第9話 邪魔なモノは壊すのみ

私は今は何時でも時間でも1分でも数秒でも。

本当に今、幸せだった。

何故なら側には常にお兄ちゃんが居るから。


でも、二年前に初めて出会った時は何コイツ?って感じだったんだ。

こんな、もやし男、ってね。


でもあの事件以来、今ではもう.....どんな奴らよりもお兄ちゃんが大好き。

とてもとてもとてもとてもとても愛おしくて仕方が無い。

私にはお兄ちゃんが全てで、お兄ちゃん以外考えられない。


「つーか、夏帆。お前ライトノベルをどうする気だよマジで」


日曜日のデート後の翌週火曜日。

私はまたお兄ちゃんにラノベを借りに行った。

そしてお兄ちゃんと話す。

駄目.....格好良い.....また下半身が疼いてきちゃう。


「アンタに関係有るの?」


「いや、無いけど.....でもその、ラノベを借りては読み、借りては読みって.....以前じゃ考えられ無かったぞ。お前、変わったな」


ダメダメ!

それ以上、私を誘惑しないで!!

お兄ちゃんしか見れないから。

とてもニヤつきそうな顔を抑えながら、私はお兄ちゃんを見る。


「えっと、変わって無いから。別にアンタとはこれ以上の関係でこれ以下の関係だから。何も変わらないんだけど」


「.....そうか?でもお前.....以前より俺と関わってくれて.....嬉しいよ」


「.....ッ!?馬鹿.....!」


素が出ちゃった!

バカバカ、私、何やってんの!!?

お兄ちゃんの前では冷たい女を演じるんだから。

赤面で言うなんて誤解されるよ。


「もう行くから。アンタとこれ以上、話したく無い」


「はいよ」


そして私はお兄ちゃんの部屋のドアを閉めた。

深呼吸して、赤くなりながらラノベを持って帰ろうとする。

その際に声が聞こえてきた。


「.....にしても、たっちゃん、なんでメッセージくれないんだ?こっちから送っても返事が無いし.....」


.....またあの女か。

私は目を鋭くして、目の前を睨む。

って言うか、今の今であの女が出て来るの?お兄ちゃん。


そんな事を言うお兄ちゃんを直ぐにでも殺してホルマリン漬けにしたい。

だけど、それは駄目。

私の.....モノにはなるけど、私を滅茶苦茶に出来なくなる。

だから.....駄目、今は.....。


でもあの女、松添龍は邪魔。

間違いなく私達の外敵。

私にとっては処分しないといけない。

絶対に、だ。


「.....待っててね。お兄ちゃん。私、アイツの精神を破壊して.....亡き者にするから。そしたら敵は暫くは居なくなるよね」


さあ、そうなるなら私は松添の精神を折ろう。

早速しないと.....ああ駄目。

興奮する。



「松添はこの場所に住んでいる.....」


さて、どうやって精神を折ろうか。

私はその様に考えながら、パソコンの画面を目を見開いて見つめる。

確実に仕留める方法は?


「.....そうだ。だったら私が山下として松添の所に行って、それから.....うふふ」


私は立ち上がる。

まだ時間は有るよね。

今から松添の場所まで行ってそれから会おう。


(松添さん)


(お!?山ちゃん。どうしたの?)


(今から会いませんか?お話がしたいです)


(良いよ〜。じゃあ近所のファミレスは?)


いえ、貴方の家で会いたいです。

私はその様にメッセージを送って。

そしてカラコンをした。

ウィッグもして、完璧に変装して最後に泣き黒子を着けて。


さあ、覚悟してね。

邪魔なモノは全部消去してやる。

私達の愛は変えられない。

誰のモノでも無いから♪



ピンポン


『はーい』


「私です。山下です」


『はいはい〜』


青色の家のインターフォンを押して返事を待ってから玄関が開くと、鍛え上げて有る様なお腹を見せた松添が出て来た。

私はそれを見ながら笑顔で言って手を振る。


「おー!山ちゃん!」


「.....こんにちは。たっちゃん」


「およ?どうしたの?あだ名で呼ぶなんて」


「真似してみただけだよ?入ろう?」


私の鞄の中には。

拷問器具が入っている。

この邪魔な奴を廃人にする為だ。

そして全てを手に入れる為。


この女の精神を砕かせる。

そしてお兄ちゃんに認められる。

最高。


「あれ?その手荷物、何?」


「あ、これ?これは買い物したから.....。恥ずかしいから聞かないで」


「アッハッハ!可愛いね!」


能天気にケラケラ笑う、松添。

元気な女だ。


今からお前の精神は壊されると言うのに。

私は笑みが抑えられない。

悪魔の様な笑みが。

家の中に入って、そして歩きながら聞いた。


「貴方のお部屋は?」


「こっちだよ。来て来て。今はちょっと家族が居ないんだけどね」


「.....へぇ.....」


私はチャンスだと判断して、スタンガンを取り出した。

そして松添の首筋に当てようとしたのだが。

その前に松添が気になる一言を話した。


「でも.....何だろう。ソーちゃんに会えて、そのソーちゃんの彼女にまた会えてとても嬉しい。もし良かったら幼い頃のソーちゃんを見せてあげるね」


「.....分かった。見せて」


幼い頃のお兄ちゃんは見たいな。

目の前で部屋を開ける、松添を見ながら。

私はスタンガンを素早く直し、そしてニコッと笑みを浮かべた。


ところで、何故、精神崩壊か。

それは簡単に言えばお兄ちゃんへの配慮。

だって、仮にも幼馴染だから。

ね?私って優しいでしょ?

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