第23話 ヤンデレがバレる時
いや、ってか。
廃工場なんて何処に有るんだよ。
舐めやがって畜生。
時間も無いし早く急がなければ、と思っているとスマホが震えた。
電話が掛かってきたのだ。
相手は夏帆と書かれており.....夏帆?
俺はスマホを見ながら見開いた。
「もしもし!どうした!」
『.....松添に協力なんて死んでもゴメンだけど.....今回だけと思って調べた。その、行方が分かった』
「.....え.....何処だ.....!?」
『100メートル先の.....河川敷に有る廃工場らへん』
分かった、それで夏帆、もし良かったら警察を呼んでくれ。
と言って俺はスマホの画面を切る。
渡道の野郎.....。
考えていると廃工場に着いた。
あまりでかく無いその廃工場.....の前に何故かたっちゃんが涙目で立っていた。
ど.....え?.....何.....!?
どういう事だ?
ちょっと待て、一体どうなっている?
☆
「.....どういう事だ?」
ただその一言しかポツリと出なかった。
何故かってそりゃ捕まっている筈のたっちゃんが何故か廃工場の前に立っている。
それも全くの無傷で、だ。
涙目と不安そうな顔以外は。
.....渡道は何処だ?
「ソーちゃん今直ぐに引き返して家に戻ってくれ!!!!!」
「.....は.....?」
「と、渡道は.....初めっからこれが狙いだったんだよ!全てはソーちゃんの家に.....向かう為に!」
何を.....言っているんだ、たっちゃん。
そんなバカな事が有ってたまるかよ.....?
俺は青ざめていると。
自宅から.....電話が掛かってきた。
電話番号から言って、だ。
「.....もしもし.....」
かなり警戒しながら電話に出る。
家族であることを祈りながら。
だが、絶望が.....湧き出した。
『こんにちは。渡道です』
「.....お前.....何で.....どうやって入った.....」
『ご家族の方に夏帆さんの友人と言うことで入れてもらいました。有難う御座います。お陰様で易々と入れましたよ』
なんてこった!!
俺は直ぐに踵を返した。
たっちゃんに申し訳無いと思いながら。
猛ダッシュで家に帰る。
あのクソストーカー異常者め!
絶対に許さない!
「チクショウ!!!」
運動不足の足をよろめかせながら。
ただアスファルトにヒビを入れる様に駆ける。
息が切れる。
マジに.....チクショウめが!
っていうか.....気付けよ!
タイムロスじゃねーか!
「はぁはぁ.....!」
くそう!と悪態を吐きながら俺は玄関を蹴り破って室内に入る。
玄関に入って直ぐ。
目の前に出掛け先から帰って来て.....の智久さんが倒れていた。
気絶している様に見えるが。
「.....智久さん.....!」
どうも殴られて気絶させられた様な感じで有るが.....あの野郎!
俺は直ぐに智久さんをソファに寝せて二階に上がる。
そして夏帆の部屋のドアをぶっ叩いた。
「夏帆!夏帆!大丈夫か!」
「.....お兄ちゃん。大丈夫だよ」
夏帆の普通の声がした。
どうやら間に合った?様だが。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
そして夏帆の部屋のドアを開けた。
それから目の前の光景に、目を見開く。
「.....何をしているんだ?お前!?」
「.....あ.....いや、特に何も.....」
「.....そんな馬鹿な訳あるか。お前何やってたんだ」
渡道が気絶している。
それから渡道に夏帆がナイフを入れようとしている。
ガムテープでグルグル巻きにしている様な感じの、だ。
夏帆.....?
俺は流石に青ざめた。
何やって。
え?
「.....お前.....どうやって渡道を.....ってそれは良い。何をする気だ。解放してやれよ.....?」
「.....えっと.....ごめんね、それは出来ない相談だね。コイツ.....お兄ちゃんにとっても邪魔な存在だから今処分しとかないと.....」
「.....お前.....なんかおかしいぞマジで」
「私は普通だよ。.....お兄ちゃん。コイツはどう考えても害悪だと思うから。この先も安心して生活出来ないよ?このままだと」
夏帆の目が.....。
元に戻ってくれよ。
.....そいつにも.....仮にも母親父親が居る。
大切な子供だと思う、存在が、だ。
殺して良い命なんてこの世には無い筈だ。
「.....夏帆。幾ら何でもやり過ぎだと思う」
「じゃあどうするの?お兄ちゃんに害悪だし」
夏帆を悲しげに見る。
ライトノベルで見た有る言葉が浮かんだ。
信じたく無いが。
サイコパス。
その言葉が、だ。
だけど、義妹がそうだとは思いたく無いし、もしそうでも絶対に命を奪うのは駄目だ。
「.....落ち着け。夏帆。絶対に殺しちゃダメだ。ソイツでも。.....もう十分だ!」
「十分じゃ無いよ。安心出来ない。.....お父さんも気絶させられたみたいだから.....ね」
「夏帆!」
頼むからマジで殺すな。
俺はその様に願いを込めながら居ると。
渡道がゆっくりと目を覚ました。
口をテープで塞がれている為か、叫び声が挙げられない様だが。
俺はそんな渡道を睨む。
「.....二度と俺達に近付かないのなら解放してやっても良いが」
「〜〜〜〜〜」
涙を流して恐怖を訴える渡道。
俺は夏帆を見る。
夏帆は俯いていた。
それから顔を上げて必死に訴え掛けてくる。
俺に対して、だ。
「.....コイツ、マジに解放するの?」
「.....これは警察の仕事だろ.....お前の仕事じゃ無い。夏帆。この世界は漫画じゃ無いんだから」
お兄ちゃんの馬鹿.....と夏帆は呟く。
俺はゆっくりと渡道の体に巻き付いているガムテープを剥がす。
そして最後に口元のガムテープを外した。
すると、渡道は怒った様に話し出す。
「こ、この異常女!ここまでとは!」
と言った瞬間に喉元に勢いよく夏帆がナイフを寄せて。
そして睨みながらゆっくりと話した。
「.....アンタを殺したい気持ちを抑えてるの。早く消えてくれる?」
「.....覚えてろ!」
渡道は言葉に青ざめながらそのまま走って行く。
俺はそんな光景を見ながら、戸惑っている夏帆を静かに見た。
夏帆はナイフを持ったまま俯く。
「.....失望じゃ無いけど.....夏帆。俺は少し悲しい」
「.....」
その様に少し思いながら、涙目になる夏帆を見た。
ファンファンとサイレンの音が聞こえる。
どうやらたっちゃんが警察を呼んだ様だが.....。
「夏帆。すまないけど俺に暫く近付かないでくれ。お前が怖い」
「わ、私は普通だよ.....!お願い!そんな事を言わないで.....!」
正常に戻った夏帆が訴えるが。
それは.....すまないが。
信頼が出来ない。
そう呟いて、ゆっくりと夏帆の部屋を後にした。
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