第4話 凍て付く視線

恐ろしいんだが.....。

何が恐ろしいかと言われたら俺の義妹、夏帆の事だ。

いきなりラノベを貸してくれとか俺に接して来始めたのだ。

それもかなりいきなりである。


何か.....俺に対して買ってくれとかねだる気か。

と、俺は警戒しながら考えていると日があっという間に過ぎて行き。

遂に約束の日曜日になった。


付き合って、という約束の為に集まった場所。

それはこの街に有る、有名な武士の銅像の近くだ。


その場でソワソワしながら1時間近く前から待っていると向こうから手を振り山下さんがやって来た。

相変わらずの美人顔で汗を拭いながら俺をニコッと見てくる。


「お待たせ.....待った?」


「.....い、いや、全く.....」


「そうなんだ.....あ、えっと、佐賀くん。そんなに固くならなくて良いよ?ふふっ」


そうは言われましても。

何度見ても相当に可愛いな山下さんって。

その、何処が可愛いかと言われたらカジュアルな服装も有るが、それだけでは無い。


それにとても似合っている顔付きで有る。

白のキャンバスの様な顔だから、絵の具で塗る様に何でも似合うのかなと思う。

俺は赤面で立ち尽くす。

すると、それを見た山下さんが俺の手を引いて誘導し出した。


「じゃあ、えっと、行こうか♪」


「.....行くって.....その、何処に?」


「ん?.....あ.....その、で、デートだから、秘密だよ」


「でッ!?」


真っ赤になりながら、俯く山下さん。

俺もトマトの如く真っ赤になる。


ちょま、デートって!?ほえ!?

俺は目を丸くする。

ちょ、ちょ、一体、どういう事だ!?混乱する!


「.....私、君の事が気になる。.....だから.....ね?」


えっと.....女の子にこれ以上言わせないで。

そんな感じを見せる、山下さん。

俺は赤くなりながら見つめる。

え?マジで?


「.....じゃ、じゃあ行こうか!」


「.....は、はい」


何この感じ.....ってか、この心臓。

今まで二次元にしか興味無かった.....んだけど。

山下さんを本当に可愛いと思ってしまった。

本気でドキドキするんだが。


「じゃあ、電車に乗って行こうね」


「は、はい」


俺はマジで茹蛸になりそうな勢いで赤くなりながら、はにかむ山下さんを見て。

そしてまた真っ赤になった。

今から駅まで歩く。


その際に山下さんの居る背後から猛烈な視線を感じたが気のせいだろうか?

背筋が凍りそうになったのだが。


艶かしい.....と言うか、全ての支配をしてやる。

そんな視線を、だ。

一瞬だったが鳥肌が立った。



電車の中で俺は先程の視線を顎に手を添えながら考えながら居ると。

山下さんが俯いている俺の顔を覗き込んできた。

そしてどうしたの?と聞いてくる。


俺はそんな山下さんに首を振ってそして笑みを見せた。

多分、気のせいだろう、その様に考えながら、だ。

山下さんは、あ、と声を上げる。


「もしかしてぇ。また小説の事を考えていたのかなぁ?」


「.....そうですね。.....うん」


「文学的!格好良いなぁ。このこの!」


本来ならマジで怒っているが、山下さんには到底、怒れない。

その為。

何このバカップル的な感じの視線を人々から感じる。


俺はマジに胃痛がしてきてしまい。

少しだけ苦笑していると駅に着いて色々な人が乗って来て.....そして。


「ん?あれ?もしかして.....ソーちゃん?」


その様な驚く声がした。

顔を上げると、そこにやたら日焼けした少女が立っている。

八重歯が特徴的な、褐色肌のツバを後ろに向けた、帽子。

そして一部だけ黒髪を結ってある女の子だ。


俺は目をパチクリしてそして見つめる。

それから、あ!と声を上げた。

まさか.....!


「.....お前!?たっちゃん!?」


「久しぶりだな!ソーちゃん!」


マジかよ。

こんな場所で再会するとは思わなかった。

俺の幼馴染で、小学生まで一緒だった子だ。


「ソーちゃんは何しているのだ?」


「ああ、俺はで.....」


そこまで言い掛けた時。

吹雪の様な寒い、凍える視線を感じた。

俺はゾッとして後ろを振り返る、が。


.....何も無い。

笑顔ではにかんでいる、山下さんのみ。

どうなっている.....!?


「.....初めまして。佐賀くんの彼女、山下はるかです」


「.....ふぇ!?彼女!?ソーちゃん彼女出来たんだな!?」


「.....そ.....そうだな」


俺は曖昧に返事する。

先程の凍て付く視線と共に。

こんな視線を山下さんから感じたと言ったら駄目なのかも知れないが。

感じてしまった気がした。


『殺す』


という視線を、だ。

頼むから俺の気のせいであってくれ。

そう思いながら、曖昧に松添龍(まつぞえたつ)に接した。

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