏帆と和気藹々(わきあいあい)の感じだ。

とは言っても.....夏帆に無理矢理、三島さんが接近している様な感じだが。


「.....三島さん。元気だよね。もしかしてご家族とかも元気なのかな?」


「.....あ。私、孤児なんです」


「.....え.....え!?」


俺は青ざめる。

それから.....え?と小さく聞く。

一体、どういう事?と、だ。

失礼かも知れないがかなり気になる。

三島さんはそんな俺の行動にも嫌と言わず、笑顔で答えた。


「.....皆んな殺されたんです。殺人鬼に、です」


「.....え.....」


「.....」


夏帆が俯く。

その様子に慌てた様に三島さんは手を振ってから。

私は寂しく無いです、だって.....お兄さん、夏帆ちゃんが居ます。


だから全然、寂しく無いんです。

私は笑顔が保てます。

と、慌てて言った。

俺は.....横に置かれた水を見る。


「.....君は今まで相当に苦労したんだね」


「.....私は.....そうですね。.....でも.....苦労して天涯孤独と思っていたけど.....仲間達に囲まれて.....幸せなんです。今。夏帆ちゃんっていうお友達も出来て。楽しいです」


「.....強いね.....」


ポツリと夏帆がそう呟いた。

だがその言葉に.....数十秒、思考停止した様に三島さんは動きを止め。

いいや、強く無いよ。

と笑みを浮かべて夏帆の手を握った。


「夏帆ちゃんが居るから。お兄さんが居るから。皆んなが居るから。.....だから表面が強いんだよ。私。数年前まで死んでいたからね。私の人格」


「.....」


「.....夏帆。こういう時は有難うって言うんだ。それが.....一番だ」


「.....有難う.....三島さん」


驚いて青ざめてしまった。

だけど.....三島さんは本当に優しい子だ。

思いながら笑みを浮かべていると、店員が食事を運んできた。

そして.....俺達は他愛ない会話をしながら.....楽しんだ。



遊びまくって金を使い込んで。

俺達は.....駅にやって来た。

そして三島さんが伸びをして言う。

楽しかった!と笑顔で、だ。


「.....良かった。私.....お兄さんに、夏帆ちゃんに付いて来て」


「.....そう?」


「そうだよ。私、夏帆ちゃん好き。そしてお兄さんが、皆んな好き。だからまた遊んでね」


「.....」


夏帆は困惑しながら俯く。

その様子を見ながら俺は夏帆の頭に手を添えて。

そして三島さんに向いた。

微笑む。


「.....三島さん。コイツの為にまた遊んでやってくれ」


「.....はい。お兄さん」


ちょ、お兄ちゃん.....と呟く、夏帆。

俺はその様子を見ながら.....電車が来たので言う。

三島さんと夏帆に乗り込もうか、と、だ。


日が沈んで夕焼けが俺達を照らす中。

俺は.....席に腰掛けて目を閉じた。

寝る訳じゃ無い。

親父の姿を思い出して。

もうちょっとだけ待ってくれな、と思う為だ。


「お兄さん。お疲れですか?」


「.....良いや。違うよ。でも.....そうだな、ちょっと遊び疲れたかな」


「.....じゃあ寝て良いよ?お兄ちゃん」


寝る必要は無いな、と俺は顎に手を添え。

そしてハッと思い出す。

そういや、トランプ買ったな、と思って。

それからトランプを出した。


「.....ババ抜きで遊ぼうぜ?暇だしな」


「良いですね!」


「もうお兄ちゃん.....子供っぽい.....」


「そう言うな。な?夏帆」


溜息を吐く、夏帆を説得して俺達はババ抜きをした。

そして目的駅に到着して三島さんと別れ。

俺達は帰宅の途に着いた。

その中で.....夏帆が星空を見上げつつ言う。


「.....ね、お兄ちゃん」


「.....何だ?夏帆」


「.....何か色々あったね。でも.....これからも宜しくね」


「.....改まって何だよ?ははっ.....」


もー!笑わないでよ。

何だか言いたくなったから.....言ったの。

と頬を膨らませて、夏帆は言う。

俺は.....その姿を見つつ、星空を見上げた。

流れ星も有る.....幻想的な風景に.....思いを馳せる。


「.....こっちこそ.....これからも宜しくな。妹よ」


「.....じゃあ兄よ。宜しく」


「偉そうに言うな」


「それはお兄ちゃんもでしょ」


クスクス笑いながら.....俺達は家に帰る。

そして母の日を迎え、一ヶ月、時が流れて六月になった。

六月か.....と思いながら.....外の窓に付く水滴と外の雨を見る。

今月も色々、予定が有るなぁ.....と嫌気が差した。

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