第5話 山下はるかのスマホに映るもの

俺は凍て付く視線の正体を考えながら。

目の前に立っていて、山下さんと話している、たっちゃんを見た。

何が起こっている?そして一体、何だあの視線は?


「とっても面白い話だと思います」


「でっしゃろ?山ちゃんとは気が合いそうだ!」


「.....はい。でも私、龍さん。貴方とはお友達になれません」


「へ?」


まさかの言葉だった。

目をパチクリする、俺、そして山下さんを見る。

山下さんは俺を見て、そして悲しげな表情になった。


「.....実は、私、友達恐怖症で.....だからお友達はご遠慮しているんです」


「え.....あ、そうなんだ!ごめん.....でも.....じゃあ、知り合いなら」


少しオドオドしながら、たっちゃんが何かを取り出した。

スマホで有る。

連絡先を交換するつもりだろう。


「あ、それなら大丈夫ですよ?連絡先を交換しましょう?」


「え!?マジ!?じゃあ、ソーちゃんも交換しよ!」


あ、ああ。

俺は少しだけ考えながら、連絡先を交換した。

吹雪の様に凍て付く視線を感じながら。


(次は前原〜。次は前原〜)


「あ、私、塾に通っているから次で降りるね。じゃあまた。.....ソーちゃん。山ちゃん!」


「はい。また」


「じゃあな。たっちゃん」


電車をピョンと飛んで降りる、たっちゃん。

そして、たっちゃんと別れた。

電車を降りて、たっちゃんは手を振って去って行く。


俺は振り返して、そして扉が閉まった。

山下さんが聞いてくる。


「.....仲が良いんだね?」


「.....そ、そうですね。俺とたっちゃんは.....昔からの馴染みですから」


「.....へぇ」


「.....」


山下さんをそうは思いたくは無い。

だけど、何だろう。

何でこんなにも怖いのだろう。

山下さんの事が.....。


「龍さんを大事にしてあげてね。大切な幼馴染のお友達なんだよね?」


「は.....はい」


「.....どうしたの?」


ピリピリと少しだけ胃痛がする。

あの視線と言い。

山下さんは.....何か隠しているんじゃ無いかと.....。

気の所為だろうけど。


「.....俺、少しトイレ行ってきますね」


「あ、じゃあ、荷物預かっておこうか?」


「.....はい」


スマホを鞄に収納して。

そして俺はトイレへ向かう。

扉を閉め、深呼吸をして息を吐いた。


「.....山下さん.....」


たっちゃんをマジに殺すというあの目付きは.....。

でも俺は山下さんに限ってと首を振る。

しかし.....先程からの寒気が取れない。

身体がカタカタ震える。


「.....落ち着け.....」


折角のデートなのに。

他の女の子の事を考えたりはいけない気がするしな。

落ち着いて、行こう。


「.....よし」


そして、トイレを出ると。

山下さんが手を振ってくれた。

座席に腰掛けて、山下さんを見る。


「.....大丈夫?お腹?」


「いや、下していた訳じゃ無いです。トイレですよ、ただの」


「.....そう。良かった」


「.....」


鞄を見る。

だが、何の異変も無い。

やっぱり山下さんの目線は気の所為だな。

俺はその様に、思った。



遊園地に着いた。

とは言えど、街中に有るので、そんなに大きな観覧車とか無い。

俺ははしゃぐ山下さんを見ながら、走る。


「早く!行くよ!佐賀くん」


「はい」


売り場でチケットを買って。

そして遊園地内に入る。

それから何に乗ろうか?とはしゃいでいるとメッセージが届いた。

たっちゃん、からだった。


(デート楽しんでるかなぁ?ニタニタ)


俺は、たっちゃん、のメッセージにあいつめ。

と思って、顔を上げた。

そして?を浮かべている、山下さんを見た。

同じ様に携帯を見ている。


「山下さん。たっちゃんからメッセージが来たんで、ちょっと打って.....」


「ダーメ。他の女の子とのデート中だよ?.....ね.....?」


「.....は、はい」


威圧に俺は携帯を鞄に仕舞おうとしてヨロけた。

そして山下さんの手に打つかってしまい。

山下さんのスマホが地面に落ちる。


「す!すいません!山下さん!スマホ、拾います!」


「あ!!!拾わなくて良いから!」


「は?.....え.....」


(デート楽しんでいるかなぁ?ニタニタ)


「.....なん.....」


たっちゃんの全く同じ文章が映っている。

俺は眉を顰めて、山下さんのスマホを震えながら持ち上げた。

そして山下さんに聞く。


「.....どういう事ですか?」


「.....偶然にも同じ文面を開いちゃったって事だよ」


「.....流石にそれは有り得なく無いですか?それもメッセージアプリですよね?それ。同じモノが見れるって.....どういう事ですか.....?」


流石にこれは問い詰める様に聞く。

有り得ない、全く同じ文章だぞ。

それが別の人のスマホにって.....流石にこれは.....どう考えても盗撮しているとか思えないんだが。


「気にしない、気にしない!さ、行くよ?」


「.....いや、ちょっと待って下さい。山下さん。何か隠して無いですか?」


「.....」


俺は堪らず、率直に聞いた。

そして山下さんの唇が動き.....。

俺は身体を身構える。

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