第2話 山下はるか、からのメッセージ

帰宅してから俺は早速、爺ちゃんの店で購入したラノベを読んでいた。

小説の募集で金賞を受賞した新入り作家の現代ドラマ風ラノベだ。

ふむ、なかなかこれは面白いでは無いか。


俺はワクワクして思いながらフーと落ち着いた溜息と共に窓から外を見た。

横の窓も真正面の窓も暗くなっている。

つまりはもう夕方だ。


「.....しかし真っ暗だな.....」


スマホの時刻は十八時近くを差している。

風呂に入って夕飯を食べて、勉強してその後にラノベを読もう。

その様に思って自室から出る為にドアノブを握ろうとした。

ところが。

先にドアノブが動き.....?!


「.....え?.....は?」


「.....」


なん.....だと。

と某有名な漫画のセリフの様に考えていると。

夏帆が俺の部屋のドアノブを開けて入って来た。

俺は驚愕に驚愕の眼差しで夏帆を見る。


夏帆は若干、紅潮しているが.....何だコイツ!?

そんな夏帆は俺をジッと見た。

俺は若干、ビクッとする。


俺の部屋に入って来るなんてこれまで.....いや、一回だけ有ったけど。

でもこの部屋に来るのは.....多分一年振りぐらいなのに。

と思っていると夏帆は手を差し出した。


そして何かを要求する仕草をする。

何だ?と思っていると。

予想外の言葉が夏帆から出た。


「.....ラノベ貸して」


「いきなりそ.....え?ら.....ラノベ!!!!?」


なん.....と俺は目をパチクリした。

今コイツ、何つった?

ラノベすら毛嫌いする様な.....女が?

貸してくれ?え?聞き間違いじゃ無いのか?

俺は唖然としながら自室の部屋を守る仕草をした。


「.....か、貸してどうなる?燃やすのか?」


「.....そんな訳無いでしょ。興味が有るから読むだけなんだけど」


「.....興味って.....え!?マジ!?」


マジで頭の中が混乱し始めた。

どういう事だ!?

俺を嫌っている癖に何故いきなりラノベを貸して下さいになるのだ。

意味が分からん。


今までライトノベルとか全く興味を示さなかったんだぞ。

それどころかキモいとか言って嫌いに嫌っていた。

そして.....二次元がキモいと言っていたのに。

呆然としていると夏帆はなかなか渡さない俺にイラついている様に見えた。


「刺激ぐらいし.....いや、それは良い。.....早くして。貸すか貸さないのかどっちなの」


「.....え、あ、はい.....」


コイツは女帝か何かか?

何でこんなに鋭い目が出来るのだ。

取り敢えず、俺は灰と幻想のヤツを貸した。


すると、夏帆はマジマジと表紙を見て。

そして顔を上げて俺を見た。

ラノベをヒラヒラさせながら、だ。


「.....これ、1って書いて有るけど他のは無いの」


「.....は?」


「全巻貸せって言っているの。寄越せ」


何この偉そうな奴?

結構ムカつくんだけど。

って言うか、ちょっと待て、変わりすぎだろ昨日と。

そう思いながらも即座に続刊を棚から出した。

そして渡す。


それを奪い取る様に続刊ごと夏帆はさっさと持って行った。

有難うも無しだった。

いやいや、返してくれるのか?アレと思いつつ考える。

でも謎だった。

昨日までラノベを嫌っていたのに.....変わりようが半端じゃ無いんだが。


「.....これで性格も山下さんみたいに穏やかなら問題無いんだが」


その様に考える。

直ぐにそういや風呂と思い出しながら慌てて一階まで降りる。

そして風呂に入った。

それから.....自室に戻る。



ポコン


「.....?」


そのまま横になったり棚を片して勉強しているとその様に音がした。

メッセージの通知だが。

俺は?を浮かべながら、見る。


メッセージの相手は所謂、宣伝.....では無い。

かと言って友人でも無い。

ボッチに近い俺に対しての励ましでも無い。

でも相手は.....女の子だった。


メッセージアドレスを交換した山下さんで有る。

俺は見開いて、シャーペンを置いて直ぐにメッセージを読んだ。

メッセージにはこう書かれている。


(今日は有難う。佐賀くんに会えてとても楽しかったよ!とーっても魅力有る男の子だった。また今度会えたら嬉しいな♪)


「いや、俺にはそんなに魅力無いんだが.....」


なんでこの人は俺をこんなにも.....と苦笑いを浮かべながら反応に困りつつ。

俺は遅い指で返事を書く。

それから送った。

メッセージとかあまり使わないから。

佑太郎にメッセージを送ったりするが回数は少ない。


(俺はそんなに魅力無いですよ)


と送った瞬間。


ポコン


「.....早いな!?」


俺は驚愕しながらスマホを見る。

送って数秒で山下さんから返事が有ったのだ。

ビックリしながら、開く。

するとそこには.....この様な記載が有った。


(魅力たっぷりだよ君。.....私、心惹かれるなぁ)


「いや.....うん」


ただのオタクなんですけど。

なんか小っ恥ずかしいんだが.....。

俺はその様に思いながらも何とかメッセージを送った。


山下さんにも魅力ありますよ、とメッセージを書いて、だ。

するとまた数秒後に返事が。

あまりの速さに驚愕しつつ文章を読む。


(本当に!?.....嬉しい!あ、言い忘れてたけど.....私、本を読んでいる人好きなんだ。今週日曜日.....本屋さん以外で会わない?)


「.....え!?」


俺は見開いて、赤面してそんな声を上げる。

大声になってしまい。

すると横から壁ドンが俺に対して送られてきた。

大きなキックだ。


ドンッ


「うるさい!!!!!」


「スマン!」


畜生.....猛烈にいい気分だったのに。

思いながら.....壁ドンを受けた後にスマホの画面を見る。

にしても.....これはマジか。


俺はその様に考えながら小躍りしてから勉強をした。

ラノベを買いに行っただけでまさか知り合いの女の子が出来、さらにここまで進むとは思わなかったのだ。

良いぜ!良いね!ヒャッハー!


現代男子高校生万々歳だぜ!

俺はその様に思いながら鼻歌交じりで、俺の友人の佑太郎に明日に絶対に自慢してやろうと思いながら。

陽気に居た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る