第28話 そもそも殺す.....とは。

殺すという言葉や行動とは一体、何なのだろうか。

そもそもそれを考える前に生き物の命の存在とは何なのだろうか。

何故人間だけ人間の命を奪ってはいけないのだろう。

周りは何故.....全力で止めるのだろうか.....。


命とは何なのだろうか。

元は細胞と肉の塊の生き物に何故そんな言葉が生まれたのだろうか。

疑問でならない。


ニュースを見ても理解出来ない。

そうであるなら命は等しく平等で有る筈だと思う。

なのに、だ。


いくら法律とは言え、70億人も居る人間の一人ぐらいは消しても良いじゃ無いか。

邪魔な物を何故、消してはいけないのだ。

人間を殺してはいけないと、そう言われるのだ?

それならば豚も牛も同じだろう?殺してはいけない筈だと思う。


お兄ちゃんと一緒に下校している私の考えている脳内を簡単に言い表そうと思う。

その前に、生き物は他の生き物を必ずと言っても良い程に捕食して生きている。

人間もその全ても例外を除いて、だ。

例外を除けば全てには命が有る。


この地球上に有る生き物は捕食しなければ生きていけない。

哺乳類、両生類、鳥類.....etc。

その全てに於いて、だ。


プランクトン、植物などの名前が在るものは、だ。

つまりこれは食物連鎖、弱肉強食と言い表されるかも知れないが。


話が戻ると、その中でも食事の必要が無いのに生き物が邪魔な物を殺したりする事も有るのだ。

縄張り争いなど、メスを巡っての争いで同じ生き物を殺害したりする事だ。

つまり上に立つ事は悪い話では無い筈。


ならば人間が邪魔な人間を殺してはいけないのはおかしいじゃないか。

人間は神なのか、違うだろう。


何故、周りの人間は否定するのだ。

人間はどれだけ偉いのだ?

神を超える気なのだろうか.....。


先程の解説の通り、邪魔な物を消していけない理由が無い。

私が独占しても良いじゃ無いか、と、だから私は制裁を加えてきた。

お兄ちゃんだけを愛す為に全てを捨てようと努力もしている。


その一つが殺す事で邪魔な物を消し飛ばす事。

それだったのだが.....。

全てに否定される為に別の方法を考えなくてはいけない。


私は闇に、悪魔に魂を売ってでもお兄ちゃんを愛す気だった。

のだが、三島の.....松添の.....全てに出会って、私の運命は.....捻じ曲げられた。

一体、私なのか?何が間違っているのだろう。


私が.....生きているのが間違いなのかと思いだした.....が。

どうしたら良いのだろうか、私は。

これでも強制的に出来ないとは殺すという言葉を受け入れられない私が.....此処に居る、と、そういう事なのだろうか?


私の頭は混乱してきている。

どれだけ考えても答えが出ないから、だ。

お兄ちゃんを愛す上で。

何故こんなにも考えなくてはいけないのだ。


「.....大丈夫か。夏帆」


「.....うん。まぁ.....」


「.....辛そうだが」


「大丈夫だよ。お兄ちゃん」


学校からの帰り道、風が吹いている。

そして足元の木の葉が舞う。

この木の葉だって命が有ったという事だろう。


私は.....殺すが分からなくなってきている。

邪魔なモノは消す、とそれが私のポリシーだった。

だけどそれは駄目だと.....。


じゃあ私のこの燻る不安はどうしたら良いの。

邪魔なものを殺したら駄目なら。

どうやったらお兄ちゃんを手に入れれたままに出来るの?

分からない。


果たして私はどの様な行動をするべきなのだろうか。

そして、私はどの様な人格が私なのか。

分からない.....。


「.....お兄ちゃん。率直に聞くね」


「.....何だ」


「.....私の事は嫌い?」


「.....」


かなり.....と言うか、相当に難しい問題だな。

その様に話すお兄ちゃんを見て私は.....静かに答えを待つ。

ただひたすらに.....射抜く様に。


「.....俺は夏帆を好きにもなれないし、嫌いでも無い。だけど、存在は特別だ」


「.....」


「.....だけどこれだけは言える。夏帆。.....殺す事が全てじゃ無いんだ。お前はこの世界を.....狭く見過ぎだ」


それはつまり、視野が狭いという事なのだろうか。

視野が狭いとはどういう事だ?

私はこの世界だけでしか生きてないから.....。


「.....俺は.....お前が病んでいると聞いて.....ショックだった。だけど.....同時に俺はお前を救ってやりたいと思った。だから.....兄としての務めを果たす」


「.....」


お兄ちゃんのこういう所が好きなのだ。

だから私は独占したい。

そう、思っているのだが。


「.....俺の生きている意味はそれだと思う。だからお前も.....頑張れ」


「.....どう頑張ったら良いの」


足が止まる。

そして私は夕日を見るお兄ちゃんを見た。

それから、私に笑む。


「.....良いか夏帆。俺は.....お前が来てくれた事が死ぬ程嬉しかったんだ。俺は.....お前の為なら何でもする。その、犯罪以外なら。だからお前は.....先ず友達を作るんだ」


「.....何で?」


一瞬、皆んなの顔が浮かんだ。

だけど、それは違うだろうと首を振った。

お兄ちゃんは話を続ける。


「小説で言えばプロット固めの様な感じかな。先ずは土台を造るんだ。.....幸せと思うものを見つけるんだ。今の.....得ている幸せじゃ無いものを、だ」


「.....友達の作り方が分からない」


「.....簡単に言えば友達と思えるものが友達じゃ無い。心が否定しながらも許したのが友達だ。友達は大事だ。俺みたいに.....ならない様にな」


「お兄ちゃんだけじゃ駄目って事だね」


良いね、頭の回転が早いな。

私の頭を撫でながら、そう言うお兄ちゃん。

そんなお兄ちゃんの顔を眉を顰めて見ながら。

私も.....何も感じない夕日を見た。


今は何も感じ無いけど.....この夕日を.....私も感じれる日が来るのだろうか。

私は.....殺す以外で変われるのだろうか。

お兄ちゃんの言う様に。


「.....お兄ちゃん」


「.....何だ?」


「.....5月.....その、母の日が来るね。何か贈るの?」


目を丸くする、お兄ちゃん。

そう、話題を変える事しか出来ない。

私は.....本当に話題力も無いな。

その様に、思った。

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