第24話 夏帆が一人前になるまで

渡道の侵入騒ぎの後。

警察官、刑事が来て実況見分などが行われ。


どうなったかと言うと、渡道は建築物侵入の疑いで外で警察に緊急逮捕された。

俺達は暫く実況見分をしている警察に付き合い。


.....そしてそのままその日はあっという間に夜になった。

その、何だ.....うん。


義妹が.....サイコパスでは無いかという事に気が付て俺は酷くショックを受けているんだが。

静かに俺は頭を抱えていた。

誰にも相談が出来ない悩みで有るという事も。


「.....何でだ.....」


本当のマジに混乱している。

頭の中がボールペンで書き殴った様にめちゃくちゃ。

ぐっちゃぐちゃ。


真面目にこれからどう義妹に接したら良いのかもう分からない。

義妹は何故.....サイコパスなのか。

違うと思ってもあんな物を見せられたら流石にもう何も言えないだろう。


隣に殺人未遂者が居る.....という事か。

警察には何も言えなかったし、何も言わなかったから良かったけど。

しかし.....俺一人で抱え込む.....か。


「でも皆んなを救ったのは.....事実なんだよな.....」


だけど、いや、そうなんだけど。

ただ、マジに冷や汗が止まらない感じ。

恐怖、混乱、これから先の悩みしか無い。


駄目だ、文章化出来ない。

この事は家族にも話すべきなのか。

それとも話さないでおくべきか。

どっちだ。


そしてまさかと思うが、ずっと俺を監視していた訳じゃ無いよな?

それでずっと携帯がおかしい状態なのか?

そうなのか?違うよな?

違うと言ってくれ。


コンコン


「.....はい」


「.....お兄ちゃん.....私だけど.....その、お兄ちゃんならと思って」


「.....」


俺はトボトボとドアに近付きそしてゆっくりとドアを開ける。

目の前に不安そうな顔付きの夏帆が立っていた。

小動物が怯える感じで見つめてくる。


静かに俺はその夏帆を見つめる。

コイツがサイコパスの化け物とは思いたくは無い。

だけど.....コイツを化け物だ.....と思ってしまう。


このままだと真面目に.....コイツの未来が。

俺達の今が、家族関係も、全てがぶっ壊れるだろう。

そして人の目は冷たくなるだろう。


俺は夏帆の手を握る。

この事に酷く驚く夏帆。

そんな夏帆を真っ直ぐに見据えた。

真実を話す目で、だ。


「.....夏帆、病院に行こう。お前のその性格は.....絶対にヤバい気がする」


「.....」


「.....智久さんとかには話した所でどうにかなるとは思えないが.....今は悲しむだけだと思う。知らせるべきじゃ無いと思うから.....俺と夏帆。今はそれで病院に行くぞ」


「嫌だ.....」


.....は?な.....!?

今なんつったコイツ。

俺は酷く見開く。


予想外の言葉に動揺しながら夏帆を見る。

夏帆は涙目でそして俺を見据えてきた。

ちょっと待て、何でだ夏帆.....?

プルプル震えながら夏帆は叫んだ。


「.....私は頭がまともだから.....!だから!」


「.....すまん。夏帆。どう考えても今回は.....お前の意見を断る事は出来ない。少なくともマジにマトモじゃ無いと思う。病院に行くべきだ。多重人格も有り得る.....」


「私はマトモだって言ってんでしょう!!!お兄ちゃんなら分かってくれるって思ったのに!!!せっかく.....相談したのに!!!」


「か、夏帆!!!」


そのまま部屋を飛び出して駆け出して行く、夏帆。

俺は追い掛けて行くが、つまづいてその場で思いっきり転んだ。

このクソッタレ!

ドダダ!と音を鳴らしながら、下に降りて行く夏帆。


俺はそれを止めようとした。

のだが、指先が痛くてマジに起き上がれない。

この.....く.....!


「夏帆ォ!」


その様に叫ぶ。

すると玄関の前で止まる様な音がした。


俺は見開いてすぐさま追い掛けると、菊池先輩が玄関先に居て。

その菊池先輩を巫女さんと智久さんが相手をしていた所に行った様だ。

何だこれは?この時間から?

思っていると、智久さんが控えめに話した。


「.....夏帆」


「.....何?お父さん.....」


智久さんは控えめな目で見つめる。

夏帆が不安そうに聞いた。


智久さんは言いづらそうな感じで口籠もっていたが。

意を決した様に話す。

菊池先輩を一瞬だけ見てから、だ。


「.....菊池さんから聞いたけど.....夏帆.....その.....この先の橋から飛び降りようとしたらしいね」


「.....えっと.....夏帆ちゃん.....何か悩んでいるの?」


何故、このタイミングでその言葉を、その様な感じで、夏帆は止まる。

俺はその様子を見ながら、夏帆の肩に手を置いた。

菊池先輩はマジに心配して来たのだろう。


「夏帆.....」


「.....嫌だ.....私は.....」


こんなに色々と苦しむ夏帆は見てられないし、このままでは家族が壊れる。

義妹が悩んでいるのに手を差し伸べない男は男じゃ無い、とその様に思いながら、必死に話すが。

夏帆は全く言う事を聞かない感じだった。


「.....夏帆ちゃん。私は.....貴方が心配」


菊池先輩がその様に口を開いた。

俺と母さんと智久さんが見つめる。

夏帆は俯いて、歯を食い縛っている様に見える。


「.....菊池先輩。もう夜遅いですから.....」


「.....そうだね。でも色々と本当に心配だから。もう少しだけ様子見るよ」


「.....」


菊池先輩は悩んでいた。

俺はその菊池先輩を見ながら、顎に手を添える。

そして考え込む。

が、何も思い付かない.....。


「.....宗介くん。.....夏帆がどうかしたのかい?」


「.....精神が不安定なんだと思いますけど.....どうしたら良いか分からなくて.....夏帆が」


「.....夏帆ちゃん.....」


相変わらずの頭で答えが、出ない。

俺は顎に手を添えて悩む。

そんな中で見兼ねた様に菊池先輩が口を開いた。


「.....夏帆ちゃんは間違い無く良い子だと思います」


「.....」


「.....夏帆ちゃんは病院に行くべきじゃ無いかと思います。家族だけではもう解決が出来ないと思いますから.....」


簡単に病院を決めて良いのか?

俺は菊池先輩に静かに向く。


夏帆がこれだけ嫌がっているのに。

顔を智久さんと母さんに向ける。


果たしてどうするべきか.....。

俺は夏帆を見た。


「.....夏帆」


「な、何。お兄ちゃん」


「俺の学校に転校して来い」


静かに俺はその様に話した。

見開くみんな。

菊池先輩は焦る様に話す。


「で、でも.....!?」


「.....もう少しだけ時間下さい。お母さん。智久さん。お願いします」


頭を下げる、俺。

みんな唖然としていた。


この子は俺が責任を持って面倒を見れば良い。

そう感じた。

確かに.....このままの夏帆を放って置けない。


だけど、無理矢理に.....病院に連れて行く。

それもあまりしたく無い。

だから手を差し伸べれる所は差し伸べたい。


「.....宜しくお願いします!」


そう考える俺は。

その様に頭を下げて。

必死に懇願した。

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