第6話 ね?付き合って?
「私は貴方の事が好き。それだけだよ?」
「.....」
山下さんはその様に話して、ニコッと笑んだ。
俺は冷や汗を滲ませる。
その好きというのは、何処までの(好き)を指しているのか。
犯罪まで犯した(好き)なら。
山下さんを止めなくてはいけない気がする。
「.....山下さん。ヤバイ事に手を突っ込んでいるなら手を引いて下さい。それは.....マズイですよ。これ、もし盗撮ならその時点で犯罪ですから.....」
「.....ヤバイ事?ヤバイ事なんて何一つして無いよ?全ては貴方と一緒に居たい。そう願っているだけだから」
「.....」
何か、言っている事はマトモなんだけど。
俺にとっては犯罪にしか聞こえないのは何故だ。
山下さんをこんなに疑うのは失礼に値すると思うけど。
「そんな事より、早く遊ぼうよ。なんか人も集まって来たし」
「.....はい」
「うん、そうそう。元気元気が大事だよ♪」
汗を滲ませて訝しげな目をしながらも和かに返事をした。
正確には、和かになる様に返事をしたと言えるが。
山下さんは謎が多い。
☆
「うわー!綺麗だね!」
「そうですね.....」
観覧車に乗った。
そして子供の様にはしゃぐ、山下さん。
俺はその山下さんを観察しながらも楽しんでいた。
なかなかでかい観覧車だから。
「えっと、じゃあ.....もう直ぐてっぺんだから.....言うね」
「.....はい?」
「私と彼氏として付き合って下さい」
「.....こんなヘボ男子とですか?本当に?」
私は運命と思った男の子と一生を共にするって決めている。
ロマンチックな場所で告白したかったの。
その様に嬉しそうに話す、山下さん。
俺はその言葉に少しだけ考える。
何か怪しい面が有るが、付き合って本当に大丈夫だろうか?と。
だけど、何だろう。
山下さんと付き合いたい気はする。
だってお前この娘は美少女だぞ?
ここで振ったら二度とチャンスは無い。
たっちゃんに負けず劣らずのこの女の子は、だ。
俺は一瞬だけ目を閉じて、そして開けた。
「.....分かりました。でも条件が有ります」
「.....何かな?」
「.....山下さん。俺は.....その.....言いづらいんですけど、マジに心の底からは信頼出来ないんです。だから.....何か怪しいと思ったら容赦無く聞きますから」
「え?うん。良いよ?もー。そんなもの無いって言っているのに」
回答が早い。
だが、俺はまぁそれなら大丈夫だろうと。
頷いて、遂に俺と山下さんは彼女彼氏になった。
産まれて初めての彼女だ。
☆
「あ、次、私、ジェットコースターに乗りたいな」
「俺、ジェットコースター苦手なんすけど.....」
「え?ダメダメ。そんな事じゃ。彼氏の気合を見せて。ね?格好いい所が見たいな?」
青い瞳で上目遣いで、ダメ?
と言ってくる、山下さん。
勘弁して下さいよ、マジに。
そんな感じで言われたら乗らざるを得ない。
「.....あ、カップル専用ジェットコースターってのが有るよ。あっち乗らない?」
「か、カップルすか。でも今付き合い始めたばかり.....」
「でもカップルだよ?乗ろう?」
嫌嫌言う俺の手を引っ張りながら。
遂に俺は乗る事になった。
そして、動き出してジェットコースターを.....涙目で楽しんだ。
わーい、楽しいな。
☆
「あー楽しかった!今日はとっても幸せな日!」
「いや.....俺はジェットコースターだけは二度とごめんっす」
「あはは。でも頑張ったね。流石は私の彼氏だね」
ニコニコとお土産持って笑顔の山下さん。
俺は溜息を吐く。
時刻を見ると既に楽しみまくって結構、経っていた。
俺はちょっと残念、と思いながら。
「.....今日は帰りましょうか」
「そうだね。次.....いつデートする?」
「えっと、じゃあ1週間後で.....」
「分かった。じゃあ今日は解散だね」
ニコッと笑みを浮かべた、山下さん。
そんな山下さんに一緒に帰ります?と言うと。
山下さんは私、別の方向だから.....と言った。
「じゃあね。また今度、書店でも」
「.....そう言えば山下さんって何処に住んでいるんすか?」
「乙女にそんな事を聞いちゃダメだぞ?じゃあね」
人差し指を唇に。
そのままはぐらかされてしまった。
そして山下さんは、じゃあね、と手を振って去って行く。
「.....何処に住んでるんだろうな。本当に」
呟いて、電車の時刻表を見る為にスマホを見る。
しかしそのスマホがやけに加熱している事に気が付いて.....。
俺は裏面を見て?を浮かべてバッテリーを見る。
しかし、何も付いてない。
何が一体どうなっているのだ。
俺は眉を顰めながら、スマホを開く。
ライフスタイルという見た事も使った事も無いアプリケーションが入って.....と言うか、インストールされていた。
「誰だ.....こんな事をしたヤツ.....」
俺は冷や汗をかく。
すると、メッセージが。
ビクッとしながら見るとそこには山下さんからこう書かれていた。
(また今度、会おうね♪)
「.....」
.....これをやったのは山下さん?
だったらどうやって暗証番号を突破したのだ?
俺は.....その嬉しい一言に、ただ。
汗しか出なかった。
更に言えば。
アプリケーションをインストールしようとしたが。
何故かロックが掛かっていて、出来なかった。
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