第35話 夏帆の誕生日間近

今日は六月の十日だ。

俺は外の雨の景色を見ながら.....勉強をしていた。

そしてスマホゲームをしている。

取り敢えずは.....母の日は喜んでもらえた。


俺はその事を思い出し、少しだけ笑みを浮かべる。

母の日も嬉しかったがそれだけじゃ無い事も思い出して、だ。

勿論、母さんの喜ぶ姿もそうだが.....夏帆の変わった様子も嬉しかったのだ。

俺自身も.....変わろうと思えた。


「.....良かった。本当に」


そして数学を勉強し、原文を勉強する。

明日に小テストの試験だ。

そう言えば教育実習生が来るというが.....どんな人が来るのだろうな。

思いながら.....試験勉強をしているとドアがノックされた。


俺は、はい、と返事をする。

するとドアが開いた。

そして夏帆が口角を上げて入って来る。

俺はどうした?と聞いた。


「.....数学が解けないんだけど.....解けるかな?」


「.....ああ、数学か.....ってお前も頭が良いじゃんか。教える事なんて有るのか?俺が」


「うん。お兄ちゃんなら解けると思ってね」


「.....そうかよ」


俺は部屋に招き入れた。

そして横のベッドに腰掛ける夏帆を見て.....シャーペンを持って。

それから.....解説を始めた。

しかし懐かしいな、こうして高校一年の問題を解くのは。


「先ずは.....こうして、こうするんだ」


「うん」


「合っているかな.....不安なんだけど」


「大丈夫だよ。お兄ちゃん。合っているよ。多分」


そうか、と言いながら俺は夏帆に笑みを浮かべる。

夏帆は柔和な感じで.....次々と問題の考え方を聞いてくる。

その途中で.....昨日のことを思い出した。

昨日の事とは.....つまり.....夏帆の様子に関して、だ。


「夏帆。お前が変わった。だから次は俺が変わろうと思ってる」


「.....え?」


「.....お前の行動に.....俺は.....変わらなきゃなって思った。いまが正念場なのかも知れない。でも.....お前が頑張っているから.....俺も変わろうという気になったんだ」


「.....お兄ちゃん.....」


コイツは戦っている。

なら俺は.....このままではいけないのだ。

だから俺も.....戦おう。

思って、俺は窓から外を見た。

先ずは.....心を変える必要が有ると思う。


「.....お兄ちゃん。お兄ちゃんの事が大好きだよ。やっぱり」


「.....そうか。有難うな」


「昔から憧れていた存在だったんだよ。お兄ちゃんは。だから.....私も応援するよ。お兄ちゃんが戦うなら」


「.....」


夏帆は俺の手を取る。

自分自身の心の指針は定まらないコンパスの様だ。

だけど.....夏帆が.....頑張っている。

それでようやっと大海原から脱出が出来そうな気がする。

晴れ渡る空が広がる気がする。


「.....全くな。どいつもコイツも.....」


「.....」


涙が出る。

ただ.....嬉しかった。

祐太朗、龍、仲間達。

お前らも居るから.....そして夏帆が居るから。

頑張ろう、と思える。


「それはそうとお兄ちゃん。明日のテストは大丈夫?」


「.....まぁボチボチだけどな」


「.....あはは。じゃあ分からない事が有ったら聞いてね。一応.....お兄ちゃんの学年の勉強もしているんだ。暇な時」


頭良すぎだろ。

俺は驚愕しながら夏帆を見る。

夏帆は笑みを浮かべていた。

俺はその様子に.....柔和になる。

すると.....インターフォンが鳴った。


「.....誰だ?」


インターフォンがちょうど真下に見える、この部屋。

その為、窓から外を見た。

たっちゃんが立っていて祐太朗も一緒だった。


「.....アイツら何しに来たんだ?」


「家に入れる?」


「.....まぁそれは.....」


俺は掛け出す。

そして玄関扉を開けた。

すると、よ、と声を掛けてくる、祐太朗。

更に笑みを浮かべているたっちゃん。

俺は?を浮かべた。


「何しに来たんだ?」


「.....おう。テスト勉強だ。お前の家で、な」


「そういう事。だから来たの」


まぁそれなら.....と部屋の中に入れる。

雨がっぱを脱いで、傘を閉じて、お邪魔しますと言う、二人。

それから直ぐに祐太朗が俺に声を掛けた。

俺の肩に手を回して、だ。


「.....夏帆さんの誕生日近いだろ?」


「.....そう言えば.....確かにな」


「六月二十三日だったよな?だから来たんだけど。プレゼントの.....案を貰いたくて」


キモいんですけど。

なんでうちの夏帆の誕生日を知っているんだコイツ。

と思っているとたっちゃんが、ハイハイ、と雄太郎を引っぺがした。

それから俺に言う。


「.....義妹ちゃんの誕生日が来るから祝いたいからね」


「.....おう。有難うな。たっちゃん」


「そういうこった。ハッハッハ!」


それで来たのか。

でも良いけど俺に会いたいと言う事じゃ無いのな。

俺は苦笑しながら見る。

すると夏帆が二階から降りて来た。


「.....?.....どうしたの?お兄ちゃん」


「なんでも無い。じゃあ俺の部屋来いよお前ら」


と思って二人を見ると。

?を浮かべて目をパチクリしていた。

俺も?を浮かべて見つめる。

どうした、と聞いた。


「.....なんか.....義妹ちゃん丸くなってないか?」


「.....そうだな?確かに」


「.....あー.....」


色々、棘が取れたんだよな、と俺は口角を上げて説明する。

あー.....マジで?と納得する二人。

でも丸くなって接し易くなったとたっちゃんが言う。

穏やかな顔だ。


「.....」


俺はそんな二人を見て.....ゆっくり、そうだな、と答えた。

そして、さあ、と誘導する。

そうだな、と二人は靴を脱いだ。


それから.....夏帆に知られない様にの極秘作戦が始まった。

誕生日祝い。

知られる訳にはいかないな、と思いながら。

考える。

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