第8話

「冒険者になりにきたのか、俺はシドラだよろしくな」

「リア・リーレットです。よろしくお願いします」

「あの、シドラさん知り合いですか?」


受付の女性が恐る恐るシドラに聞く

シドラは頷きリアの頭を撫でて答える


「あぁ、こいつは深淵の小人の討伐を手伝ってくれた奴だ。そのおかげで死者は出なかったし2体を縛り上げて一度殺した実力者だ」

「この子が昨日言っていた小さな英雄ですか」


目を輝かせて話していた受付の女性と他の受付の女性も近づいてリアを見て撫でたりおもちゃにされる


「何故に英雄? 戦い方を知っていたから手伝っただけなのに?」

「それで犠牲が出なかったし城壁内に入ってたら相当の犠牲が出てた。それを未然に防いだ英雄って事だ」

「成る程」


リアは英雄と呼ばれた理由を理解する

……よっ、小さな英雄ちゃん

(そう言われるのは嬉しいですが……まぁ、何でもありません)

……? まぁ、これからも頑張ってね

(言われなくとも頑張りますよ)


「それで冒険者登録は完了ですか?」

「そうだね、登録はもう終わりだよ。依頼やってく?」

「掲示板に載ってるので気になったの受けますね」


掲示板のある場所に行き貼り付けられている依頼を順番に見ていく

魔物の討伐や薬草の採取など様々な依頼が載っていた


「沢山ある、どれにしようかな」


一つ一つ見ていき考えてしばらく経ち一つの依頼書を手に受付に行く


「あっ、決めた?」

「はい、これで」

「これは……リザーベアの討伐ね。依頼達成はリザーベアの一部、そうね。片手を持ってきてくれるかしら? それで依頼完了よ」


リアは依頼書の一つにあった『依頼理由 最近森の入り口の方にもリザーベアが現れて薬草の採取が困難になったと近所の人が言ってたから討伐してくれクエスト リザーベア1体の討伐』と書かれた依頼書を手にしていた

依頼をこなすために城壁の外へ向かう前に武器の調達をする為に武器屋に向かう

ギルドの近くに武器屋がありそこに入ろうとすると1人の少女に止められる


「ちょい待ち、今武器探してる?」

「はい、そうですがどうしました?」

「リザーベアの討伐依頼出した者なんだけどさ、君依頼受けたよね? リザーベアじゃない依頼かもしれないけど……」


少女は何かを頼みたいが邪魔になるかもしれないなどと考えているのか戸惑っている


「ええっと、私さっきリザーベア討伐の依頼を受けました。それで用は?」

「そんなら話が早い。討伐の報酬として金ではなく武器で良いか? ちゃんと良い武器だから安心してくれ」


男口調で少女は言ってくる


「熊を倒した後ですよね? 出来れば今軽くで良いので武器が欲しいと考えていたのですが……今買うと無駄になるかな?」

「それなら依頼完遂を約束してくれるなら一つ武器を貸したる。まぁ、依頼前に渡すのは無いよりはマシ程度の武器だけどな」

「それでも良い、借りて良い?」

「丁度持ってるんだよ。ほら、貸してやる」


少女は軽くリーチが長い長剣を貸してくれる

見た限り一般に出回っているものとは違い地味で機能重視の作りになっている


「これは貴女が?」

「よく分かったな、それは俺の失敗作だ。まぁ、普通の武器と変わらんから心配するな」


リアはその言葉を聞き気づいてしまう

彼女の言葉が嘘だとそう気付いてしまう、何故か分かってしまう。彼女は嘘を付いている。『これは捨てられた作品だと』分かってしまう、リアは昔を思い出す……他に比べて地味で下手な作品の作者が『これは趣味で描いたものだから』と言っていたことを思い出す


「この剣借りますね」

「あぁ、依頼終わったらギルドにいるから呼んでくれよ」

「分かりました」


リザーベアの討伐をするため森の中に入る


「気に入らない……本当に気に入らない」


長剣を片手にリザーベアを探す

リザーベアは探すと結構早く見つかり戦闘となる

リザーベアは凶暴な性格で人を見つけると問答無用で襲いかかる事がある

今回もそのケースでリアを視認したリザーベアは襲いかかるが引っ掻き攻撃を軽々と躱され長剣によって縦に真っ二つに一撃で斬られる


「この剣、結構使いやすい」


リザーベアの片手を切り離してギルドに戻る

ギルドに戻ると先ほどの少女が冒険者らしき男性達に囲まれている


「おい、無能の鍛治屋邪魔だ」

「別に邪魔してないだろ」

「お前の作品は地味でろくに使えねえ、鍛治屋なんて辞めろよ」

「うるせえ」


2人ともカッとなって武器を取り出す

ナイフと斧、圧倒的に斧の方が有利でその上で他にも冒険者たちが囲んでいるので彼女には逃げ場すらない


「両者とも武器を仕舞って」

「うるせえ、餓鬼が命令するな」

「邪魔をするな! こいつは俺のて……」

「2度も言わせないでくれない? 私はイラついてるのだけどねぇ、君のこれ失敗作?」


長剣を見せて少女に確認すると少女は頷く


「そうだよ、それがどうしたの? リザーベアに勝てなかった?」

「いや、これが失敗作なら期待できるなって」

「おい、餓鬼そいつの……は……あれ?」


男性は何かに気づいて言葉を失う

自分の持っていた斧が一刀両断されていることに気づいたのだ

(速度強化による一撃、魔法を使用してる人がいなかったから誰も気づかない)

全員が少女の方を向いているタイミングで魔法を使い速度を上げて斧を斬り落としたのだ


「これを失敗作と言った理由は?」

「そいつは冒険者や兵士に認められなかったんだよ。地味過ぎて使いたく無いとか有名人じゃないからとか」


少女の回答が面白かったのかリアは笑う


「はぁ? そんだけで失敗作? ははは、笑わせてくれるね」

「……!? 何が面白い?」


少女は笑い出すリアに驚きながらも質問する


「武器は見た目や有名かどうかなんかで判断出来ないよ。まず武器は使いやすいかどうかそれで判断しないとね。有名作で馬鹿みたいに高くても使えない物は使えない……それに武器には作ったものの意思が乗る、自分の作品に対して自慢出来ない奴の作品なんて駄作になるだけだよ。まずは私の為に最高の武器を作ってくれない? 時間かかっても良いから、貴女はまずそこから始めようか」

「えっ?」

「良い?」


リアは近づいて少女に問う

少女が目を逸らそうとするがそれを阻止してリアは答えを待つ


「おい、てめえ何しやがった」

「この剣でその斧を切った以上、ちなみに今問題起こすのはやめておいた方がいいよ」


リアは斧を持っていた男性にそう言い少女の答えを待つ

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