第10話 計画の失敗
松添は二階に有るそれなりに真白な壁紙やぬいぐるみやイラストが有る様な.....部屋に、何も警戒無く招き入れて。
そして一階にジュースを取りに行った。
その間に部屋に仕掛けでもしとこうかと思ったが止める。
幼い頃のお兄ちゃんの写真が何処に有るのか分からないから。
私はそれを見てから、松添の精神を壊そうと思った。
ガチャッ
「お待たせしたな!えっとオレンジジュースしか無かった。ごめんな」
「全然構わないよ。有難う。たっちゃん」
「良いよ。そんな事言わなくても。山ちゃん」
親友の様に接して来る、松添。
私はその松添を見ながら早速聞いてみる。
写真の在り処を、だ。
「.....まつ.....じゃ無かった。たっちゃん。佐賀くんの幼い頃の写真って何処に有るの?」
「あ、写真ね。待ってくれよ。えっとな。.....確か棚に有ったから」
「.....」
写真を取り出したらスタンガンで気絶させよう。
私はその様に思いながら、鞄に手を突っ込む。
そして、松添に忍び寄った。
「.....にしても、私.....実は応援してるよ。山ちゃんと.....ソーちゃんの関係」
「.....え?」
「.....私は実はソーちゃんが好き。だけど.....幸せになったらいけないんだ。だって私.....その、もう死神だから」
「.....それはどういう意味?」
私のスタンガンを握っている手が止まる。
そして棚から取り出した松添。
つい、聞いてしまい隙を逃してしまった。
クソッタレ。
「.....実は私.....転校先の学校でこの男勝りな点で虐めに遭って.....今は支援学校しか行って無いんだ。しかも親父と母親は.....ソーちゃんと別れてから直ぐに交通事故死して.....お母さんとお父さんなんて言っているけど.....実は.....違う。.....多分、ソーちゃんはショックを受けるだろう。.....私、人生が破綻していて.....もう精神が壊れそうなんだよ」
「.....それはおに.....佐賀くんは知っているの?」
「.....知らないな。山ちゃん。貴方だけ、話したのは。.....だから.....お願いだ。大切にしてやってくれ。ソーちゃんを。貴方だけだよ、幸せに出来るのはきっと」
まさかの衝撃的な事に.....私は俯く。
私も.....父親しか愛を知らない。
母親からの暴力故に、だ。
だから.....それは何と無く分からなくも無い。
完全に私の手が止まってしまった。
「.....どうした?山ちゃん.....?」
「.....いや。何でも.....無いよ」
「.....?」
首を傾げる、松添。
私は母親からの暴力で人格が歪んだ。
それだけは知っている。
だから永遠の愛を求めている。
父親では満たされない愛を、だ。
こんなつもりじゃ無かった。
まだ私にも躊躇いという言葉が有ったんだな。
「.....写真見せて」
「お、良いよ」
「.....」
私は無意識にスタンガンの電源を切っていた。
計画は破綻したとする。
今度、コイツの事を.....別方法を使って何とかしよう。
そう思った。
「あ、これがね、ソーちゃん」
「.....若いね」
「でね、これが.....おか.....あさん.....」
「.....」
松添から涙が垂れて滲み出した。
私はそれを見ながら、写真を見る。
そして指差した。
「.....これがお母さんなんだ」
「.....そうだよ.....そうなんだよ.....」
「.....」
お兄ちゃんで一応に家族は大切なモノと思った。
だから私は邪魔なモノは消し出したのだけど。
こんな表情されたら手出しが出来ない。
☆
「じゃあ、帰るね」
「.....また来てね。山ちゃん。いっぱいお話ししたい」
「.....うん」
手を振る、松添。
その手をフル松添を見て思った。
次に会う時は確実に松添を仕留める。
私はそう、決意する。
手を振って笑顔を見せた。
そして駆け出して行く。
「.....アイツ.....チッ。気が狂う」
暫くやって来た所で目に痛みを感じた。
右目が痒い。
カラコン、付け過ぎた.....かな。
私は鏡を見て、充血した右目を鏡で見つつ。
カラーコンタクトを外した。
そして仕留め損なった事に.....溜息が漏れた。
次こそは精神を壊す。
その様に思いながら複雑な思いをかき消した。
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