第33話 世界に花が芽吹く時
一般人。
簡単に言うと凡人の考える普通とは何なのだろうか。
私は凡人の普通というものが分からない。
何故その事が分からないのか.....それはここ最近自覚した気がする。
何を自覚したのかと言うと。
私が単に本当におかしいのだ。
ただそれだけだと思う。
でも.....考えるけど私はまともな方だと思う。
だけど.....周りのクラスメイトは違うと、歪んでいると、獣だと。
その様に話してくる。
ただ私はお兄ちゃんを愛したいのだ。
それだけなのに.....何故.....。
だけど.....私にも仮にも凡人の血が流れている事が分かった。
何故分かったか。
それは.....お兄ちゃんと三島にあてられた様だからだ。
私は.....人目も憚らず涙を流した。
それは凡人だと.....三島は言う。
お兄ちゃんは大丈夫だと笑みを浮かべた。
こんな私でも変われるのだろうか。
その様に.....思う。
御託を色々と並べても仕方が無いので。
私は子供広場で子供を見た。
子供は.....何も考えず、無邪気に笑う。
癒されるという事で、三島が連れて来た。
でも.....何が癒されるのだろうか。
私には到底分からない。
ただ私の心に有るのは.....お兄ちゃんだけ。
お兄ちゃんが全てなのだ。
そう、私は.....愛するお兄ちゃんの為なら死んでも構わないと思っているぐらいだ。
私は三島に席を、外すね、と言ってトイレにやって来た。
変わったのか確認する為に顔を洗ってみる。
とにかく傷を付ける程にガシガシ洗った。
しかし顔を上げてもそこに居るのは.....私だ。
当たり前だけど私しか居ない。
さて、これでも変わったと言えるのだろうか。
でも.....こんな事でもお兄ちゃんは言う。
私は変わった、と。
「.....私は.....本当に変わったのか?」
そしてハンカチで顔を拭いてから。
女子トイレを後にして.....行くと。
お兄ちゃんが待っていた。
私に手を挙げて、よ、と言う。
「.....どうしたの?お兄ちゃん」
「.....いや。夏帆の様子を見に来たんだ」
「.....そう言えば.....用事は終わったの?巫女さんに.....渡す為の.....」
「ああ。終わったよ。それでな.....」
とお兄ちゃんは何かを取り出した。
その手には小袋が有る。
包装された、小袋。
私は?を浮かべてお兄ちゃんを見る。
お兄ちゃんは話した。
「開けてみろ。その中」
「.....え?これ、私に?」
「ああ。お前の為に買ったんだ。プレゼントってやつだな」
「.....お兄ちゃん。そんなに配慮しなくても良いんだよ」
いや、配慮じゃ無い。
これは俺自身が渡したかった。
ただそれだけだ。
と.....口角を上げた、お兄ちゃん。
私は赤面しながら.....小包を受け取る。
そして開けた。
「.....これ.....」
「熊さんのぬいぐるみのキーホルダーだ」
「.....私.....これ.....受け取って良いの?」
「.....ああ。お前へのプレゼントだ」
私は.....唖然とする。
本当に泣くほど嬉しかった。
私は胸に押し当て、そして.....涙を流す。
それから.....お兄ちゃんを笑顔で見る。
「.....有難う。お兄ちゃん」
「ははっ。また泣いたな」
「.....お兄ちゃんのせいだよ。全く」
側から見ればただの恋人同士に見える様で。
その様子に周りもほっこりとしている.....様に通りすがって行く。
私は少しだけ恥ずかしかった。
それから私の手を握る、お兄ちゃん。
「.....行くぞ。夏帆」
「.....そうだね。お兄ちゃん」
そうして私達は.....三島の元に戻った。
私は考える。
お兄ちゃんにとって幸せとは何か。
でも答えを追求しなくても良い気がしてきた。
今のお兄ちゃんは.....嬉しそうだ。
それが何で嬉しいのかは分からない。
だけど.....嬉しそうなのだ。
今はこれで良い様な気がする。
「.....お兄ちゃん。私ね」
「.....どうした?夏帆」
「私.....お兄ちゃんの妹で良かった」
「.....そうだな。俺も夏帆が妹で良かった」
その言葉に私はふふっと笑う。
それからお互いにクスクス笑い合いながら。
人混みを掻き分け、三島の元に戻る。
それから.....私達は考えた。
そして出た結論。
今日はデパートで一日を過ごそうと言う形になった。
私は.....それでも良いよ、と賛同の声を発する。
変わる世界か.....。
私は.....頑張らないといけないのだろう。
その様に.....思う。
「三島さん」
「あ.....夏帆ちゃん。お兄さん.....えっと.....」
とかなり困惑する、三島。
私は?を浮かべながら三島の背後を見る。
そこに.....子供が居た。
服装から言って、身長から言って正確には女の子と言える。
未就学児だろうけど。
「.....三島さん。その子.....誰だい?」
「迷子みたいで.....その、子供達が去った後にこの子だけ残っていて.....」
「成る程.....」
お兄ちゃんは膝を曲げる。
それから可愛らしい顔立ちの女の子の頭に手を添えた。
そして笑みを見せる。
君、名前は?と聞いた。
「.....」
喋らないか.....とお兄ちゃんは頭を掻いた。
無言でお兄ちゃんを見るその子供。
それから.....困惑した様に三島を見上げた。
その様子に三島も膝を曲げて聞く。
「.....お名前、分かる?」
「.....大橋.....朋子.....」
「.....じゃあ朋子ちゃんだね。宜しくね」
随分と話を聞くのが得意な様だった。
当たり前か、コイツは.....孤児院の出身だったな。
私は思いながら.....大橋を見る。
大橋は私の目が怖いのか、隠れていた。
「.....怖く無いよ。私は」
「.....やっ!」
「.....あれれ.....」
大橋は私を退ける様に三島の影に隠れる。
私は盛大に溜息を吐いた。
だから子供は嫌いなのだ、と思いながら。
するとお兄ちゃんが言う。
「.....親御さんが来るだろうし、取り敢えずは預けようか。朋子ちゃんを」
「.....そうですね。迷子センターとか.....」
そして見渡して迷子センターを探し始める、三島。
その事に.....私は考える。
そう言えば.....さっき迷子センターって有ったな。
思い、三島に向く。
「.....三島さん。確か.....ここまで来る時に.....」
「ん?そう言えば確かに迷子センターらしきものが有ったな。.....でかしたぞ。夏帆」
「.....いや.....ただ思い出しただけだよ。お兄ちゃん」
「.....それでも良いんだよ。些細な事が大切だからな」
そう言われ、私は顎に手を添える。
お兄ちゃんは柔和な顔をしながら.....大橋を見る。
大丈夫だからな、と言いながら頭を撫でた。
私はその姿を見ながら.....考えていると大橋がやって来る。
「.....お姉ちゃん。有難う」
「.....い、いや私は.....何もしてない」
「.....良かったな。夏帆」
「あはは」
私は.....困惑しながらも膝を曲げた。
それから.....その大橋の手を握る。
そして.....ポケットに入っていた飴玉をあげた。
その事に.....大橋は目を輝かせる。
「.....大切にしてね」
「わー!.....有難う!お姉ちゃん!」
正直、何故私がそんな事をしたのか分からないけど。
私は.....そうせずにいられなかったのだ。
これが.....これで良いのか?私は.....と思いながら大橋を迷子センターに連れて行く。
母親が来ていた様だ。
「あ、と、朋子!」
「お母さん!」
若い母親だった。
二人は抱き合って母親が良かったと言っている。
良かったですね、と言いながらお兄ちゃんを見上げる三島。
それから私を見つめてくる。
「.....夏帆ちゃん。優しいね」
「.....いや.....」
「.....昔と変わったなお前」
「.....」
正直、何故私もそんな事をしたのか。
天変地異が起こるかも知れない。
と思っていると.....大橋が目の前に立っていた。
私を見上げている。
その目に?を浮かべながら居ると。
大橋は.....ウサギ、亀などに折れられた折り紙を小さなポシェットから取り出す。
そして、お姉ちゃん達に!と言葉を発した。
笑顔で私に、お兄ちゃんに、三島に渡してくる。
最後に母親が私達を見つめた。
そして頭を深々と下げる。
「その.....朋子が.....お礼をしたいみたいです。私からも.....お礼の言葉を.....有難う御座いました。本当に.....連れて来てくれて.....」
「いえいえ。.....朋子ちゃん。有難うな」
「そうですね。朋子ちゃん。有難う」
「.....」
私も感謝の言葉を告げる必要が有ると思う。
今の状況を考えると、だ。
そして喉から言葉を出そうとしたが.....出なかった。
困惑する私。
そうしていると代わりにと言えるだろう、お兄ちゃんがお姉ちゃんも感謝しているよ、と言ってくれた。
大橋はニコッと笑みを浮かべる。
その様子に控えめの笑みで頷いた、大橋の母親。
それから.....もう一度一礼して、失礼します、と言う。
そしてバイバイ!と手を降りながらの大橋と大橋の母親は去って行った。
「.....良かったな。夏帆」
「.....良かったのかな」
後に残った私の手の中には折り紙のウサギ。
私は.....それを見ながら.....見送った。
行動に間違いが有っただろうかと不安になるけど。
でも.....きっとこれは間違いじゃ無い。
そう思って.....前をただただ真っ直ぐに見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます