第27話 一筋の光

私は多分、異端児と呼べても良いと思う。

何故かってお兄ちゃんがそう言うから。

でも私はそうは思えない。


のだが、私はそういう認識になっている。

お兄ちゃんは灰色の中の光としか見れない。

灰色は蛆虫ども、周りの人間だ。

だから私は孤独だ。


その筈だった、のだが。


「佐賀さん。一緒にお昼ご飯、食べない?」


「.....」


なんなのだこの三島とかいう奴は。

まるで能天気なそこら辺の馬鹿の様に構ってくる。

私は堪らず、断りを入れた。

本当に鬱陶しい。


「いや、今は一人が.....」


「それは駄目だよ。だって貴方は一人になっちゃうから」


「.....」


ウザい。

今すぐにでもベーコンみたいな肉片にしてやっても良いんだが。

だけど、それだとお兄ちゃんが.....と思う。


私はイライラする気持ちを我慢しながら。

三島を見つめて、弁当箱を取り出した。

そしてニコニコしている三島の前で開ける。


マジでなんなのかこいつは。

私はただ単に不愉快極まりなかった。


「.....」


「えっとね、私は.....貴方とクラスメイトが仲良くなる事を祈ってる。だから.....ね?仲良くしてね」


「.....私は.....仲良くなる気は無いよ?」


青筋が立ちながら我慢していた言葉が出てしまった。

私はお兄ちゃんだけなのに、不愉快な言葉ばかりを言うからそうなる。

すると何を思ったのか、三島は私の言葉に明後日の方角を見つめた。

私は?を浮かべながら睨む様に見つめる。


「.....私ね、孤児なんだ」


「.....?」


小さく呟く。

私はますます???と思った。

今なんて言ったのだ。


「.....天涯孤独、一人なんだ。お父さんもお母さんも妹も.....殺されたんだよね」


「.....?!」


何.....?

私はその様に思いながら見つめる。

俯きがちで三島は話を続けた。


「昔の事なんだけど自宅に入って来た強盗に殺されちゃったんだ」


「.....どういう.....!?」


コイツは何を.....言っているのだ。

強盗に.....殺され.....天涯孤独.....だと?

そんな馬鹿な事が?

私は思いながら顔を訝しげにした。


「帰って来たらお父さんもお母さんも妹もみんな血まみれ。失語症になって.....PTSDになった。精神科に4年入院したけどね」


「.....ちょ、ちょっと待って。何でその話を私に?何で?」


私の言葉に、俯いたままの三島はハッとした。

三島は口を両手で塞いだ。

そして頭を下げる。


「.....あ.....ご、ごめんね!!!えっと.....貴方の目が.....私に似ていたから.....!!!つ、つい.....ごめんなさい.....あ、と似ているなんて言ったら駄目だよね.....」


「.....」


「.....似ているからなんだって感じだよね。忘れて」


いや、別にその事はどうだって思わない。

だけど.....何でだ。

どいつもこいつも何でそんな事を話すのだ。


私に話したって.....どうにもならないのに。

でも、話してくる。

こいつらって.....何なんだ?


「.....周りと接しないのは良くないって言いたかった。だけど、言い過ぎたと思う。本当に馬鹿だね。私って」


「.....」


食材を持つ箸が止まる。

失語症と言ったが、私は失語症を知っている。

何をどうやっても喋れなくなる障害だ。


そうなるまで家族が居なくなるってどんな気持ちなのか。

私はそう、ふと思った。

邪魔な物を殺したら、そいつにも家族は居ると、そう思う。


私は.....何を考えるべきなのだろうか。

そして私は.....何を改めれば良いのだろう.....。

一人で居る事.....か。


「貴方はどうやって現状を切り開いたの。強さをどうやって.....持ったの」


「.....え?」


「.....私には分からない。何故私が.....貴方から悪く見えるのか」


「.....私は.....強く無いし、今も.....涙が出るよ」


ニコッと笑む、三島。

そしてそれから涙を浮かべた。

三島に聞く。


「.....殺したく無かったの?相手を」


「.....殺したかったよ。幸せを.....大切な幸せを奪われたんだもの。死ぬ程悔しかったよ。.....でもそれだけが平和じゃ無いから.....って思ったの」


「.....何でそう思うだけで留まれたの」


「.....殺す.....その言葉は私は犯人と同じ事をしているだけで.....何も解決にならないってね。憎しみで人を殺しても.....何も解決しないってね」


三島は笑み交じりで話した。

私は思いっきり見開く。

それから見る。


「.....」


殺す。

その大きな言葉が.....私の中で揺らぎ始めた。

何が悪いのか分からない。

私は.....どうすれば良いのだろうか。

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