第7話 私だけを見て.....

山下さんと別れてその日の午後6時31分。

俺は部屋で時計をチラチラ見ながら、ラノベを読んでいた。

今現在、夏帆が風呂に入っている。

その為俺は待機している状態だ。


「.....」


『私は貴方が好きなだけですよ?』


駄目だ。

産まれて初めての女の子からの告白に仮にも舞い上がってしまって。

ラノベに集中が出来ない。

山下さんのその言葉はとても嬉しい。


だけど.....だけど。

大喜び出来ない気がする。


何か引っかかってしまって仕方が無かった。

シコリが頭に有ってそれが取れない。

そんな感じの、だ。


そもそも、計測アプリを入れたのは誰だ。

という点だ。

俺は確か、携帯を置いて電車内でトイレに入った。


その時に仕込まれた.....のか?

それ以外で携帯を人様に晒す機会なんて.....無い。

だが、遠隔操作にしろなんにせよ。


俺の6桁の暗証番号をどうやって突破したのだ。

万桁有る数字から.....だ。

それも一応、円周率からパクったんだが。


俺はその様に思いながら、時計を再度見て外を見た。

本当に.....山下さんを信頼して良いのだろうか。


ガチャッ


「!?」


「.....宗介上がったから。風呂に入って良いよ」


夏帆がパジャマ姿で少しだけお湯のせいで赤いのだろう赤くしながら。

俺の部屋にやって来た。

何故、俺とこんなにコイツは急接近して来たんだ?

俺はその様に思いながら、立つ。


「.....どうしたのよ」


「.....いや、何でも。すまん」


「.....キモッ。ジロジロ見ないで」


でもなぁ。

こんな事を言う奴が.....俺に急接近だぞ?

おかしくねぇか何か。

俺はその様に思いながらただ冷や汗を流す。


「あ、で。ラノベ切れたんだけど。新しいラノベ貸してよ」


「.....それは良いが.....渡す代わりに聞いても良いか」


「.....何よ」


「お前、なんで突然にこんなに急接近して来たんだ?俺に」


別に、もう二年、良い加減に仲を良くしても良いかと思って。

その様に話す、夏帆。

そして俺のベッドに腰掛けた。


「宗介の義妹になる気は無いけど。まぁ見るなら同級生として同居人として見てよね」


「.....分かった。お前にラノベを貸そう。答えてくれたしな」


俺の言葉に有難うと言う、夏帆。

そういや.....二年前と言えば。

俺、夏帆の過去を全然知らないな。

まぁ、興味無いけど。


「.....そういや、右目どうしたんだ。片方、充血してんぞ」


「.....え?あ、これ.....これは.....」


「.....どうした?目でも打ったか」


「そうね。そうだと思う」


でも充血している割には目の周りに痣とか無い。

つまりコンタクトで目を悪くしたと思えるがコイツ。

目とか悪かったか?


「.....気を付けろよ」


「そ.....そうね」


俺は夏帆にライトノベルを渡す。

色々なエッチく無いラノベを、だ。

そして夏帆は部屋に戻ったのを見て。

さて、風呂風呂、と思って気持ち良くなる風呂に入った。



思えば、俺と夏帆が出会った時は最悪だった。

だが、夏帆が戦線を停止させた事により。

俺との仲は喧嘩では無くなった。


だが、夏帆はあくまで戦線を停止させただけ。

と言い張る。

つまり、終戦はして無いと。


その為、俺は夏帆の言い分に納得しながら。

日常を過ごしていた。

夜中、俺は横になってメッセージアプリを見る。


(ソーちゃん!今日は会えて嬉しかった!また会おう!)


(たっちゃん。そうだな。.....会えて嬉しかったよ。たっちゃんが変わらずで良かった)


(.....あ、でな、今日は伝えたい事が有って.....えっと、この事は秘密にしてくれよ。私とソーちゃんだけの秘密だ)


(.....?)


俺はメッセージをタカタカ打ちながら首を傾げる。

秘密にしてねとは?

思っていると、とんでも無い事が記載された。


(私、君の事が好きなんだ。あー、言ってしまった!)


(.....は?)


その言葉が述べられた瞬間。

ガタッと横の壁の奥から音がした。

それを見てから、もう一度文章を読む。


(す、好き!?俺を!?)


(おう。前から好きだったよ。言うのは初めてだけどな!)


(.....マジかよ。お前が俺を.....)


(たっちゃんとソーちゃんだけの秘密だよ。笑)


俺は赤面しながら、文章を見つめる。

何だろう、何でこんなにモテだしたんだ?俺は。

その様に思いながら、スマホを見ていると別のメッセージが表示された。


ピコン


(こんばんは!佐賀くん!)


「.....山下さん?」


俺は起き上がって、メッセージを訝しげに見つめる。

結構凄いタイミングだな。

その様に思いつつ、メッセージを打とうとした.....のだが。


(浮気しないでね。私だけを見てね)


と、先にメッセージが来て。

何か、ゾッと恐怖を感じてしまった。

監視もして無い筈だが.....?

俺は舌舐めずりをしながら見つめる。


その言葉を受けて以降。

たっちゃんからメッセージが.....来なくなった。


wi-fiを使っても何故か、だ。

その事に俺の日常がどんどん変えられていっている気がして。

俺は冷や汗をかかずにはいられなかった。


(次回、夏帆サイド)

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