第2話

入学試験の始まる5分前辺りでほぼ全員が集まる

(これで全員かな?)

壁の寄りかかって林檎を片手に全員を一瞥する

始まる直前に担当者だろうか年齢は30前後の男性が大剣を持って入学希望者を全員一瞥する


「全員来ているな、試験を開始するぞ。まずは基礎魔法のファイアボールを使ってあそこにある的を撃つ事、当たらなければ減点、威力が低ければ減点だ」


男性は数十メートル離れた的を指差す

入学希望者は全員的から数メートル離れた場所に移動する


「では最初に見本として入学希望者の中で優秀な高位の貴族であるヴァーミリオン家とフィネア家の2人にやってもらう」


(あぁ、聞いたことあるなぁ〜確か第4貴族の中の2つだった筈)

呼ばれて前に出たのは赤髪の少年と青髪の少年だった

2人は手を前に出してファイアボールを的目掛けて放つ

2人の放ったファイアボールは勢いよく飛び的に当たり小さな穴を開けて的を燃やす

メラメラと燃えて的だった物は灰となった


「おお、無詠唱であれ程の威力とは流石だ」


男性が褒めると周りはざわざわと騒がしくなる

あの2人の後を誰一人としてやりたがらないのも分かるがそうなると進まないのでリアは仕方なく手を上げて前に出る


「次やります」

「そうか、お前は……リア・リーレットか。町外れに住んでる位を持たない平民か」


周りは男性が言った言葉によってリアを笑い指を指して嘲笑う

リアはそれを無視して前に出てファイアボールを撃とうとすると先ほどの2人が通りすがりに呟く


「お前には出来ない、あまり平民が出しゃばるなよ」

「平民がここから消えろ、目障りだ」


2人の言葉にリアは怒りなど覚えず呆れるわけでもなく笑顔を作り2人に言う


「見下すのは良いけど足元を掬われないようにね?」


手を前に出して本来必要とされる詠唱するがリアは神から貰った力があるので詠唱は必要としていないのだが念には念をと詠唱を使う


「炎よ敵を撃て、ファイアボール」


手から出た炎の球が的目掛けて飛んでいく

先ほどの2人よりは小さく弱そうな炎の球が的に当たると的は燃えてすぐに灰になる


「……合格だ」


合格を言い渡されたリアは壁の方に行って壁に寄りかかり林檎を齧って残りの入学希望者を観察する

残りも順番に並んで行なっていく

的に当たらずに途中で消える者や届くが威力が足りない者などが大半だった

(ムムム、これは困ったぞ〜)

その光景を見てリアは困り悩む

2人よりも弱く調節した魔法が他の人より優秀である為勘が鋭い人だと勘付かれる可能性もある

平民なのに魔力が高いなどは面倒ごとに巻き込まれるとリアは直感で感じていた


「う〜ん、困ったなぁ〜。試験はこれ以外も確かあったはずだから何処かでミスをしようかな?」

「おや、今回はあまり良い素質の持つものは居ませんね。精々最初の3人が妥協点と言った所でしょうか……困りました」


何処からかそのような声がしてリアは頭上を見る

観客席から1人の女性が見え慌ててすぐに顔を下に向ける

(まずい聞かれたかな?……妥協点? 減点はない筈……合格点の威力は超えてたけどって言う話かな? それとも速度か大きさか)

女性の話から軽く推理する


「全て見てから全員不合格でいいかもしれないわ。不作だったと言う事で2回目を期待しましょう」

「あの2人が不合格ですか?」


(ぬぐぐ……やむを得ない。制御して不合格は頂けない)

制御して不合格はよろしくないので仕方なく上を向いて女性に話しかける


「あら、今回優秀1人じゃない。聞いてたみたいだね。なぜかと言うとファイアボールは基礎魔法であり皆が使える上に威力もあるから戦場でかなり使われるから」

「成る程、そうなると最も高い可能性はあの技の威力では足りないとなりますね」


リアの答えに女性は笑顔で答える


「そうよ、まだ火力が足りない。ギリギリ貴女達は合格でも良いけど……」

「妥協点ですか……仕方がありません。……誰も見てないよね?」


リアは周りを見渡してこちらを見ていないのを確認し隠れて炎の球を先程より大きく高密度に作り出す

リアの周りの気温が熱で上がり女性まで熱が届く

女性は驚きながらも感心する


「貴女力を隠していたのね」

「まぁね、貴族より平民が優秀ってのは面倒ごとに巻き込まれるので……」

「……良いわ、先ほどの調子で他のも突破すれば合格を許すわよ。その炎の球なら十分合格点を超えてるわ」


女性はそう言って視線を他の入学希望者に向けてため息をつく


「他の人達は合格には出来ないほど弱いのよね〜」

「これほど合格者が少ないのは今までの中で初めてなんですか? う〜ん、どうしよう」

「初めてよ。ここまで不作はちょっとね」


(原因は神様?が言ってた魂がどうこうって話かな? それとも単純に弱いだけか)

リアはいきなり面倒ごとに巻き込まれたような気がしたので神様に連絡する

(もしもし、神様〜、なんか面倒ごとに巻き込まれかけているのですがそれは一体?)

……気のせいだよ〜とは行かないねぇ〜、確かに面倒ごとに君は巻き込まれてる。……魔法急激発展期とでも名付けようかな?ただ停滞してるだけなら良いけど大人達の研究によって子供達の魔力の使い方が誤った方法になってたりしてる。原因は技術の発展のせいで生まれた誤った魔力操作

(急激な発展によって人が追いつかなくなってきてるって事? 新しい方法を使うからそれにミスがある事を誰も分からず理解出来ないって言う……面倒な、対処は?)

……う〜ん、それは神様の管轄では無いから手出しは出来ないよ〜、まぁ、1ヶ月もすればミスが発覚してすぐに前の手段に戻ると思うから問題ないと思うよ

(は〜い、ありがとね〜)

……いつでも頼ってねえ〜

神様との会話を終えてため息をつく

原因が分かっても合格者が少ない時点で目立つのは間違いない

(もう数人欲しいなぁ〜合格者は、まぁ、他の試験で合格点とってくれれば助かる)


「まるで合格者が少ないと困るような言い方ね」

「まぁ、出来る限り平和な生活を求めているので」


リアがそう答えると女性は笑い聞く


「この学園に入るのに?」

「えぇ、出来る限り平和に物事を済ませたいので」


入学希望者全員が最初の試験を終え全員が次の試験場所へ向かう

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