第22話 松添龍、誘拐される

私立七浜高校一年、渡道昴。

かなりのイケメンで夏帆と中学1年生の頃、同級生だったらしい男。

渡道自身が手紙を夏帆に出して告白して付き合ったらしい.....が。

夏帆にとって嬉しい事だったらしいが.....。


ただ単に渡道は頭のおかしい変質者らしい。

何故なら夏帆のその性格に惚れたらしいが.....かなり溺愛しているそうで。

夏帆曰く.....かなりの後悔の相手という。


中三で中学を卒業と同時に渡道と別れると宣言したらしいが、結論から言って夏帆はそんな渡道と別れる事が出来ず。


渡道は夏帆を付け回しているストーカーになったらしい。

今、夏帆はその渡道に追われない様に努力をしているらしいが。

余りにも不気味な話だ。


そして渡道から逃げていたらしいが、土曜日に偶然に再会し今に至る。

義妹は自殺未遂を起こして、そして渡道と再会してから自室部屋から出て来ない。

何をやっているのだろうか.....。


まさかまた悩んで自殺未遂をやっている訳じゃ無いよな?

かなり悩みながら、俺は部屋の前でノック体制を取る。

そして意を決してノックした。

とにかく今は.....安全として夏帆の事は後回しだ。


コンコン


「.....はい」


「.....俺だ。夏帆」


「.....お兄ちゃん.....」


ガチャッとドアが開いた。

そこに、私服姿の夏帆が立っている。

俺はその服装を見る.....のでは無く、手首。

そして首元を見た。


自殺を図ってないかを見る為に。

そしてそれが無い事が確認出来たので、俺は目線を合わせる。


「.....渡道の事か」


「.....いや.....違うけど」


「.....違わないな。お前は.....渡道の事で悩んでいるな」


見開く夏帆、なんで分かったかって感じだ。

そりゃ俺の事を考えているだけのお前には分からないだろう。

嘘を吐いている時、夏帆の右の瞼が僅かに痙攣を起こす。

これは癖と言えるが。


「.....渡道は.....気を付けよう。お互いに」


「.....そうだね.....あ、いや。お兄ちゃんは何もしなくて良いから。私が.....始末.....」


「.....そういうのを止めて欲しいから言っている。俺は心底お前を心配している。感情が不安定だからも有るが」


「.....!」


夏帆にまともになって欲しいから。

そう願って言っているのだ。

俺はその様に思いながら、夏帆を見つめる。

夏帆は赤くなりながら、横を見た。


「.....は、恥ずかしい事を言わないでくれる?」


「.....」


「.....渡道は私の.....後悔の塊だから私で解決する」


「.....それが出来れば良いがな。何か有ったら直ぐに呼べ。良いか」


夏帆はその言葉に、分かった、と。

それだけ言って、扉を閉じた。

俺は溜息を吐いて。


そして自室に戻って、ゲームでもしようかとスマホを見た。

のだが、違和感に気が付く。

電話が掛かって来ている。


「.....たっちゃん.....?」


不在着信が6件。

しかも、たっちゃんから。

何だこれ?と思っているとまた電話が掛かってきた。


プルルルル!


「.....!」


たっちゃんがこんなにか。

焦っている?と思いながら俺は直ぐに電話に出た。

そしてゆっくりと話す。


「もしもし?どうしたんだ。た.....」


『あ、お久しぶりです、渡道です』


理解が追い付かなかったが。

直ぐに俺は激昂した。

そして言う。


「.....お前.....!!!何で電話.....!?」


『あちょっと協力してもらいまして、です」


ちょっと待て、何がどうなっている。

たっちゃんはどうした。

何故、この電話を渡道が持っている!!!!!


『話せます?』


「.....話せますって.....何がだ」


『あ、いや。今ですね、廃工場に居るんですよ。それで松添龍さんをロープで縛って監禁してます。で、今話していますが.....』


「.....は?.....は?」


衝撃で言葉があまり聞き取れなかった。

おい、今何つったコイツ。

俺はその様に思いながら、青ざめた。

そしてスマホを見る。


「.....お前.....まさか.....!?」


『なかなか夏帆さんに会えないので、松添さんを返して欲しければ夏帆さんをこの場に連れて来て下さい。宜しくです。会いたいので』


鈍くツーツーと音が鳴る。

俺はスマホを持った手を降ろして.....心底から青ざめた。

何なんだコイツは.....何なんだマジで.....。

マジでクソか!!


ドンドン!


その鈍いノックに返事をする前にドアが勢い良く開く。

そして夏帆が飛び込んで来た。

俺はその夏帆を見ながら、頭を抱える。


「なんか.....松添が.....」


「.....」


夏帆に会えないのが上手くいかなければ誘拐ってか。

流石にこれは俺も勘弁ならない。

これは一発、ブン殴らないと話にならないかも知れない.....。

俺はその様に思い聞いた。


「.....夏帆。お前、スタンガンとか持って無かったか」


「.....え.....いや.....持って無いけど.....あれはモデル.....」


「.....いや、もう嘘は吐くな。あれはスタンガンだと思う。間違い無く.....って今はそんな事はどうでも良い。とにかくスタンガンを貸してくれ。.....奴を一発ぶちのめす!!!」


「.....お、お兄ちゃん?」


夏帆が唖然としている。

こんな俺は見た事が無い、そんな感じで、だ。

当たり前だマジの心底キレている。


流石の俺も、ここまで来たらもう許し難いと思う。

絶対に.....たっちゃんを.....救出する!

そして野郎を一発殴る!


「何なんだ!たっちゃんは悪く無いだろう!」


「.....お兄ちゃん.....ちょ、ちょっと落ち着いて.....行く当てとか有るの!?」


「マジでクソか!畜生が!」


俺は上着を羽織ってそして飛び出した。

こんなにキレたのは久々だ。

そう、夏帆が嘘を吐いた以来?

違うな.....!


「お兄ちゃん!松添は大丈夫だって!自分で.....!」


「んな訳あるか!捕まっていると聞いたぞ!」


階段を駆け下りる。

絶対に許さない。

そう、思いながら、だ。

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