第6話 ね?付き合って?

「私は貴方の事が好き。それだけだよ?」


「.....」


山下さんはその様に話して、ニコッと笑んだ。

俺は冷や汗を滲ませる。

その好きというのは、何処までの(好き)を指しているのか。


犯罪まで犯した(好き)なら。

山下さんを止めなくてはいけない気がする。


「.....山下さん。ヤバイ事に手を突っ込んでいるなら手を引いて下さい。それは.....マズイですよ。これ、もし盗撮ならその時点で犯罪ですから.....」


「.....ヤバイ事?ヤバイ事なんて何一つして無いよ?全ては貴方と一緒に居たい。そう願っているだけだから」


「.....」


何か、言っている事はマトモなんだけど。

俺にとっては犯罪にしか聞こえないのは何故だ。

山下さんをこんなに疑うのは失礼に値すると思うけど。


「そんな事より、早く遊ぼうよ。なんか人も集まって来たし」


「.....はい」


「うん、そうそう。元気元気が大事だよ♪」


汗を滲ませて訝しげな目をしながらも和かに返事をした。

正確には、和かになる様に返事をしたと言えるが。

山下さんは謎が多い。



「うわー!綺麗だね!」


「そうですね.....」


観覧車に乗った。

そして子供の様にはしゃぐ、山下さん。

俺はその山下さんを観察しながらも楽しんでいた。

なかなかでかい観覧車だから。


「えっと、じゃあ.....もう直ぐてっぺんだから.....言うね」


「.....はい?」


「私と彼氏として付き合って下さい」


「.....こんなヘボ男子とですか?本当に?」


私は運命と思った男の子と一生を共にするって決めている。

ロマンチックな場所で告白したかったの。

その様に嬉しそうに話す、山下さん。

俺はその言葉に少しだけ考える。


何か怪しい面が有るが、付き合って本当に大丈夫だろうか?と。

だけど、何だろう。

山下さんと付き合いたい気はする。

だってお前この娘は美少女だぞ?


ここで振ったら二度とチャンスは無い。

たっちゃんに負けず劣らずのこの女の子は、だ。

俺は一瞬だけ目を閉じて、そして開けた。


「.....分かりました。でも条件が有ります」


「.....何かな?」


「.....山下さん。俺は.....その.....言いづらいんですけど、マジに心の底からは信頼出来ないんです。だから.....何か怪しいと思ったら容赦無く聞きますから」


「え?うん。良いよ?もー。そんなもの無いって言っているのに」


回答が早い。

だが、俺はまぁそれなら大丈夫だろうと。

頷いて、遂に俺と山下さんは彼女彼氏になった。

産まれて初めての彼女だ。



「あ、次、私、ジェットコースターに乗りたいな」


「俺、ジェットコースター苦手なんすけど.....」


「え?ダメダメ。そんな事じゃ。彼氏の気合を見せて。ね?格好いい所が見たいな?」


青い瞳で上目遣いで、ダメ?

と言ってくる、山下さん。

勘弁して下さいよ、マジに。

そんな感じで言われたら乗らざるを得ない。


「.....あ、カップル専用ジェットコースターってのが有るよ。あっち乗らない?」


「か、カップルすか。でも今付き合い始めたばかり.....」


「でもカップルだよ?乗ろう?」


嫌嫌言う俺の手を引っ張りながら。

遂に俺は乗る事になった。

そして、動き出してジェットコースターを.....涙目で楽しんだ。

わーい、楽しいな。



「あー楽しかった!今日はとっても幸せな日!」


「いや.....俺はジェットコースターだけは二度とごめんっす」


「あはは。でも頑張ったね。流石は私の彼氏だね」


ニコニコとお土産持って笑顔の山下さん。

俺は溜息を吐く。

時刻を見ると既に楽しみまくって結構、経っていた。

俺はちょっと残念、と思いながら。


「.....今日は帰りましょうか」


「そうだね。次.....いつデートする?」


「えっと、じゃあ1週間後で.....」


「分かった。じゃあ今日は解散だね」


ニコッと笑みを浮かべた、山下さん。

そんな山下さんに一緒に帰ります?と言うと。

山下さんは私、別の方向だから.....と言った。


「じゃあね。また今度、書店でも」


「.....そう言えば山下さんって何処に住んでいるんすか?」


「乙女にそんな事を聞いちゃダメだぞ?じゃあね」


人差し指を唇に。

そのままはぐらかされてしまった。

そして山下さんは、じゃあね、と手を振って去って行く。


「.....何処に住んでるんだろうな。本当に」


呟いて、電車の時刻表を見る為にスマホを見る。

しかしそのスマホがやけに加熱している事に気が付いて.....。

俺は裏面を見て?を浮かべてバッテリーを見る。


しかし、何も付いてない。

何が一体どうなっているのだ。

俺は眉を顰めながら、スマホを開く。

ライフスタイルという見た事も使った事も無いアプリケーションが入って.....と言うか、インストールされていた。


「誰だ.....こんな事をしたヤツ.....」


俺は冷や汗をかく。

すると、メッセージが。

ビクッとしながら見るとそこには山下さんからこう書かれていた。


(また今度、会おうね♪)


「.....」


.....これをやったのは山下さん?

だったらどうやって暗証番号を突破したのだ?

俺は.....その嬉しい一言に、ただ。

汗しか出なかった。


更に言えば。

アプリケーションをインストールしようとしたが。

何故かロックが掛かっていて、出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る