一人が好きだけど、たまには大勢もいいよね(それと二人も)
私の通う大学には、必修科目や第二外国語の教室を分けるためのクラス制のようなものがある。
必修が多いと、クラスで顔を合わせる機会も多くなる。
私は法学部なのだが、必修が結構多い。当然ながら同級生の顔も自然と覚える……とも限らず、私は二、三人覚えるのにも困る有様だ。入学してひと月経ってもあまり変わらない。
そんな私に、ある同級生が声をかけてきた。
休日にクラスで集まるから来ないか、という話のようだ。
……正直言って大勢で過ごすのはあまり好きではない。とはいえ興味はある。後でネタになるかもしれない……。
少し考えた末、行くことに決めた。
当日の夕方、出席者全員が集合場所に来たのを見て、近くのピザ屋に向かう。
数人ずつ席に座り、食事を注文した。
私の席では、出身地の話題から話が始まった。西日本出身の人たちが多く、岩手出身の私には聞き慣れない地方の事情を聴けた。なかなか興味深い。
最初、男子と女子は分かれて座っていた。主催者らしき学生は男女間でも会話をさせたいようで、途中で席の移動を促した。
私も何度か移動して、女子と同じテーブルについたこともある。
「同じ男子とも話が合わんのにどうやって女子と話せってんだ!?」
と思いながら。
実際、洋楽好きの男子と話すことになったが、昔の洋楽が好きな私に対して彼は今の洋楽が好きで、レッド・ツェッペリンなんかは知らないようだった。世間が狭いレトロ趣味の私はツェッペリンを知らない洋楽ファンがいることに驚愕。何も驚くことはないだろうが……。
なお、女子がいるときは聞き役に回って事なきを得た。
時間が来て、店を出る。これでお開き。
……と思いきや、二次会の話が始まった。どうやらカラオケに行くらしい。
「カラオケか……人前で歌える曲が何もないんだよな……」
と思っていたら、一人の女子が話しかけてきた。前に帰り道で少し話したことがある相手だ。彼女と近くにいた男子一人も含めてLINE交換をした。
その後、二次会をどうするかの話になり、男子の方はちょっと考えるつもりでその場に残った。
女子の方は大河ドラマを見たいらしく、帰ろうとしていた。もちろん私も帰る気だ。
彼女は周囲の目を気にしてためらっていたが、私は「一人で帰ると少し浮きますけど、二人以上なら大丈夫でしょう」とか言って帰ることを勧めた。
もちろん「男女が二人で歩くのはかえって浮くのでは?」なんて発想はない。男女ペアってことも意識してなかったし。
最初、私は敬語で話していたがすぐにやめた。一応言っておくと、相手から敬語を取ってほしいと言われたのだ。
最初の方では、「カラオケで歌える曲がない」という話題になった。彼女はほとんどアニソンしか知らないという。私は昔のロックとかメタルしか知らない。
それを言ったら「X JAPANとか?」と言われたので、「いや、もっと古い……ラウドネスって知ってる?」などと返した。
当然知ってる訳がなく、話題は変わった。
それから、話題は地元とか趣味とかの話に。まあまあ無難な話題……のはずだった。
漫画やアニメの話になり、私が「銀魂」の名を出したらやけに相手の反応がよかった。
彼女は予想以上に濃いオタクだったのだ。
ずっと嬉々として話すので、聞いてるだけでも楽しかった。
その後聞いた彼女の地元での話も面白かったが、プライバシーが心配なので伏せておく。
自宅のすぐ近くの交差点。私が家に近いことを伝えると、彼女は「私の家はここから3分くらい」と言った。
一緒に話せるのはこの交差点までかな……と思ったら、私の家の前で別れることに。そこまで一緒の道で帰れるようだった。
自室に帰って、その日の出来事をしみじみと振り返る。
「今日は珍しくみんなと雑談で盛り上がって、他の人たちと楽しい時間を過ごせたな。これまで楽しい時間は一人が多かったし……今日、『青春』してたな……」
実際「お前の言う『青春』って何だ?」と訊かれて答えられる自信はないけど、なんとなくそう思った。
ちなみに、それまで私には異性と関わること自体が想定外だった。
だから相手の趣味も考えずにラウドネスの名前を出したりする頓珍漢をやった……というか普通に常識に欠けてんだなこりゃ。
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